スペインサッカー攻撃の集団プレー戦術【リーブゾーン】
はじめに
日本では「個人戦術」「グループ戦術」「チーム戦術」が主に主流となっていますが、スペインではその他に【集団プレー戦術】という概念があります。なぜ集団プレー戦術と呼ぶ必要があるのか?理由は2つあります。1つ目は、スペイン語で「Juego colectivo(フエゴ・コレクティーボ」といい、直訳すると「集団的プレー」となるから。もう一つは、日本語で置き換えれない概念だからです。集団プレー戦術はチームとしてサッカーをするための原理原則です。「グループ戦術」と「チーム戦術」の間に位置している。と言えばわかりやすいでしょうか。
【合わせて学ぼう!】日本語にはないスペイン語サッカー専門用語
本記事では、攻撃時の集団プレー戦術の基礎【リーブゾーン】の概念について紹介します。
目次[非表示]
- 1.はじめに
- 2.集団プレー戦術とは?
- 3.サッカーの原理原則とはなにか?
- 4.スペインサッカー攻撃の集団プレー戦術【リーブゾーン】
- 5.リーブゾーンとプレーモデルのつながり
- 6.各集団プレー原理に基づくアクションの流れ
- 6.1.①ライン間のバランスを整える
- 6.2.②ラインのバランスを整える
- 6.3.③リーブゾーン
- 6.4.④サイドチェンジ
- 6.5.⑤リスクマネージメント
- 7.リーブゾーンの定義とキーファクター
- 7.1.①ボールのあるレーンでは、スペースを創る・埋める=ポジションチェンジ
- 7.2.②横のラインバランスを整える
- 7.3.③数的優位を作る→2vs1、3vs2を生み出す
- 7.4.④セカンドボールやこぼれ球を拾う
- 8.【理解度チェック】
- 9.まとめ
- 9.1.関連記事
集団プレー戦術とは?
集団プレー戦術とは、「13のプレーシチュエーション」を更に深く掘り下げ、サッカーの原理原則を整理したものです。まずは、以下の記事を読むことをオススメします。
【合わせて読もう】チーム戦術を徹底解説した記事3集
さて、これから「13のプレーシチュエーション」を理解していると仮定して、話を進めていきます。
「プレーモデル=チームの在り方」を設定することがチームを作る上での大枠になります。
次に「チーム戦術=ゲームプラン(チームとしての試合での戦い方)」となります。
そして、そのゲームプランを実行するための土台が「技術」「フィジカル」「メンタル」そして、「戦術の原理原則の理解」の部分になります。戦術は2つに分けられ【個人戦術】と【集団プレー戦術】となります。※グループ戦術を組み込むことも可能です。
【合わせて読もう】スペインサッカー攻撃の個人戦術【横距離(アンプリトゥ)】
サッカーの原理原則とはなにか?
サッカーにおける原理原則とは、サッカーの状況において「90%以上の人々が同じ答えを導き出すアクション」と仮定します。
例えば、以下の状況を見てください。
この状況では、ボール保持者にプレッシャーがかかっているとき「受け手のサポートの選択肢は足元になる場合が多い」のです。もちろん原理原則から飛び出すことは大切ですが、まずは「ボール保持者にスペースがない場合は、足元のサポートが有効である」という事を知るのが大切です。基本を知らなければ応用問題は解けませんからね。
この概念は「攻撃の個人戦術マークを外す動き(デスマルケ)」に分類されます。
では次の状況です。以下の図を見てください
黄色チームがセンターバックからサイドバックへボールを出した状況。赤チームが守備をしていますが、①方向、もしくは②方向、どちらに守備ブロックをスライドするべきでしょうか?
正解は①方向へスライドです。もちろん長年サッカーに親しんでいる人には簡単な問題ですが、サッカーを始めた子供たちにとっては難問です。さらに個人戦術と違って、チーム全体の動きとなるので難易度もアップします。
このアクションは「守備の集団プレー戦術・ラインのバランス(チームの横のバランス)」に分類されます。
ただ、例題からわかるようにサッカーには、普遍的な原理原則が存在しています。それを整理して言語化し、幼少時からバランスよくトレーニングすることが必要となります。
スペインサッカー攻撃の集団プレー戦術【リーブゾーン】
リーブゾーンは、salir de zona(サリール・デ・ソナ)と呼ばれ、直訳すると「自分のゾーンを出ること」です。このプレー原則は、自分のポジションから飛び出すアクションを指します。スーペルクラックでは、「ゾーンを出ること」の直訳すると聞こえが悪いので、「リーブゾーン」と名付けています。
【合わせて学ぼう】スペインサッカー常識「ディフェンスの壁」とは?
リーブゾーンとプレーモデルのつながり
リーブゾーンは、「13のプレーシチュエーション」における組織攻撃の原則「ライン間のバランス」の中に位置づけられます。
組織攻撃の集団プレー戦術は、ビルドアップ・前進・フィニッシュの3つのプレーシチュエーションの中に、全部で5つの原則が存在します。フィニッシュのプレーシチュエーションの中には2つの原則が存在します。
各集団プレー原理に基づくアクションの流れ
①ライン間のバランスを整える
ライン間(縦)のバランスは集団プレー戦術の基本です。まずは全体が自分のポジションを理解し、ラインを形成しなければサッカーは始まりません。
【もっと深く学ぼう】スペインサッカー攻撃の集団プレー戦術【ライン間のバランス】
②ラインのバランスを整える
次に、ライン(横)のバランスを考えます。ボールに対してラインのバランス(同ライン上の選手同士の距離感)が悪いと攻撃は機能しません。
【もっと深く学ぼう】スペインサッカー攻撃の集団プレー戦術【ラインのバランス】
③リーブゾーン
各選手がバランスよくポジションを取ったら、あえて自分のポジションから出て(リーブして)バランスを崩すアクションも必要です。自分のポジションに止まったままでは、相手の守備が組織的な場合、ブロックを崩せません。自分のポジションからリーブして、相手の守備システムに「ハマらない」サポートを行いましょう。
④サイドチェンジ
ポジションバランスを保つ。リーブゾーンをする。などの集団プレー戦術アクションを行っても相手が崩れない場合は、サイドチェンジが必要になります。
相手の守備組織のスライドが整っている状況では、リーブゾーンも意味を成しません。その場合は、相手を揺さぶるサイドチェンジが効果的です。
【もっと深く学ぼう】スペインサッカー攻撃の集団プレー戦術【2種類のサイドチェンジ】
⑤リスクマネージメント
リスクマネージメントは、疎かになりがちな戦術です。基本的には、相手を押し込んで攻撃しているときのディフェンスラインやボランチの選手のオーガナイズを指します。どのような陣形で、誰をマークしておくのか?攻撃をして置くときに考えておく必要があります。
【もっと深く学ぼう】スペインサッカー攻撃の集団プレー戦術【リスクマネジメント】
リーブゾーンの定義とキーファクター
- リーブゾーンの定義
リーブゾーン(サリール・デ・ソナ/ゾーンを出る)とは、【ライン間のバランス】の概念によって決定された自分のゾーン(ポジション)を出るアクションと定義する。
【《キーファクター》→リーブゾーンを理解するためのポイント】
①ボールのあるレーンでは、スペースを創る・埋める=ポジションチェンジ
ボールの無いレーンでは、自分のポジションを保つことが原則です。逆に、ボールのあるレーンでは攻撃バリエーションの1つとして、リーブゾーンを用いてポジションチェンジするケースがあります。
下図は、ボランチ・ウイング・サイドバックのポジションチェンジの例です。
②横のラインバランスを整える
同ライン上にいる選手が上がれば、ラインのバランスを整えるために自分のポジションを出る場合があります。
③数的優位を作る→2vs1、3vs2を生み出す
自分のポジションを下げたり上げたりして、ボール保持者にサポートします。リーブゾーンをうまく使うことによって、数的優位の状態を常に保つことが可能です。
【ポジションを下げて数的優位を作る場合】
【ポジションを上げて数的優位を作る場合=オーバーラップ】
④セカンドボールやこぼれ球を拾う
セカンドボールやこぼれ球など、相手ボールでも味方ボールでもない状況は、ポジションを捨ててボールへアタックする場合があります。
【理解度チェック】
以下の状況をリーブゾーンを使って解決するアイディアを出しましょう!
まとめ
ライン間のバランスは小学校低学年から徐々に教えて行く必要があります。もちろんボールを追いかけ回す「ただ楽しいサッカー」も必要ですから、集団プレー戦術ばかり教えてもいけません。全て『バランス』の問題です。子供たちがポジションありのサッカーが楽しそうでなければ、ポジションなしで自由に試合をさせても良いのです。ただ、そればかりではサッカーはうまくなりません。常に「抑えるべき原理原則を落とし込む時間」と「単純にサッカー楽しむ時間」のバランスを考えながらトレーニングを組み立てるといいでしょう。
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