チーム戦術を作ろう!サッカーの基本『13のプレーシチュエーション』前編
22人の選手が流動的に動き続けるサッカー。その複雑さは他の球技を圧倒します。サッカーを知らない人は口が「ポカーン」となる経験があるのではないでしょうか?実際、プロのサッカー監督でも試合の流れや状況を正確に把握するのは難しいです。
サッカー指導者は、独自のチーム戦術を選手、チーム、クラブに浸透させたいが、どこから手をつければ良いかわからない。または、どこまでチーム戦術が浸透したか?理解できているか?といった判断基準は「感覚」に頼っている。そんな経験が誰にでもあると思います。
そんな悩みには、スペインで学ぶサッカーの基本、「13のプレーシチュエーション』を学ぶことをおすすめします!
これさえ頭に入れておけば、自分のチーム戦術の作り方・浸透度・相手のチーム戦術分析にも使えます。「サッカーを見る目」を一緒に養いましょう!!
目次 |
①チーム戦術とは(前編) |
②13のプレーシチュエーション(前編)
1. サッカーの基本的なプレーの流れ 2. サッカーのプレーシチュエーション |
③組織攻撃(前編) 1. ゾーン1 ビルドアップ 2. ゾーン2 前進 3. ゾーン3 フィニッシュ 4. ゾーン1またはゾーン2を飛ばすロングボール |
④組織守備(中編) 1. ゾーン1 ビルドアップを防ぐ守備 2. ゾーン2 前進を防ぐ守備 3. ゾーン3 フィニッシュを防ぐ守備 4. ゾーン1またはゾーン2を飛ばすロングボールに対する守備 |
⑤トランジション 切り替え/守備→攻撃(後編) 1. カウンターアタック 2. 組織攻撃の再開 |
⑥トランジション 切り替え/攻撃→守備 (後編) 1. プレッシング 2. リトリート 3. プレッシング&リトリート |
①チーム戦術とは?
スペインでは集団プレー戦術とプレーモデルの中間に位置づけられるチーム戦術。
「集団プレー戦術はチーム全体で行うサッカーの基礎・基本」→サッカーをする上で必須(変わらないもの)
【例】→守備時のスライド、ラインアップ、ラインのバランス、ライン間のバランス、リスクマネージメント、サイドチェンジなど
「プレーモデルは、クラブの信念・国や人種・監督のアイディア、文化・選手の特徴と能力、外部環境と内部環境すべてを考慮して生まれるチームの『色』です」→クラブ・チームの「色」(変わらない※もちろん監督や環境が変われば、変化しますが、基本的にすぐに変わるものではない)
【例】→イタリア代表:強固な守備、スペイン代表:パスワークと華麗なテクニック、日本代表:組織力と団結力※これは僕の意見です、FCバルセロナ:ポジショナルプレー、レアル・マドリード:ショートカウンターと個々の能力、アトレティコ・マドリード:4-4-2のラインディフェンスと闘志
それでは「チーム戦術」とは?
チーム戦術とは、「独自のプレーモデルの中で、相手に合わせてプランを変更する戦術です」(変わるもの)
例えば:
今日は相手チームが2トップでプレッシャーに来ているから、ボランチを2人のセンターバックの間に落として、ビルドアップで3vs2を作ろう。
相手は1-4-4-2のシステムか!こっちは1-4-3-3だからピッチ中央で数的優位ができるな。今日は、ボランチにつけてから攻撃を始めることを意識しよう。
上記のような会話は全てチーム戦術となります。
【付け足しポイント】
☆集団プレー戦術とチーム戦術とプレーモデルは一体です。例えば、守備時のスライドは集団プレー戦術ですが、チーム戦術にもなります。境目は、「変わるもの」と「変わらないもの」です。
☆チーム戦術を考える際に、メンタル・フィジカル・技術・集団プレー戦術・個人戦術のレベルを考慮する必要があります。
☆プレーモデルが決まっていない場合、チーム戦術はほぼ機能しません。
②13のプレーシチュエーション
以下の図がサッカーを13個のプレーシチュエーションに分けた図です。
これらのプレー状況を一つ一つ解説していきます。
②-1 サッカーの基本的なプレーの流れ
プレーモデルが全ての土台となることは既に説明しました。だから頂点に「プレーモデル」が存在します。その後に、サッカーの基本的な状況は【攻撃】と【守備】に分けられます。
さらに、【組織攻撃】【切り替え(トランジション)守備→攻撃】【組織守備】【切り替え(トランジション)攻撃→守備】の4つに分ける事ができます。
【組織攻撃】→ボールを落ち着いて回して攻撃している状況です。相手は組織守備に入っています。一番サッカーが見やすい状況です。
【トランジション攻撃→守備】→ボールを奪われた後、組織攻撃から組織守備へ移る境目の状況です。「攻守の切り替え」がこの状況に当たります。
【組織守備】→ブロックを作って守っている状況です。相手は組織攻撃に入っています。一番サッカーが見やすい状況です。
【トランジション守備→攻撃】→ボールを奪った後、組織守備から組織攻撃へ移る境目の状況です。「攻守の切り替え」がこの状況に当たります。
②-2 サッカーのプレーシチュエーション
4つの基本的状況をさらに細かく分けたのが『13のプレーシチュエーション』となります。
組織攻撃と組織守備はゾーン分割によってプレー状況を分けています。
トランジションはチーム全体のアクションでプレー状況を分けています。
③組織攻撃
③-1 ゾーン1 ビルドアップ
スペインのゾーン1のビルドアップでは、キーパーを含めたディフェンスラインからのボールのチームとしての引き出し方を、相手のシステムによって3つか4つほど用意しています。
まずはディフェンスラインとボランチの動きに注目します。相手のFWと中盤のラインのプレスによって、チームとしてのオプション共有しておくことが大切です。
【例】自分のチーム 1-4-2-3-1 相手が1-4-3-3
ゾーン1では4vs3→センターバックと1トップは2vs1→ボランチとの関わり2vs2状+センターバックがボールを持っている状況
解決例→センターバックがドリブルで前のスペースに入り込んで、ゾーン2の相手選手を誘い出し、「穴」を見つける。
③-2 ゾーン2 前進
ディフェンス/ボランチに入った際の、ゾーン2での前線と中盤の動きに注目します。このゾーンでも各チーム3~4つのオプションを持っています。
【例1】自分のチーム 1-4-2-3-1 相手が1-4-3-3
ゾーン2で真ん中のゾーンが3vs3になる状況(更にハマりやすい配置)+サイドバックがボールを持っている状況
解決例→中盤の入れ替わりでギャップにサポートに入る。ウイングとのコンビネーションやFWへのロングボールもオプションになる。
【例2】グアルディオラのマンチェスター・シティ:ゾーン2の組織攻撃のオプションの一つを紹介します。
1-4-3-3が基本フォーメーション
ゾーン2の組織攻撃に入ったときはサイドバックがボランチの位置に移動→ボランチ(フェルナンジーニョ)がセンターバック間に落ちてきます。
この時点でフォーメーションは1-3-6-1に変化。
中盤に4人の選手を配置することで中央でのボール回しを効率的にできます。さらにシルバ、デ・ブルイネといったキープレーヤーをフリーにすることも可能です。ワイドにはサネとスターリングを張らせておくことで、サイドから1vs1の脅威を与えています。よく考えられていますね。
③-3 ゾーン3 フィニッシュ
相手ゴール前での崩しになります。おもに、サイドからの崩しと、中央突破に分けることができます。このゾーンでも各チーム3~4つのオプションを持っています。ですが、ゾーン3では個々の選手のアイディアと創造性が何より大切になります。ここでは、FCバルセロナのゾーン3の組織攻撃をご紹介しましょう。
【例】
ウイングがピッチ中央に入り込み中央レーンに6人を並べます。サイドバックは最大限ピッチの幅を取り、高い位置を保ちます。イニエスタ・メッシ・コウチーニョ・ブスケツ・ラキティッチが中央でボールを受ける機会が増える→中央突破とボールポゼッションに適したフォーメーション。
③-4 ゾーン1またはゾーン2を飛ばすロングボール
ゾーン1・ゾーン2の組織攻撃を選択せず攻めることも可能です。ゴールキックでキーパーが前線に蹴ったり、センターバックから前線へロングパスを出したりするときは、このプレーシチュエーションとなります。注目べきポイントは「誰にボールを蹴っているか」と「セカンドボールを拾うための周りの動き」です
【例:ゾーン1を飛ばすロングボール】
サイドに全体が集まることによって、跳ね返ったボールがピンチにならないようにします。この場合はFWの選手に当てる。セカンドボールはボランチとトップ下が狙います。ウイングはFWがヘディングに競り勝ったときのために背後のスペースを狙います。
【例:ゾーン2を飛ばすロングボール】
FWの選手への背後への飛び出しに合わせるボール、逆サイドに2vs1を作って放り込むボール。この図の場合は2つのパターンです。周りのセカンドボールの動きも矢印で示しています。
まとめ
自チームの組織攻撃、そして相手チームの組織攻撃について【ゾーン1ビルドアップ】【ゾーン2前進】【ゾーン3フィニッシュ】【ゾーン1・2を飛ばすロングボール】この4つのプレーシチュエーションを基準にしてトレーニング・分析・修正していくのが良いでしょう。今回紹介したのはあくまでも[例]ですので、自チームのプレーモデルに合わせてチーム戦術も変化させて行ってください☆彡もちろんトップレベルでは更にゾーンを細かく区切った中で組織攻撃を組み立てる場合もありますが、基本は4つ!まずは、少しづつ始めてみましょう。
ルイス・エンリケ時代のFCのゾーン1のビルドアップをまとめた動画を紹介します。
https://www.youtube.com/watch?v=gWMjM6j-Uvo
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