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スペインサッカーから伝わる「プレーモデル」の言葉の真意を読み解く

はじめに

最近、日本でもサッカーの言語化が注目されています。しかし、ほとんどのサッカー用語の真意が伝わっていないのが現状です。その一つに「プレーモデル」という言葉が挙げられます。プレーモデルは、スペイン語で「Modelo de juego(モデロ・デ・フエゴ」直訳すると「プレーのモデル」となります。この響きから、多くの解説者や指導者が「プレーモデル」を「チーム戦術やチームの戦い方」として使っています。しかし、スペインで伝えられるプレーモデルは、チームの戦い方だけではない、チームの在り方にフォーカスした深い意図があります

そこで、今回は modelo de juego : プレーモデルの真の意味について綴りたいと思います。

スペインから伝わるサッカー用語が誤解される理由

プレーモデルという言葉が一人歩きして、真実が伝わらないのは仕方がない部分もあります。

何故ならスペイン人が語るサッカーと、日本人が語るサッカーではサッカー専門用語の語彙力に大きな差があるからです。

だから翻訳するときも直訳してしまうと、何だかよくわからない?となってしまいます。

例えば、EQUILIBRIO ENTRE LINEAS (エキリブリオ・エントレ・リネアス): ライン間のバランス

これを聞いただけでは、ライン間のバランスが何を指すのかはハッキリとわかりません。

ただこのライン間のバランスと言う概念はサッカーにおける原理原則ですので、必ず知っておく必要があります。勉強で言うと、国語の平仮名とかカタカナ。算数の足し算や引き算です。

【合せて読みたい!オススメ☆スペインのラインの概念】

 

スペインサッカーが良いとか日本サッカーが悪いとかではなくて、これは基本ですので覚えて損はありません。

今回の記事はプレーモデルについてですので、あまり深く触れませんが、ライン間のバランスをイメージしてもらうために以下の画像をみてください。

これはOrganización ofensiva : 組織攻撃の際のライン間のバランスに関する説明です。

画像を見ていただければ分かると思いますが、一言「ライン間のバランス」と言っても多くの要素が詰まっています。

つまり、「プレーモデル」という一言だけではその真意は測れないと言う事です。

プレーモデルとは?

では、プレーモデルとは何か?

プレーモデルとはチームのサッカースタイルの事だけではありません。

  • レアルのように強力な3トップを生かした縦に早いサッカー。
  • バルサのような美しい流れるパスサッカー。
  • アトレティコのような強固な守備からのカウンター。

これらは、プレーモデルの概念の一部となります。


プレーモデルの真意とは、形成する中で生まれるチームの「色」です。

ブラジル代表なら、黄色・テクニック・個人技・1vs1の強さ・柔らかさ・サンバ・縦に早い攻撃が、インスピレーションされます。

日本代表なら、青・俊敏性・組織力・団結力・チームワーク・数的優位を作る・持久力、などが思いつきます。

スペイン代表なら、赤・パスサッカー・戦術理解力・ボールポゼッション・中盤の構成力、などが思い浮かびます。

各チームでチームの「色」が生まれます。これがプレーモデルです。

【プレーモデルの参考に!オススメ記事】
【3バックの使い手パブロ・マチン】セビージャFCのプレーモデル解説

プレーモデルはチームの在り方であり、人間に例えると「自分自身の在り方」なのです。

チーム戦術はチームとしての戦い方であり、試合ごとにプランが変わります。システムを変えたり、プレスの位置や形を変えたり、ロングボールを多く入れたり、様々な戦術があります。

プレーモデルが「自分自身の在り方」なら、チーム戦術は「自分を着飾る服」になります。自分自身の在り方が大きく変わることはありませんが(成長するにつれて少しづつ変化します)、着る服はシチュエーションによって変わります。結婚式、仕事、友達との飲み会など、時と場合によって変化します。ただ、その服も「自分自身」が魅力的でなければ全く意味の無いものになってしまいます。

つまり、プレーモデルがなければ、チーム戦術は機能しません。

逆に、プレーモデルさえ持っておけば、相手によって戦術を変えてもチームは迷子にならないのです。

※技術・フィジカル・メンタル・集団プレー戦術・個人戦術の原理原則は、自分自身を成長させるための「ご飯」だと思えばわかりやすいかと思います。これからの能力が低ければ、いくら理想を掲げても夢物語で終わってしまいます。プレーモデル(目指すべき場所、なりたい姿)を実現するために、技術・フィジカル・メンタル・集団プレー戦術・個人戦術(土台)の向上が必須となります。


プレーモデルの形成

上図はプレーモデルの構造を図に表したものです。

各項目が惑星のように線でつながっています。これはプレーモデルのInteracción : 相互関係を表しています。

それではどのような要素が絡み合ってプレーモデルを成しているのか。一つ一つの項目を見て行きましょう。自分が新しいクラブで新しいチームを持つ時に、どのようにプレーモデルを作っていくかを想像しながら読み進めてください。


★ESTRUCTURAS Y OBJETIVOS DEL CLUB : クラブの構造と目標

初めて監督として新しいクラブに入った時、まずクラブの構造と目標を考慮しなければなりません。FCバルセロナの育成年代を担当をするのと、街クラブの弱小クラブを担当するのでは、クラブの構造と目標は全く違います。

最も大切なのは、プレーモデルは「クラブの信念・哲学」を反映するものだと言うことです。例えば、クラブが「相手を思いやり、味方をリスペクトする選手の育成」を掲げて居る場合、それもプレーモデルに組み込まれます。

クラブの目指す哲学に反する立ち振る舞いは絶対に許してはいけません。それも自チームのプレーモデルです。

【バルセロナを拠点として活動するサッカークラブ創設者へのインタビュー】

クラブ設立背景(14分19秒)・創設することへの恐れ(16分33秒)・彼のクラブの価値観とプレーモデル(17分07秒)など様々な内容を語ってくださっています。

★CULTURAS PAÍS / CLUB : クラブ、国の文化

これは、国によって異なる文化を理解せよ。と言うことです。日本のクラブで監督をする場合とスペインのクラブで監督をする場合で指導方法や子供への接し方は全く違います。

クラブ&自らの哲学に合ったチーム/選手を目指すために、異文化理解をふまえたアプローチもプレーモデルの一部です。


★CAPACIDAD Y CARACTERÍSTICAS DE LOS JUGADORES : 選手の能力と特徴

文字通り、選手の能力と特徴によってプレーモデルは変わります。

わかりやすいのは、【プレースタイル】の変化です。例えば、「背の高くて足の早いFWとロングフィードが上手いサイドバック要するチーム」と、「中盤にテクニックのある選手を多く揃えており、背は低いが俊敏性の高いFWを要するチーム」ではプレースタイルは全く変わります。

また選手の能力や特徴が変われば、選手やチームが目指す目標設定も変わり、目標達成のアプローチも変わります。競争力の高い選手で構成されるチームと、サッカースクールのような雰囲気のチームでは、プレーモデルが変わります。もちろんクラブの目指す方向性も考慮しなければなりません。


★IDEAS DE JUEGO DEL ENTRENADOR : 監督のアイデア

監督が、どんなサッカーをしたいのか?どんな選手に育てたいのか?どんなチームにしたいのか?何を成し遂げたいのか? クラブの哲学、クラブと国の文化、選手の能力と特徴に合わせて、明確に「未来のなりたい形」を設定することが重要です。間違えてはいけないのは、どんなサッカーをしたいか?だけではないこと。そして、監督のアイデアが全てではないことです。この項目は、度々「エゴ」となって選手・クラブ・保護者を苦しめます。

合せて読みたい指導者に求められる覚悟

監督の理想もプレーモデルの一部に過ぎません。(自分でクラブ経営する場合は違います)


★ORGANIZACIONES ESTRUCTURALES : 組織構造

これは、チーム・クラブを取り巻く環境面についてです。保護者との関係、協会との関係、リーグ戦構造など自分の居場所が変われば回りの環境は変化します。

監督はサッカー以外の組織のマネージメントも大切です。どのようにマネージメントするのかをイメージしておくのもプレーモデルに関わります。


★PRINCIPIOS Y SUB PRINCIPIOS DE JUEGO : プレーの原理原則

やっと、サッカーの話になってきました。

それはサッカーにおける「個人技術」「個人戦術」「グループ戦術」「集団プレー戦術」のキーファクターのことを指します。スペインでのキーファクターは「プレーアクション」を有効に成功させるためのポイントを言います。

例えば、

Acciones técnicas : 技術アクション → Control : コントロール

  • マークの距離によって、近ずきながらコントロール、もしくは離れながらコントロールする。
  • コントロールオリエンタード。(自分の行きたいフリースペースへ)
  • 出来れば敵から離れた足でコントロールする。
  • ボールを受ける前に、近くの状況を見て、情報を持っておく。
  • 周りの状況を最大限観察することができるように、常に体の向きをゴール方向とボールで結んだ状況にする。(ペルフィラシオン)
  • 状況に応じて、ボールを流してコントロールする。
  • ボールタッチの瞬間に敵を超えるためにスピードを上げる。

他にもあります。

これはチームのプレースタイルとは関係なくサッカーをプレーするためのベース【原理原則】です。

育成年代の監督は選手の成長段階に応じて、原理原則を整理するトレーニングとプレースタイルを作るトレーニングのバランスを考えなくてはなりません。


★MOMENTOS DE JUEGO :  プレーの瞬間 “プレーシチュエーション”(プレースタイル作成時のモデルフレーム)

これがプレーモデルが勘違いされる原因です。

スペインではチーム戦術の事もプレーモデルと呼ぶことがあります。しかし、厳密にはチーム戦術はサッカーのシチュエーションの整理から生まれます。そして、前にも話したようにチーム戦術はプレーモデルの一部に過ぎません。

以下の図、プレーシチュエーションのモデルフレームを整理することで、チームへのプレースタイルの浸透度が明確になります。

☆プレーシチュエーションの整理によるチーム戦術構築の関連記事☆

  

まとめ

プレーモデルの真の意味とは?

プレーモデルはチームに影響する全ての要素を考慮して生まれる「チームの未来像」です。

そして、プレーモデルは様々な外部要因と内部要因が相互に関係しながら生まれるのです。

スペインでは、EL MODELO DE JUEGO NO SE CREA, SE SURJE. と言います。

直訳は「プレーモデルは生み出すものではなく、生まれてくるもの」

つまり、この文章で挙げた要因を分析すれば、自然とそのチームが目指すべきプレーモデルが浮かび上がって来るということです。

監督は「どんなサッカーをしたいのか」「どんな選手に育って欲しいのか」「どんなチームになりたいのか」を、様々な外部環境と内部環境を分析して設定する必要があります。

一つでもボタンをかけ間違えると取り返しのつかないことになり兼ねません。

プレーモデルの設定がチームの運命を左右すると言っても過言ではないのです。


※この記事は、【HONOR サッカー×教育】のWEBブログAqui y ahora で掲載された「プレーモデルの本当の意味」を引用しています。

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栗本悠人

栗本悠人

スペイン協会公認サッカー指導者ライセンスレベル3所持(日本のS級相当)スペインの現地クラブで小学生年代から高校生年代まで全カテゴリーの監督を歴任。大学時代は人間性の教育の研究に従事し、小学校教員免許を所持する。教育学、経営学、心理学をヒントに、サッカーの競争原理と育成の統合を目指している。スペクラ創設者&スーパーアドバイザー。 

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