スペインサッカー攻撃の個人戦術【マークを外す動き(デスマルケ)】
最近よく耳にするようになった「個人戦術」という言葉。日本では人それぞれ理解が違うようです。そもそも個人戦術・グループ戦術・チーム戦術の境目が、よくわからない人も多くいるのではないでしょうか?
個人戦術はサポートの種類のこと?
ワンツーや3人目の動きのこと?
どういう状況で個人戦術が使われるの?
個人戦術を身につけると何が良いの?
こんな悩みが出てしまうのは、サッカーの言語化が進んでいないことが原因かもしれません。スペインでは個人戦術は理論的に明確に分けられており、現地のサッカー監督に「個人戦術のアクションとは?」と聞けば、すぐに【6つの攻守のアクション】が答えとして返ってきます。
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そこで、今回はスペインサッカー攻撃の個人戦術アクションの1つ【マークを外す動き(デスマルケ)】について言語化していきます。
目次 |
①個人戦術の定義と基本的シチュエーション |
②攻撃の個人戦術 【マークを外す動き(デスマルケ)】 1. 【マークを外す動き(デスマルケ)】定義 2. 「突破のデスマルケ」と「サポートのデスマルケ」 3. 横距離・縦距離と密接に結びつく「デスマルケ」 |
③【マークを外す動き(デスマルケ)】のキーファクター一覧 1. アクションのキーファクターとは? 2. 【マークを外す動き(デスマルケ)】のキーファクター |
①個人戦術の定義と基本的シチュエーション
定義:試合中にボールを持っていない選手(オフェンス、またはディフェンス)が、直接的に関係する相手・味方、ボールとの関係性の中で生まれる判断だけにフォーカスした戦術である。
Sans,A.;Fraearola,C.(2009)
【周りの味方の動き・状況には関係なく】自分のマークを外し・サポートをしてボールを受けるアクション。これだけにフォーカスします。基本的な状況は以下の3つのシチュエーションとなります。
【合わせて学ぼう】チーム戦術の13の基本的プレーシチュエーション
【1vs1】ボール保持者の1vs1ではなく、ボール保持者でない選手たちの1vs1でのアクション。(ボールに対するサポートの動き、ボールを受けさせないマークの動き)攻撃と守備の個人戦術が含まれる。数的同数の状況で必要となる戦術アクション。
【2vs1】ボール保持者のアクションではなく、ボール保持者ではない選手たちのアクション。(ボールに対するサポートの動き、相手に突破されないマーク・カバーの動き)攻撃と守備の個人戦術が含まれる。数的優位の状況で必要となる戦術アクション。
【1vs2】ボール保持者のアクションは技術アクションに含まれるので、ここではディフェンスの選手たちの個人戦術アクションのみ存在する。(ボールを奪うマーク・カバーの動き)数的不利の状況で必要となる戦術アクション。
②攻撃の個人戦術 【マークを外す動き(デスマルケ)】
②-1. 【マークを外す動き(desmarque デスマルケ)】定義
デスマルケのアクションは、スペースの無い中で一瞬の瞬発的な動きによってマークを外し、時間とスペースのアドバンテージを生み出してボールを受けるアクションである。
ポイントは、デスマルケが一瞬の瞬発的なアクションだという点です。
つまり、横距離と縦距離が良いポジショニングを取るための攻撃の個人戦術なら、デスマルケは横距離と縦距離では解決できないスペースと時間のない状況で行うアクションだと理解することができます。
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では、ここで質問です♫
[最もデスマルケを使う選手は以下の3つのうち、どのポジションの選手でしょうか?]
①センターバック
②ボランチ
③フォワード
★ヒント→ピッチを横に3分割したときの各ゾーンのスペースと基本的な数的優位・数的同数・数的不利の関係を考えましょう。
【合わせて読もう】スペインサッカー攻撃の個人戦術【縦距離(プロフンディダー)】
【3つのゾーンと各ゾーンのスペース、選手の人数】
サッカーには『ディフェンスを一人余らせる』という大原則があります。その原則に従うと各ゾーンにおける選手の数的関係性は以下のようになります。
【ゾーン1】攻撃チーム→基本的に数的優位の状況/守備チーム→基本的に数的不利の状況
【ゾーン2】攻撃チーム・守備チーム→基本的に数的同数の状況
【ゾーン3】攻撃チーム→基本的に数的不利の状況/守備チーム→基本的に数的優位の状況
では、スペースはどうでしょうか?攻撃チームの観点で考えて見ましょう。
【ゾーン1】幅・奥行きともに制限なし/数的優位=スペース・時間が(大→中)
【ゾーン2】幅・奥行きともに制限なし/数的同数=スペース・時間が(中→小)
【ゾーン3】幅に制限あり(ゴールへ向かう必要がある)・奥行きに制限あり(オフサイドラインが存在する)/数的不利=スペース・時間が(小→極小)
☆正解☆
スペースの無い状況下で、瞬発的なアクションによってマークを外す動きがデスマルケです。つまり、スペースがない中で効果的に発揮されるアクションだということです。ですので、正解は③番の「フォワード」となります。
センターバックやボランチは、ボールが動いている間に、横距離と縦距離の個人戦術を使って、良いポジションをとれば十分です。瞬間的にマークを外す動きは、フォワードに比べて必要性が低いアクションです。※もちろん必要な状況もあります
②-2. 「突破のデスマルケ」と「サポートのデスマルケ」
突破のデスマルケは、相手の背後への瞬間的な抜け出しでマークを外すアクションを指します。突破のデスマルケには「斜め(ディアゴナル・ラン)」と、「直線(ベルティカル・ラン)」が存在しています。下の図では、FWの選手が斜めの突破のデスマルケ、ウイングの選手が直線の突破のデスマルケをしています。
サポートのデスマルケは、ボール保持者をサポートするために瞬発的な動きで近づいてマークを外すアクションを指します。
サポートのデスマルケは使うタイミングが重要で、全員がサポートのデスマルケをすると逆にスペースが無くなってしまいます。全員が近づくことがないようにしましょう!
突破のデスマルケが相手ゴール方向へマークを外す動きとするなら、サポートのデスマルケは自ゴール方向へのマークを外す動きとなります。
②-3. 横距離・縦距離と密接に結びつく「デスマルケ」
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サッカーには、「チームの幅・奥行きと深さ」と「個人の幅・奥行きと深さ」がありました。
個人の幅を横距離・個人の奥行きと深さを縦距離と呼びます。この2つの個人戦術を用いることでボールの位置に対して「良いポジショニング」を継続的に取ることが可能です。
さて、ここで問題です♪
図1と図2ではどちらのFWのデスマルケの成功率が高いでしょうか?
図①
図②
正解は図②のFWのデスマルケです。なぜなら良い横距離と縦距離を取ることによってマーカーの視界から消えているからです。
図①のポジションからのデスマルケでは、相手のセンターバックは「ボール・FWの動き・ボール保持者」全ての情報を同時に見ることができます。つまり、デスマルケの動きに最も対応しやすい状況となります。
つまり、「良いポジショニング」が前提にあることによって、そのポジションから瞬間的に現れることが可能になります。デスマルケを開始するポジショニングが、デスマルケの効果を最大限に引き出すと言っても過言ではありません。
③【マークを外す動き(デスマルケ)】のキーファクター一覧
③-1. アクションのキーファクターとは?
キーファクターは、様々なプレー状況を有効に解決するための、「コツ」である。
キーファクターはプレー状況を解決するための「鍵」でなければならない。
キーファクターがプレー状況の解決方法と関係ない場合、それをキーファクターとは呼ばない。
例えば、ドリブルのキーファクターは、ドリブルを成功させるための「コツ」をまとめたものです。[2VS1の状況では、ドリブルで相手を引きつける]など。
③-2. マークを外す動き(デスマルケ)
- 横距離と縦距離を使った良いポジションからスタートする。
- マーカーに自分とボールを同時に見られないようにする。
- 適切なタイミングでデスマルケするために、マーカーとボール保持者のアクションに注意を払う。
- ボールを受けれない場合は、マークを引き付けてスペースを作る役割になる。
- 受けたいスペースとは逆方向にフェイントを入れてからボールを引き出す。
- パスコースを生み出すために、方向の変化を加えた細かく素早い動きを意識する。
- 状況に応じてスピードを調節する。(常に100%でダッシュすれば、相手は注意を向けるので、逆にボールを受けづらくなる。消えて現れるイメージ)
- 2vs1の数的優位を生み出す。(サポートのデスマルケ)
- オフサイドラインに注意する。時にはプルアウェイで、幅を作ってから前に行く(突破のデスマルケ)
- 突破のデスマルケは最後まで突き抜ける=ボールが出てこないからといって止まらない。
- パスが出てこなければもう一度パスコースを作る。
- ボール保持者にプレッシャーが掛かっている状況では、サポートのデスマルケを行う。無意味に近づかない。
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まとめ
個人戦術が理解できている選手は、サッカーの基礎が理解できている選手です。個人戦術をトレーニングすることで、監督やサッカーのプレーモデル・チーム戦術が変わっても、適応できる戦術理解力が身につきます。サッカーの原理原則の浸透度で、その後の選手の飛躍に大きく影響します。将来ある選手たちのために、「サッカーの基礎を知る」努力をすることは大切ですね。
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