【バルセロナで戦うサッカー監督コラム】コーチングスタッフの重要性とは?
はじめに
どのスポーツにおいても監督一人で出来ることは限られています。
特に、現代の多様化したスポーツ界では各分野にプロフェッショナルな人材を配置し、「コーチングスタッフ」としてチームを形成しています。
スペイン語では【Cuerpo técnico(クエルポ・テクニコ)】と呼ばれ、直訳すると「テクニカルボディ=テクニカルスタッフ」となります。クエルポは日本語で「体(ボディ)」を意味しています。テクニカルスタッフには、監督・そしてチームの「体」の一部となれるような人材が必要であり、また彼らの個々の能力の結束がチームの結果を左右すると言っても過言ではありません。
強いチームは必ず優秀なコーチングスタッフ
強いチームには必ず優秀なコーチングスタッフがいます。
例えば、前スペイン代表監督のロペテギには、7人の優秀なコーチングスタッフがいました。
第二監督、分析統括コーチ、分析コーチ、コーチ(U21スペイン代表監督)、2人のフィジカルコーチ、キーパーコーチでした。そのスタッフ一人ひとりが、一流の監督、またはコーチとして活躍してきた人物です。
例えば、分析統括コーチのAntolín Gonzalo(アントリン・ゴンサロ)は、2012年からスペイン代表の分析コーチとして仕事をしています。しかし、以前はスペイン3部(J3相当)のクラブで第一監督としてチームを率いて、リーグ優勝も経験した人物です。そんな人材たちがロペテギの下で一緒に仕事をしています。ですから、自然と質の高い仕事が遂行されるのは当然です。
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残念なのは、メディアに取り上げられるのは選手や監督の話題ばかりで、他のコーチングスタッフの話を取り上げる機会が少ない事です。ですので、「いかに第一監督を支える人達の存在が大切か」を、私のスペインでの第一監督としての経験から話していきたいと思います。
スペインで第一監督をして実感した「一人でやれることの限界」
私が初めてスペインで第一監督としてチームを率いた時、自分の信念を周りに合わせず貫き通す自己中心的な指導者でした。結果だけを追い求め、「自分の立場をクラブ内で上げていくこと」しか興味がなかったからです。他のコーチの助言も当てにせず、どうせ自分が責任とってクビを切られるなら、自分の思う通りにやればいい!!と思っていました。
そのシーズンは、そのやり方が”たまたま”当たり結果を残しました。その結果が認められて、次シーズンの監督2年目、U10Aチーム(U9.10トップチーム=クラブの顔)を率いる事が出来ました。結果が出たことは良い事かもしれませんが、自分の能力だけで今の地位を手に入れたと勘違いもしていました。
しかし・・・世の中そう甘くありません。昨年の立場と違いAチームを率いた瞬間から、クラブ側に常に見られる立場になりました。クラブの顔を汚すことはできない!と、上層部も私のチームの事について、意見を言うようになりました。それまで、自分のやり方で結果を出せば良かったのですが、クラブの顔となるチームを持つと、「クラブ側の考え方を考慮しながら結果を出す事」が求められました。そのような状況の中では、コーチングスタッフの力がどうしても必要になってきます。監督1年目の様な独りよがりは通用しませんでした。
例えば選手の補強をしたくても、一人で全チームのスカウティングするのは不可能であり、アシスタントコーチと協力するしか方法はありません。また、質の高い仕事をクラブとする上で、クラブと監督のコミュニケーションを円滑に進めるパイプ役も必要となります。また自分の不得意な部分、フィジカルやメンタル等の専門的な分野を補い合えるコーチングスタッフがいるからこそ、クオリティに拘った仕事が出来るのだと痛感した年でした。どんな名将でも絶対に1人で出来る力は限られています。
”ある程度”までは1人で辿り着けます。しかし、1人では”ある程度”までしか辿り着けません。
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まとめ
つまり、現代のサッカー監督の仕事はただサッカーを教えるだけでなく、チーム全体をオーガナイズする能力が、より一層重要視されています。それは、サッカーが分業化の道を辿っているからです。戦術、分析、フィジカル、メンタル等、専門分野のスペシャリストを適材適所に人事し、作業分担と効率化を図ることでチームの潜在能力を最大限まで高めることができます。「別々の個」を「一つのまとまりある全体=チーム」にすることは、監督一人では不可能です。
現代サッカーは、一人だけで勝てるほど甘い世界ではなく、さらに能力が低いコーチングスタッフがいても通用しません。一人ひとりが個々として成り立っているコーチングスタッフがいるチームだけが、生き残っていける世界なのです。
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