知らなきゃ損!スペイン発・世界サッカーのトレンド【アシンメトリー戦術】前編
はじめに-アシンメトリー戦術とは?-
ヘアスタイルでよく耳にする言葉「アシメ(アシンメトリー)」。
実は世界のサッカーでもアシンメトリーを取り入れた戦術がトレンドになっています。
アシンメトリー(【英】asymmetry)の意味は、日本語で「左右非対称」。シメトリー(【英】symmetry)「左右対称」の対義語です。
アシンメトリー戦術とは、組織攻撃・組織守備のシーンにおいて『左右非対称』にチームがアクションを起こす戦法を指します。
モダンサッカーへの歴史
1860年代にFA(フットボールアソシエーション:サッカー協会)が設立されて、サッカールールの統一化が図られます。協会が設立された当時、サッカーは組織や規律が少なく「カオス」の状態でした。
1920年代になって「オフサイド」のルールが適応され、それに合わせてさまざまなフォーメーションが生まれます。この時代「3-2-3-2・M-W型」が流行しました。アタッカーとディフェンダーが明確に区切られた配置です。チーム全体の役割が分かりやすいフォーメーションが好まれました。
1958年、ブラジルがワールドカップで初優勝。「4-2-4フォーメーション」が生み出す「位置的優位性」と、「個の融合」で破壊的な攻撃力を発揮しました。4バックを先駆けて使い始めたブラジル代表。3バックで守り2トップで攻めるチームは、ブラジルの4トップ・4バックフォーメーションに手を焼きました。
それに対抗するように生まれた戦術が「カテナチオ」や「リベロ・スイーパー」です。破壊的な攻撃を、組織的な守備で防ぐ「カテナチオ」。最終ラインの背後を掃除するリベロが注目されました。この頃にドイツの皇帝ベッケンバウアーが活躍。ここで守備戦術の進化が加速します。
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守備戦術が急速な進化を遂げた後、オランダのスーパースターであるヨハン・クライフが「トータルフットボール」で世界に衝撃を与えます。【攻撃と守備を表裏一体と捉え、チーム全体が動く】チーム戦術としての「パスワーク」「プレッシング」概念の登場です。
しかしトータルフットボールは個人の質で劣るチームが行うには高度な戦術でした。そこで自陣でパスを回して奪われる危険が伴う「パスワーク」を捨て、「プレッシング」だけにフォーカスするチームが現れます。サッキが率いたACミランがその代表例。「ゴールを守る守備」ではなく「ボールを奪う守備」へと変化しました。これがモダンサッカーにおける「ハイプレス」の始まりでした。
―クライフが目指したトータルフットボールは「パスワーク」から発展したプレーモデル―
―サッキが目指したハイプレスは「プレッシング」から発展したプレーモデル―
2人の意志は後世に受け継がれます。
―パスワークはFCバルセロナ時代のグアルディオラ中心に、「ポジショナルプレー」に昇華―
―プレッシングはドルトムント時代のクロップ中心に、ゲーゲンプレッシングから「ストーミング(ハイプレス+ショートカウンター)」へ昇華―
これがモダンサッカーへの歴史的変遷です。
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※参考文献【2017戦術の教科書 サッカーの進化を読み解く思想史|ジョナサン・ウィルソン (著), 田邊雅之 (著)】
-ゾーンとレーン-モダンサッカーにおけるアシンメトリー戦術の発生
モダンサッカーでは、チームとしてオーガナイズ(攻守における共通認識)が欠かせない要素となりました。組織化は更に発展し、ゾーンよって「プレーヤーの配置(ポジショナルプレー)」「プレッシング」を変更する必要性が生まれます。例を挙げて説明します。
FCバルセロナ組織攻撃におけるゾーン毎のポジション配置
【FCバルセロナ組織攻撃 ゾーン1】
【FCバルセロナ組織攻撃 ゾーン2】
【FCバルセロナ組織攻撃 ゾーン3】
FCバルセロナに対するアトレティコ・マドリード組織守備時のゾーン毎とプレッシング
【アトレティコ・マドリード組織守備 ゾーン1】
【アトレティコ・マドリード組織守備 ゾーン2】
【アトレティコ・マドリード組織守備 ゾーン3】
このようにゾーン毎にフォーメーションを変えて戦うことは、モダンサッカーにおいて既に常識です。
-アシンメトリー戦術-
レーン毎に「攻撃時のポジション配置」と、「守備時のプレッシング」を変更することで左右非対称を生み出す。それがアシンメトリー戦術です。
各ゾーンでのオーガナイズは、もはや当然。最先端のモダンサッカーでは、右と左のレーン毎にチームとしてアクションを変え、優位性を生み出すフェーズに入りました。
後編では組織攻撃と組織守備時に分けて詳しく解説していきます。
【後半はこちらをクリック】
知らなきゃ損!スペイン発・世界サッカーのトレンド【アシンメトリー戦術】後編
【動画も配信中】
攻撃のアシンメトリー戦術とは −FCバルセロナの組織攻撃−
組織攻撃における左右非対称(アシンメトリー)
組織守備における左右非対称(アシンメトリー)
アシンメトリーの弱点と効果
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