【女子リーガ1部エスパニョール分析官連載コラム】私の歩くサッカーの道
はじめに
スペクラをご覧の皆さま初めまして。バルセロナ在住8年目、小堺めぐみ(@megumikozakai)と申します。
現在、スペイン・バルセロナでサッカー選手(スペイン女子サッカーリーグ3部、テラッサFC)、指導者(テラッサFC U-19男子)、分析(スペイン女子サッカーリーグ1部、RCDエスパニョール)など、サッカーに携わる仕事をメインに活動しています。
今回は、私がバルセロナでサッカーに関わる仕事をしようと思った経緯、RCDエスパニョールへ分析担当として入るまでの流れ、そして実際にやっていることを紹介したいと思います。
最後までお付き合いいただければ幸いです。
1.指導者の道を歩むまで
バルセロナへ訪れた理由
まず私がバルセロナに来たきっかけは、「自分なりの道でサッカーへ携わりたい」とずっと抱いていた強い想いでした。遡ること、それは高校生のとき。第二言語を履修する上でサッカー関係の仕事に将来的に携わりたいと思った私は即決でスペイン語を選択。大学でもスペイン語を履修し、2009年の春の留学プログラムでバルセロナへやって来ました。
知り合いを通してサッカーチームを探し、サッカーの環境がとても気に入った私は、大学を卒業してスペインにサッカーをしにくるという選択肢を持つようになりました。
そして紆余曲折ありながらも、最終的に大学卒業後にバルセロナへ渡りました。
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指導者の道を歩み始める2つのきっかけ
最初は語学学校へ通い、スペイン女子サッカーリーグ2部のCEエウロパというチームでサッカーをする日々でした。そこから指導者の道を歩み始めるには、2つのきっかけがありました。
まず1つ目は、選手としてプレーする中でスペインサッカーをもっと深く理解していきたいと思ったことです。最初は指導者になるというよりは、どちらかというとスペインサッカーの奥深くにあるコンセプトなどを学びたい思いが先でした。
2つ目は、昔から“サッカーに携わる仕事をしたい”という思いを抱いていた私は、高校生の時から色々な仕事をしてきました。サッカーサイトに記事を書かせてもらったり、大会運営をしたり、サッカースクールの指導もやりました。
そしてスペインで、なでしこJAPANに携わるメディア関係の仕事をしたとき、チームの中で関わりたいという想いが強くなり、指導の道を歩もうと決めました。
それ以降、スペインサッカー指導者ライセンスの上級を、渡西から3年で取得しました。
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2.人・指導者としての課題
指導者として見えて来た課題「批判的思考」
皆さんは、ライフスキルというものをご存知ですか?
“日常生活に生じるさまざまな問題や要求に対して、より建設的かつ効果的に対処するために必要な能力”とWHO(世界保健機関)が定めた10個のスキルです。
そこには問題解決能力、コミュニケーション能力、対人スキル、意思決定能力などが挙げられます。私は大学の研究室で、このライフスキルとスポーツの関係などを研究してきました。
そして指導者としての私の課題は「批判的思考」でした。
しかしそれはまず、いち人間としての課題でもありました。当時は、ポジティブ思考が全て良いと思っていた為、ネガティブ思考はしないように、人の良いところを見るようにしていました。
しかし、ライフスキルの1つである「批判的思考」は指導にはとても大切です。
良いことは良い、ダメなことはダメ、判断基準をしっかりと選手たちに与える必要性があるからです。全ていいと言ってしまったら、選手たちはプレーや物事の判断基準を得れず、同じミスを繰り返したり、迷いながらプレーすることになってしまいます。
その批判的思考を改善するためにも、指導者の道に足を踏み入れてから、ずっと課題にしていることがありました。それは“分析眼”です。
指導者としては「ピッチの上の練習でどれだけ選手を向上させチームとしてまとめ上げれるか」「試合でいかに的確な判断をして、選手起用や戦術を駆使するか」がキーだと思っています。
そのための要素として分析眼や分析データはすごく大切です。
分析眼を養うために
その分析眼を養うために、今までサッカー指導者ライセンスを最上級レベルまで取得、FCバルセロナアカデミーのキャンプ通訳、スペイン人のプロ指導者集団が集まるエコノメソッドを学び、さらに数々の指導者の下で通訳やアシスタントをさせてもらいました。指導チームでは実際に試合を分析したり、ビデオを撮りながらコーチの修正する発言と時間をメモして分析ビデオを作成したりしてきました。そして気づいたら、苦手としていた分析が仕事となりました。
3.「ようこそエスパニョールへ」
最後に、どうやってエスパニョールで働くことになったのか?
私が、RCDエスパニョールへ分析担当として入るまでの流れと実際にやっていることを書きたいと思います。
エスパニョールに入れたのは知り合いの指導者からの紹介でした。監督に挨拶へ行くと「手が足りないからとりあえずどれくらいできるかやってみてほしい」と言われ、ボランティアとして関わることになりました。
最初の仕事
最初は自分なりにまとめてみましたが、監督から僕の分析を参考にやってみてくれと、ひな型をもらってそれをもとに分析情報をまとめるようになりました。数試合やったところで、監督から「今季はこのままボランティアになるけれど、来シーズンはチームのスタッフとして入れるようにしよう」と言って頂けました。
それからというもの、毎週毎週膨大な時間をかけて分析情報を作るのは、いくらサッカーが好きで任せてもらえた仕事でも、正直辛い時期もありました。監督に来シーズンへの言葉をかけてもらったものの、口約束でしかない来季の話は正直どうなるか分からず、もがいた日々も多々ありました。けれど、分析情報を送った後に監督から「グッジョブ!」と連絡がきたり、元チームメイトであり現在エスパニョールでプレーしている選手が「今日も分析やってくれたの?遠征のときは特に見てるよ」と声をかけてくれたり、自分のやっていることが少しでもチームのためになっていると感じられるときがあり、それを励みにやり切ることが出来ました。
「ようこそエスパニョールへ」
そしてシーズン終わりに監督と2人ミーティングをし、まずはお手伝いさせてくれたことへの感謝を伝えると、監督から是非来シーズンは他の分析担当2人と一緒に力を合わせてやってほしいというオファーをもらいました。そしてシーズン終了の時に監督と分析担当の4人でミーティングをし、「ようこそエスパニョールへ」と声をかけてもらいました。
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今私が、実際に行なっている仕事内容
実際にエスパニョールで何をやっているかというと、リーガで戦う相手チームの分析です。対戦チームの特徴を分析し、どう対峙するかを提案します。個人情報やチーム情報、各局面の戦術的意図、相手の長所にどう対応するか、相手の短所をどう突くかなどをまとめます。
私は普段はテラッサに毎日通っているためエスパニョールの練習にはいけず、まだシーズンも始まったばかり。裏方としてにはなりますが、チームとして良い結果が出るように精一杯の努力をしていきたいと思います。
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