【解説】サッカーフォーメーション4-4-2の長所・短所とシステム変化
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はじめに
サッカーのフォーメーションは現代サッカーにおいて多様な変化を見せています。特に選手や監督がサッカーのフォーメーションの長所や短所を深く知っておくことは、試合で勝利を呼び寄せる上で重要なキーファクターとなっています。
スペインの育成年代の選手たちは、小学生年代からフォーメーションの特徴を理解し、試合中に相手のフォーメーションを見抜いてプレーします。これが「ピッチを上から見ているような選手」が共通に持つ能力です。ピッチを俯瞰して見る選手たちは、相手チームと自チームの基本フォーメーションを頭の中でイメージ。その特徴を知った上で、ピッチ上でプレーしています。
もちろん監督が全てのフォーメーションを理解することは必須条件。優秀な監督は、試合開始3分でピッチ上の全状況を把握するとも言われます。
また選手や監督ではないサッカーファンの方々は、両チームのフォーメーションに注目して試合を観戦することで、より深くサッカー観戦を楽しめます。
シメオネ監督率いるアトレティコの特徴でもあるフラット型4-4-2フォーメーションの短所・長所・そしてシステム変化について解説します。
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★超重要★ フォーメーションとシステムの違い
フォーメーションとシステム。「違う言葉だけど、同じ意味」だと理解している方は多いのではないでしょうか?
しかし!!
フォーメーションとシステムは全く別の意味を指します。
早速その違いを説明していきます。
フォーメーションとは、相互に影響を及ぼしあう要素から構成される、まとまりや仕組みの全体です。
つまり、【フォーメーション=チーム力を最大限に引き出すための基本的な陣形】と言えます。
システムとは、攻撃または防御の際の選手の配置。 また、その配置からの展開の型です。
つまり、【システム=基本フォーメーションから攻撃・守備の際に変化する流動的な陣形】と言えます。
スペイン・欧州のサッカーでは、1試合を通じて1つの陣形で戦うことは少なくなりました。基本フォーメーションから攻撃時・守備時に合わせてシステムチェンジして陣形を変える。試合の中で戦術変更する戦い方が当たり前になっています。
ペップ・グアルディオラ率いるマンチェスター・シティ
例えばペップ・グアルディオラが率いるマンチェスター・シティーは、以下の1つの基本フォーメーションから複数のシステムチェンジを行っています。
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その1つを紹介します。
【基本フォーメーション 4-3-3】
グアルディオラがバルサ監督時代から愛用する4-3-3の基本フォーメーション。
リーグやクラブが変わっても変わらず使い続けています。
【攻撃時のシステム 3-6-1】
これはバイエルン時代に発明した「偽サイドバック」というシステム変化です。
サイドバックの選手がボランチの位置に移動する画期的な陣形であり、各ポジションの選手の特徴を最大限に生かしています。
マンチェスター・シティの場合、ボールポゼッション率を高めるために中盤に数的優位を作り出す必要があります。このシステムでは、中盤に6人の選手を配置。シルバやデ・ブライネといったキープレーヤーが、フリーでボールを受けやすい状況が生まれます。
またウイングの選手はサイドで1vs1を仕掛けやすい形ができ、スターリングやサネのようなサイドアタッカーが伸び伸びとプレーします。さらにサイドバックがボランチの位置に入ることで、カウンターアタックにも備える。かなり考え抜かれたシステムチェンジと言えます。
【守備時のシステム 4-1-4-1】
守備時のシステムは基本的に4-1-4-1となります。相手によって、4-4-2や4-3-3で前からプレッシングに行く場合もあります。
[分かりやすい♫ 参考動画↓]
4-4-2フラットフォーメーションの特徴
それでは、ここから4-4-2フォーメーションについて長所や短所、システム例を用いてより詳しく説明していきます。
4-4-2フォーメーションの長所と短所 | |
《長所》 | |
☆ピッチ上のスペースがバランスよく埋められている。 ☆4人がフラットに並ぶ中盤のラインは、2対1の数的優位が作りやすい。 ☆フラットなラインが2列並ぶことで、距離感がよい⇒カウンターアタックの対処がしやすい。 ☆ミッドフィルダーが4人+ディフェンスも4人=組織的な守備に安定感をもたらす。 ☆攻撃の際、サイドにスペースができ(ウイングがいないため)、2トップがサイドに流れることが出来る。 ☆前線に2人保つことで、守備→攻撃の切り替えがしやすい=カウンターアタックに繋げやすい。 ☆均等かつ平行に、分かりやすくポジションが配置されているため、カバーリングやポジションチェンジがしやすい。サイドバックとサイドハーフのぺルムータ※(カバーリングのカバーリング)やボランチがセンターバックが空けたゾーンを埋めるなどが見られる。 | |
《短所》 | |
・特に両サイドハーフの高い運動量が必要となる。 ・基本的に、ディフェンス、ミッドフィルダー、フォワードと横に直線を引いた様でライン自体の縦幅が狭いため、プレーが過度に水平的になることがある=ボールが前に進まない。 ・フォーメーションが直線的な配置のため、ビルドアップ時に「斜めのポジション」でボールを受けることが難しい。 ・フォワードが横への動きで邪魔をし合うケースもあるため、フォワードの動きが制限される場合がある。 ・4-3-3や4-2-3-1と比較するとフォーメーションの中央で数的不利になりやすい。(中央にはボランチ2人のみ) |
※ペルムータ(カバーリングのカバーリング)
記事はこちら! スペインサッカー守備の個人戦術【ペルムータとカバーリング】を覚えよう
攻撃と守備におけるシステムチェンジのバリエーション例
攻撃システム
【4-2-3-1】
2人のうち1人のフォワードがトップ下のポジションに入ります。こうすることで、ピッチ中央で数的有利なシチュエーションが作りやすくなります。サイドハーフとSBが前進し、各ポジションの距離感も向上します。シャドーストライカーがいる場合は、かなり効力を発揮するシステム変化です。アトレティコ・マドリードのシメオネが、グリーズマンをトップ下に使っています。
フォーメーションの4−2−3−1についてはこちらから!
【解説】サッカーフォーメーション4-2-3-1の長所・短所とシステム変化
【3-5-2】
ボランチ1人とセンターバック2人の3バック、SBがウイングバック、サイドハーフが若干中央に寄ってインサイドハーフ気味に変化します。サイドバックの攻撃力を十分に活かせるシステムです。サイドハーフが空けたスペースを駆け抜けるサイドバックをいかに上手く使えるかが鍵になります。
守備システム
【4-4-1-1】
敵にボールを支配されているときのアトレティコは、4-4-2からこのシステムに変形することが多いです。
フォワードのグリーズマンがトップ下に入り、ジエゴ・コスタが前線に張ってカウンターアタックの準備をします。ディフェンスライン4人とミッドフィルダー4人でコンパクトに守備をし、ボールを奪いカウンター攻撃を仕掛けます。
【4-4-2ダイアモンド】
ボランチが攻撃的、守備的と縦に別れ、サイドハーフが少し中央に寄ります。こうすることで中盤を固めることができ、ライン間にいる相手の対処もしやすくなります。敵のゴールキックからのビルドアップを阻止する際に、フォワード2人にセンターバックを、攻撃的ボランチに相手のボランチをマークさせることで、強制的にロングボールを蹴らせることが可能です。
後ろからのパスサッカーにこだわるチームを相手に、アトレティコのような1対1の競り合いに自信があるチームはこのシステムを使ってボールを奪おうとすることが多いです。
以上が、4-4-2フラットの長所と短所、システム変化についてです。
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