【バルセロナで戦うサッカー監督コラム】君はバルサと戦いたいか?前編
FCバルセロナと戦うクラブでの挑戦
「君はバルサと戦いたいか?」僕はそう言って彼らと話を始める。
来シーズン、カタルーニャ州2部に所属しているU10のチーム(Pubilla Casas)を率いる。チームを任せるに当たってクラブから言われた事は、「君は9人の選手を獲得しないといけないが、出来るか?それが条件だ」ということだった。心の中では「無理だよ」と叫んだが、二つ返事でOKと言った。今思えば、このチームは貧乏くじの様なもので、2部に所属しているものの良い選手達は他クラブに移籍し、良い選手がクラブ内にいない。その条件下で2部を戦わないといけないとなればスペイン人は率いたくない。だから声がかかったのだろう。なんにせよ日本人監督にこんなチャンスが舞い降りてくることはない。チャンスを掴む事が出来れば、もっと高いレベルのチームに行ける可能性もある。何が何でも結果を出したいし自分の評価が上がれば、他の日本人指導者の評価も上がる。日本の指導者代表として来シーズン、全力で挑むつもりだ。
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スペインで当たり前に行われている育成年代のスカウティング事情
話を戻し、何の当てもない日本人指導者が9人の選手を獲得しなくてはいけなくなったので、その時の話をする。
スペインではプロ同様、育成から選手の移籍は自由だ。大人の都合やクラブ・地域の軋轢はなく、レベルの高い選手は上のリーグへ行き、また上のリーグで結果を残せなかった選手は下のリーグへ行く。そんな競争の原理が9歳からスタートしている。
ではどのようにしてスペインで選手を獲得するのか。主に二つある。
①一つ目は、相手のクラブに直接問い合わせし、選手を欲しい旨を伝えること。この方法は正々堂々フェアプレーであるが、ほぼ確実に選手獲得は出来ない。なぜならば彼らも来シーズン勝つ為にいい選手を獲得したいからだ。
②二つ目は、相手クラブを通さず直接、親や代理人に交渉すること。この方法が一番獲得しやすい。この方法は、実際ピッチに足を運んで試合を観戦しに行く。そして、良い選手がいれば、その場でその選手の保護者を探し携帯番号を聞き出す。そこから来シーズンの条件等を伝え興味があればチームへ契約する流れである。
スペインのスカウティングの事前準備
もちろん適当に試合を見に行くわけではなく事前に調査する必要がある。カタルーニャでは協会のホームページ【FCFのサイトをチェック】からチームの詳細、試合や選手の詳細などが全て見れる(過去のデータも見れるので選手が何歳なのかもわかる)。
その情報と自クラブと相手クラブの力差関係を考えて選手をスカウティングしていく。バルサなどのビッグクラブであれば力差関係など気にせず欲しい選手を獲得できるが、僕たちのようなクラブではそれができない。そのため、どのチームから選手が獲得できるか、事前の情報が絶対に必要である。
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実際、僕たちが行なった選手獲得スカウティングは全34クラブ、68チーム、680人の選手達をスカウティングし、2部で戦えそうな選手はたったの32人だけであった。そこから32人の順位付けをし、獲得に向け選手とコンタクトを取ったのは14人だけだった。コンタクトを取った14人の選手はもちろん良い選手であるが、現実問題としてビッククラブはすでにいい選手達が揃った上で新たに選手獲得をしており、スペインサッカーにおいてレベル別のピラミッド構造が揺るがない理由の一つだろう。
FCバルセロナやRCDエスパニョールといったビッククラブの下部組織でも学年を超えた飛び級というものはほぼ無い。なぜなら同年代のリーグで十分彼らに対抗できるレベルにあるクラブが揃っているからだ。こうしたピラミッド型のシステムは、育成年代からの選手の健全な競争と循環から生まれる。
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これが肌で感じた、サッカー文化が根付いているということであろう。
海外の育成年代のスカウティング事情が日本に伝わらない理由
最後にこういった海外でのスカウティングの話はあまりネット等では出てこない。なぜならば、レベルの高いリーグで日本人第1監督をしている人がほとんどいないのが現状だということである。自分はそのチャンスをもらった以上、こういった情報を発信していくことが日本サッカー界への貢献だと強く思っている。後編はどの様に選手を見て獲得まで至ったのか話していきたいと思う。
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育成年代の監督にとって必要な要素(22分45秒)や、選手1人1人の能力を引き出すために必要なこと(24分09秒)など監督必見な内容を語って頂きました♫
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