リーガ・エスパニョーラで戦う現役なでしこインタビュー【品田彩来選手】前編
プロサッカー選手として海外を飛び回る、一人の「なでしこ」。品田彩来選手は、2017年より女子リーガ・エスパニョーラ1部のRDCエスパニョールに所属している。
1900年10月28日に創立されたRCDエスパニョール。100年以上の歴史を持つ同クラブは、リーガエスパニョーラのプリメーラ・ディビジョン(1部)で常に戦ってきた。
女子・男子チームともにプリメーラに所属するクラブは、FCバルセロナ、アトレティコ・マドリード、ベティスなどエスパニョールを含めて7つ。男女ともに力を入れているチームはスペインでもそう多くはない。
現在、海外でプロサッカー選手として活躍する品田選手は、日本・アメリカ・スウェーデン・フィンランドと海外を渡り歩き、スペインでの戦いは2シーズン目を迎える。
―しかし、日本での中学・高校時代は出場機会に恵まれることはなかった―
「日本で成功したか?」と問われれば、答えることは難しい。彼女が海外でプロサッカー選手になるまでの道のりと、その人生観。そして、様々な国を渡り歩いたからこそ気づけた「理想の姿」について話を聞いた。
Q:中学・高校と出場機会に恵まれなかった引退する選手たち。自分の可能性に見切りをつける場合が多いと思います。海外挑戦までのサッカー人生について教えてください。
小学生時代は、目黒区の地元クラブチームで男子に混じりサッカーをしていました。区選抜に選ばれたりして、男子の中に入ってもできる自信はありましたね。
中学では東京の女子トップリーグ所属クラブの下部組織に加入しました。毎年80名くらいがトライアウトして、年度によって5名前後しか選ばれない名門。地元のチームの雰囲気と、プロを目指す選手が集う雰囲気に大きな違いがあり、最初は戸惑いました。「チームメイトであっても敵」。緊迫した空気感でした。
上手くなっている自信はあるが、試合に出れない状況が続いて・・・。中学3年生の夏にチームを変えました。小学生の頃「楽しかったサッカー」とは全く別もの。
その頃からですね。
楽しいサッカーと何か―。自問自答するようになりました。
中学卒業後は、男子サッカーの名門校で、女子チームを立ち上げるプロジェクトがある高校へ進学。「レベルを落としてでも試合に出たい」。その気持ちを大切にした決断でした。創設2年目ということもあり、高校1年生から試合に出場しました。ただ全国大会前から出場機会がなく。それから3年間ほぼベンチ外、もしくはベンチを暖める日々に・・・。
”監督が自分を嫌いだから試合にでれない”。その言い訳だけはしたくなくて、自分に足りないものを探し続けました。何をすれば試合にでれるか。後悔だけはしたくなかったので、サッカーでも、私生活でも、あらゆる努力をしました。
2年半に渡るレギュラー争いの末、やっとスタメンの座を掴みます。活躍できている実感もあり、自信をつけてきた矢先。また突然ベンチ外に・・・。そこからまた試合に出れなくなって。自分の中で、”プチン”と、何かが切れる音がしました。
自分の思うようには試合に出場できない苦しさや悔しさ。辞めようと思えば、辞めれる場面はありました。それでも、”自分は出来る”と信じていたから、続けてこれた。
サッカーは辞めたくない。サッカーが大好きなので。そして自分の可能性も諦めたくない。だから挑戦する場所を変えたかった。
リーガ・エスパニョーラで戦う現役サムライ・インタビュー【上村大介選手】
Q:高校卒業後、大学を経由せずに海外留学する選手は珍しい進路だと思います。
アメリカへの留学は、女子サッカー選手用の留学プログラムに参加したことがキッカケでした。ダメだったら、1年浪人して日本でやり直す気持ちでチャンレンジして・・・。その留学期間中にアメリカの大学女子サッカーのコーチにスカウトされ、トントン拍子でその大学へ推薦入学が決まりました。
アメリカでの4年間はコンスタントにプレーできました。「はっきり物事を言う」文化が自分に合っていたと思います。周りに流されずに自分の意見を主張する。だたサッカーを楽しむ。”わかりやすさ”。その環境がありがたかったです。やはりコンスタントにプレーできる環境によって、自分のパフォーマンスに波が無くなったと思います。
「プロサッカー選手になる」と言ってアメリカに来た自分。大学2年のときに全米優勝した経験が、その想いをさらに強くしました。
その大学では男子チームもあって、男子と女子が一緒にサッカーすることも多かったです。前から、女子と男子の見えない壁を感じて、その存在に疑問を持っていました。だから「アメリカの男女分け隔てない雰囲気も良かったな」と思います。
Q:「プロサッカー選手になる」言うは易く行うは難し。プロを諦める選手もたくさんいますよね。
全米優勝してプロの道が見えた。そこで「なでしこリーグへ帰ろう」と考えて、トライアウトするために日本に戻った時期がありました。しかし、どのチームにも入団できず・・・。「自分の甘さと驕り」。そして「プロの道への厳しさ」を実感しました。
悩んでいたときに、アメリカの大学でクラスメートだった南アフリカ人の男子選手を思い出しました。彼はアンダー世代の南アフリカ代表。アヤックスなどのヨーロッパの強豪チームからオファーがあった逸材でした。
が・・・、家族を養うため、海外でプロ選手になる夢を諦めて自国へ戻りました。
―私には、夢を追いかける環境がある―
もし貯金が尽きても、日本に帰ればバイトして貯められる。貯金が尽きても死ぬことはない、何とか生きていける。経済的に安定していないのにサッカーを続ける不安と葛藤はありました。だけど幸運にも「挑戦できる環境がある」。だから諦めたくなかったですね。
そして挑戦できる環境を与えてくれた「家族」には一番感謝しています。海外に行く決断を後押ししてくれました。家族がサポートしてくれたからこそ”今の自分がある”と感じています。
リーガ・エスパニョーラで戦う現役なでしこインタビュー【堂園彩乃選手】
Q:自分で自分の限界を決めてしまう選手は多いかもしれません。品田選手はアメリカでプロサッカー選手になる夢を叶えたのでしょうか?
大学卒業後、3チームのプロクラブのトライアウトを受けました。その内、2チームからプレシーズン参加の内定をいただきました。周りの人は、みんな驚いていましたね。
ただ、ここからが海外らしいところで・・・。
1チームから「外国人枠が足りなくて契約が出来ない」と突然告げられました。もう1チームに全てを賭けて勝負しましたね。しかしプレシーズンの練習参加で不合格に。
大学を卒業していたので、寮から出ていく必要があり、宿無しでした。またアメリカのビザ手続き上、帰国すると再度入国するために時間がかかるので、帰国も出来なかった。チーム探しのためにコンディションは維持しなければならない。けどトレーニングするチームが無い。
人生で最も落ち込んだ時期でした。ほぼ鬱状態。
この先どうしよう・・・。
不安でいっぱいになりました。
ただ「落ちる所まで落ちると上がるしかない」。ここで辞めたら全ての努力が水の泡になってしまう。もう少し辛抱しよう。そう自分に言い聞かせました。
お金が無いのに、ジムの会員へ契約したり。1人でボールを蹴ったり、走ったり。町の草サッカーを探せるアプリを見つけて、近所で開催される試合へ出来る限り行きました。レベルが高い人が集まる試合を中心に参加して。 1ヶ月くらいは、不安の中で貯金を切り崩して過ごしました。
努力していると新たな扉は開かれる。トップチームとの契約は叶いませんでしたが、セカンドチームからオファーを受けることが出来ました。
Q:その後アメリカからスウェーデンに移籍されています。その流れを教えてください。
アメリカのセカンドチームでプレーしましたが、「トップチームへの昇格が厳しいな」と感じていました。外国人枠のあるトップチーム。セカンドチーム所属の無名日本人選手より、代表クラス選手を契約した方が手っ取り早い。
プロになるには、この状況からどうにか抜け出さないと・・・。そう思いました。
そこで頭に浮かんだアイデアが、ヨーロッパへの移籍。
まずはどうやってヨーロッパに行けるかを考え抜きましたね。ビザの問題。移籍する国。プロ契約にできるか。情報収集していたとき、大学の元チームメイトがスウェーデンの2部でプレーしていることを知りました。プロ選手とアマチュア選手が混ざっているセミプロクラブ。「クラブが降格争い中で、監督が選手を探している」と聞きました。
元チームメイトの彼女が気を利かせて、監督に掛け合ってくれました。そしたらプレービデオを送るように言われて。ビデオ審査の結果、”1週間”で契約まで至ることになりました。
加入後はコンスタントに試合に出場し、チームも2部残留を達成しました。
Q:アマチュアからセミプロへと着実にステップアップ。スウェーデンからフィンランドへの移籍でプロ契約を勝ち取ったと聞きました。
スウェーデンのクラブからは、来季のオファーを貰いした。しかし、金銭面でプロ契約の条件提示はできないかも・・・。と、あやふやな返事をされて。4ヶ月ほど待たなければならない可能性が出てきました。最終的には、ビザの関係でスウェーデンから日本へ帰国せざるを得ない状況になり・・・。後編へ続く→リーガエスパニョーラで戦う現役なでしこインタビュー【品田彩来選手】後編
品田選手が各国で感じた海外のサッカー。日本人選手が海外でプロサッカー選手として活躍するためのヒントとは?
こちらのインタビュー動画は本記事と違う内容になっています。是非御覧ください!
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