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2点差リードでハーフタイムにサッカー監督が絶対言ってはいけないフレーズ


目次[非表示]

    1. 0.1.はじめに
    2. 0.2.ハーフタイムでの失敗
    3. 0.3.ハーフタイムですべきこと
    4. 0.4.ハーフタイムでのチームメンタルコントロールの重要性
    5. 0.5.2-0のスコアでかけた言葉の何が悪かったのか?
    6. 0.6.監督の監督であるコーディネーターの意見
    7. 0.7.まとめ

はじめに

チームが2点差でリードしているとき、サッカーには1つのジンクスがあります。「2-0」が一番危ないスコア。これはサッカー監督・選手なら、よく耳にするのではないでしょうか?

なぜなら、サッカーには2点差から試合を逆転されることが多いという通説があるからです。

もし、あなたが監督なら2-0で勝っているチームにハーフタイムで何と声をかけますか?


ハーフタイムでの失敗

ハーフタイムの指示は、試合中に監督ができる最も重要な仕事の一つと言って良いと思います。監督の一言で、チームは後半に「崩壊する可能性」も「持ち直す可能性」もあります。

私がスペインで4部リーグ(日本のJFL)下部組織のU-18のチームを指導していたとき、ハーフタイムの監督の言葉の重みを感じました。

私たちのチームが5位で迎えた4位チームとの一戦でした。前半は、私のチームの流動的な攻撃に相手は手も足も出ない状態で、完全に試合を支配していました。まさに、我々がクオリティーで完全に勝っている。そんな雰囲気が流れていました。前半終了間際に2点を取り、私達は2-0の2点差リードでハーフタイムを迎えました。

スペインでは、相手のシステムや戦術に合わせてハーフタイムで変更を行います。プレッシングのパターン変更、選手交代、システム変更、攻撃のプラン変更など様々な駆け引きが行われます。

しかし、その時の私は「気を抜かないことだけ・・・」と考えました。前半の戦術プランは上手くハマっていましたし、選手もそのプランで気持ちよくサッカーをしていたからです。戦術的な変更箇所はなく、とにかくメンタル的な部分のアプローチが必要だと判断しました。

「2-0のスコアはサッカーで最も危険だ。0-0の気持ちで気を引き締めていこう!!」

【合わせて読みたい】
ジャイアントキリングを起こす!サッカーで弱小チームが勝つ方法は「4つの優位性」

後半開始のホイッスルと同時に、相手の監督のゲームプランが全く変わったことに気づきました。相手はポジショナルプレーで後方からボールを繋ぐことを諦め、フィジカル的に優れたFWを投入。彼をターゲットにしてロングボール主体の戦術に変更してきました。

そこまで先を読めていなかった私は、「しまった!」と思いました。その直後、チームはセットプレーから、そのFWに失点を許してしまいました。

その後は、終始相手にゲームを支配され、立て続けに失点。(支配するというのは、ボールを保持することではありません。ペナルティーエリアにより多く侵入した方がゲームを支配しているチームだという考え方がスペインには存在します。)

ボールを持たされて、意図的なプレッシングからのショートカウンター、さらにロングボールの対応に遅れをとり、結局2-4で逆転負けを喫しました。


ハーフタイムですべきこと

まず、監督とコーチングスタッフがハーフタイムですべきことは、①前半のゲーム分析と、後半のゲームプランの決断・指示 ②選手のメンタル的負荷の確認とコントロール ③チームのメンタルコントロール ④選手のフィジカル的な負荷の確認と休養の確保。大まかに言えばこの4つの分けられます。

①前半の分析と後半のゲームプランの決断と指示

ハーフタイム指示に入る前に、前半の試合分析を行います。コーチングスタッフと相談して意見を出し合います。スペインではDAFO分析と呼ばれる分析フレームワークが使われます。

「自分のチームの弱み・強み」「相手チームの弱み・強み」を分析して比較検討し、後半に「狙うべき点(自チームにとってチャンス・機会となる点)」と「修正すべき点(自チームにとって脅威となる点)」の指示を与えます。

指示の声のトーン・表情・ジェスチャーを駆使して、話の内容を選手の頭に植え付ける必要があります。淡々と話す場合もあれば、怒りを示す場合も必要です。チーム・選手のメンタル状況によって、チームが必要となる雰囲気を作り出すために監督は「演じる」必要があります。

②選手のメンタルコントロール

監督は選手1人1人の表情・歩き方・選手同士の会話などの情報から各選手のメンタル状況を把握する必要があります。「試合で上手くいっていない選手」に対して、コーチングスタッフが声をかける。ハーフタイムで直ぐに監督は話さず、選手同士でゲームについて話をさせる。などの関わりが必要となります。

スペインで活躍する日本人サッカー選手が語るスペインと日本のサッカーの違い【メンタル編】


③チームのメンタルコントロール

各選手のメンタル状況がある程度把握できたら、後半に予想される展開を読んで、チーム全体のメンタルコントロールを行います。ここで難しいのは「言葉選び」です。

私が2-0でリードしているチームにかけた「2-0が一番危険なスコアだ。0-0の気持ちでいこう」この言葉に、絶対に言っては行けないフレーズが隠されていました。

【合わせて学ぼう】選手のモチベーションをあげる9つの要素


④選手のフィジカル的な負荷の確認と休養の確保

これは、基本中の基本です。監督が椅子に座って選手を立たせてハーフタイムの指示を行うのは「選手の休養の確保」の観点から言うと論外です。自分が話す前にしっかり選手たちの水分・塩分補給を促し、休息の時間を与えるのがハーフタイムの一番の目的でなければなりません。

また監督は各選手のフィジカル負荷を把握しておく必要があります。なぜなら、後半の選手交代のカードをある程度予測することが可能だからです。選手は必ず「プレーできる」と言いますが、監督・コーチは選手の息遣い・表情・言葉遣いなどで、フィジカル負荷を予想する必要があります。


ハーフタイムでのチームメンタルコントロールの重要性

心理学的に実証されていますが、人間の集団には「社会的促進」と「社会的手抜き」という現象があります。

「社会的促進」とは、

「一人で走るよりも、誰かと競争したときの方が早く走れる」など、他者がそばにいると単独時に比べて遂行成績が上昇する現象のことである。

「社会的手抜き」とは、

集団で何かをするとき、1人あたりの遂行成績が単独でするときよりも低下する現象のことである。

例えば、道路舗装工事で1人では1時間に6平方メートルの工事を終えることができる。では、50人が1時間働くと、どのくらいの工事ができるか。算数なら、小学校レベルの問題であるが、現実問題となると1人が1人分の働きをすることは保証されない。


※出典 無藤隆、森敏昭、遠藤由美、玉瀬耕治、2018『新板 心理学』有斐閣出版

「チーム一丸」となると普段以上の力が出ることがあります。ジャイアント・キリング(選手の質で劣るチームが、格上の相手に勝つ)が起こることは、社会的促進と言えます

逆に、5-0で勝っている状況で簡単に失点したりするのは、社会的手抜きとなります。

特にサッカーは11人の選手のメンタルがチームのパフォーマンスに大きく影響します。監督・コーチは、チーム及び選手に「社会的手抜き」を抑えて、「社会的促進」を促す関わりをする必要があります。


2-0のスコアでかけた言葉の何が悪かったのか?

「2-0が一番危険なスコア」と、選手に暗示したこの言葉が落とし穴でした。私は、「社会的手抜き」を防ぐためにかけた言葉のつもりでした。しかし、実際は何の根拠もない通説で選手を追い込んでいたのです。

なぜなら、データは2-0が危険なスコアだとは表していません。スポーツWEBメディアの「ピナルク」では、面白い分析結果を示しています。→https://www.pinnacle.com/es/betting-articles/Soccer/how-often-is-the-2-1-lead-oveturned-in-soccer/52JJ5FP9QSTGZ56M

2対1のスコアが発生したPremier League132試合のサンプルでは、リード側チームが最終的に勝利したのは101試合あり、引き分けが25試合、逆転負けが6試合ありました。

これらの数字を勝ち、引き分け、負けの確率に変換すると、それぞれ76%、19%、5%となる・・・

※一部省略

つまり、2-0から1点を取り返されて、2-1のスコアになったとしても、落ち着いて対応すれば76%の確率で勝利になるということです。

これはプレミアリーグのデータですが、得点数の少ないサッカーでは劇的な逆転劇は珍しいものです。だからこそ2点差からの逆転負けは、観客・監督・選手の頭に強く印象付けられます。そして、「2-0」が最も危険なスコアだという説が浮かび上がったのでしょう。

あの時の選手たちには、「0-0の気持ちで気を引き締めていこう」という一言で良かったのです。「2-0のスコア=逆転」と刷り込まれた選手たちは、1失点の後、慌てて落ち着きを無くしていました。思い込みを作り上げてチームを敗北へ導いたのは、私自身だったのです。


監督の監督であるコーディネーターの意見

監督の上司であるコーディネーターにこの話をすると、「それは若い監督によくあるミスだ」と一刀両断されてしまいました。チームのメンタルを先読みする力は監督のレベルを表す一つの指標のようです。

もう一つ、私が戦術的な変更点を指示しなかったことにも彼は不満なようでした。なぜなら、前半上手く行かなかった相手が、後半同じプランで戦ってくる確率は0%だからです。

相手の戦術プランを先読みして(試合前のスカウティング・相手のベンチ・相手監督のプラン変更の傾向から予想可能)指示を与えるべきでした。

チームのメンタルコントロールへの声かけ、前半の分析だけでなく相手の動きを先読みした後半のゲームプランの指示。この2つが私に足りていなかったことに気付いて、選手に申し訳ない気持ちになりました。

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まとめ

ハーフタイムの時間を監督がどう使うかで、チームは奇跡的な逆転を引き起こしたり、反対に、前半の好調が嘘かのように試合をひっくり返されたりします。

監督、そしてコーチングスタッフに与えられたハーフタイムの時間は「たった15分」です。しかし、「されど15分」です。

神は細部に宿る。ハーフタイムの一言に拘れる監督・コーチがいるチームが栄光を掴むのでしょう。

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栗本悠人

栗本悠人

スペイン協会公認サッカー指導者ライセンスレベル3所持(日本のS級相当)スペインの現地クラブで小学生年代から高校生年代まで全カテゴリーの監督を歴任。大学時代は人間性の教育の研究に従事し、小学校教員免許を所持する。教育学、経営学、心理学をヒントに、サッカーの競争原理と育成の統合を目指している。スペクラ創設者&スーパーアドバイザー。 

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