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【バルセロナで戦うサッカー監督コラム】プレイヤーズファーストへの想い

はじめに

前回は、指導者間の競争があることによって【指導者レベルの底上げ】【指導力の向上】に繋がるという観点でお話をさせて頂きました。

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しかし、それだけでは日本サッカー界のレベルが飛躍的に伸びる事はありません。

なぜならば、日本の育成年代の構造はプレイヤーズファーストの観点が欠如していると考えるからです。​​​​​​​


スペインのプレーヤーズファースト

例えば、スペインでは選手一人ひとりの最低限の出場時間がサッカー協会のルールとして定められています。カタルーニャ州ではU-12まで7人制サッカーを行っており、公式リーグ戦の試合時間は15分✕4本です。リーグ戦では、各選手最低15分間は出場しなければ失格処分となってしまいます。

もっと詳しいスペイン育成年代の仕組みはこちら
トッププレーヤーを輩出し続ける!!スペインサッカー育成年代リーグ戦の仕組み

また選手の怪我の予防や、クオリティーとインテンシティーの高い試合を生み出す目的で、『一日一試合』が義務付けられています。

もちろん、これらが必ずしも良いかというと、そうでは無いかもしれません。しかし、「プレイヤーの目線に立った本当の意味でのプレイヤーズファーストの実現」を目指した改革である私は思っています。


日本の現状

では日本の場合はどうでしょうか。選手の出場時間数は各チームが自主的にコントロールしており、協会が明確な義務やルール付けを行っていないのが現状です。そして、一日の試合数をコントロールする習慣が乏しく、選手たちは週末2試合以上を行うこともあるようです。これでは、体を回復することができず、悪いコンディションの中でプレーをする必要性が出てきます。

もちろんチームによって、試合数をコントロールしたり、出場時間数をコントロールする等の措置を取っている場合もあるでしょう。しかし、まだほんの一部のクラブだけであると思っています。

プレーする選手達本人は頑張りたくても、一日に何試合もある練習試合を100%でこなせるはずがありません。自然と質の悪い動きが増えてしまい、100%を出さないプレーが習慣化されます。構造面の欠陥があるのですが、走れないことを注意されてしまうのです。「体力が無い!走り込みだ!」という言葉はよく聞きます。

本当にそうなのでしょうか。大人が同じように1日に100%で何試合もプレーできるでしょうか?と、私は思います。


100%を出す

100%を出すことが習慣化しているスペイン人は、オンとオフの切り替えのレベルが高い気がします。その理由の一つとして、試合数のコントロールが影響していると思います。

『週末のゲームのために入念に事前準備をし、その一試合に全力をかけ、最高のパフォーマンスをして勝つために戦う』

緊張感のある試合だからこそ、オンとオフの切り替えが勝利を左右する大きな要因となります。さらにクオリティーとインテンシティの高いゲームが展開されるのです。

100%集中して仕事をするには、労働時間のコントロールが必須です。また、100%集中して勉強するには、授業時間のコントロールが必須です。

では、100%集中してサッカーをするには、試合(練習)時間のコントロールも必須なのではないでしょうか?
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まとめ

厳しい​​​​​​​言い方ではありますが、サッカー協会が先導して、日本の育成に適したルール作りをしなければ、世界との差は縮まる事はないと思います。

今、日本のサッカー界は転機を迎えています。

サッカーの最先端の情報が手に入り、それを実践して試すことが可能な時代になりました。「量よりも質が大事」という考え方がより広がると、日本サッカーはもっと良くなっていくでしょう。確実に一歩一歩、しかし、一歩一歩大幅で進むためには、構造面の問題を解決することが先決です。表面的なプレイヤーズファーストではなく、本当の意味でプレイヤーズファーストを意識したルール作りを進める必要があります。そして、高い緊張感のある試合が毎週末行われる環境が整備されたとき、さらに世界との差は急速に縮まっていくでしょう。


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中村貴大

中村貴大

スペイン・バルセロナ在住 スペイン協会公認サッカー指導者ライセンスレベル2所持(日本のA級相当)スペインの現地クラブでU-10・U-14の監督を務める。過去に育成コーディネーターとしてスペイン指導者の育成にも携わった。Tiwitter→@Spas11nv11Taka

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