アトレティコマドリードに学ぶ!失点を劇的に減らすペナルティエリア付近での守り方
目次[非表示]
- 1.はじめに
- 2.ペナルティエリア付近で重要なプレー原則
- 3.ペナルティエリア付近のゾーン分け
- 4.おわりに
- 4.1.関連記事
はじめに
ペナルティエリアを制する者が試合を制する。
スペインではボール保持率よりもペナルティエリアに侵入した回数が重要視されます。試合の流れを読むポイントとして、ペナルティエリア内に何度たどり着けているか?に注目すれば、どちらのチームに試合の流れが傾いているかも分かります。たとえボールポゼッション率が70%あっても、10分間に1~2回決定的なシーンをペナルティエリア内で作られる。そのような守備力では折角の攻撃力も半減してしまいます。
リーガエスパニョーラで最も守備組織が美しいアトレティコマドリード。FCバルセロナや、久保建英選手の所属するレアルマドリードに次ぐスペインの強豪です。シメオネ監督の就任以来、その名は世界に広まりました。予算規模が他の2大クラブに比べて3分の1ほどしかない中、強固な守備組織で個の能力に対抗しています。
今回は「アトレティコマドリードに学ぶ!失点を劇的に減らすペナルティエリア付近での守り方」と題して、シメオネ率いる2017-18シーズン・アトレティコマドリードのペナルティエリア付近の組織守備を分析しました。
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ペナルティエリア付近で重要なプレー原則
ペナルティエリア付近の守備には細心の注意が必要です。少しの隙が命とりとなります。何に注意を向ければいいのか?どのような原則をミスしてはならないのか?を理解していなければ、そもそも守備を構築することすらできません。
①ライン間のバランス
ペナルティエリア付近で各ラインの間の距離感が悪いと、ライン間のスペースを簡単に使われてしまいます。各ラインの間は、5m~10mに保ちます。
②ラインバランス
ラインバランスとは、同ライン上の選手同士の距離感を指します。ラインバランスが悪いと、選手同士のギャップが広がり、相手にラインを切り裂かれるシーンが増えます。
③センターリングに対する守備組織の構築
ペナルティエリア付近では、センターリングに対する守備組織の構築をオーガナイズする必要があります。特に各チームで共通理解がないと、サイドに流れすぎて肝心なゴール前に人が足りない・・・なんてことも。アーリークロスや深い位置からのセンターリングに対して正しいポジションをとれるようにしましょう。
ペナルティエリア付近では、「人」へのマークにより注意を向けなければなりません。なぜならば、ゴールを決めるのは「人」だからです。では人を捕まえるためには、周りの状況・ボール・自分のマークを同時に把握する必要があります。認知するときに必要な「体の向き」「首を振る」「ポジショニング」の3つを常に意識しましょう。
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ペナルティエリア付近のゾーン分け
今回は、ゾーンを以下の図のように4つに分けて分析を行いました。
ゾーン①=ゴール正面のバイタルエリアでの守備
ゾーン②=ピッチを縦に5つに割ったときの、ハーフスペースの守備
ゾーン③=アーリークロスの可能性がある場合の守備
ゾーン④=深い位置からのセンターリングに対する守備
アトレティコマドリード vs レアルマドリード スタメンとフォーメーション
4-4-2のフォーメーション。ペナルティエリア付近の守備では、4-4-1-1となり、グリーズマンが守備へ参加し、ジエゴ・コスタが前でカウンターに備える形をとっていた。
4-4-2のフォーメーション。フィニッシュゾーンの攻撃では、両サイドバックが攻撃参加し、両サイドハーフのルーカス・バスケスとアセンシオが中央でプレーする場面が多くみられた。また2トップは流動的にサイドに流れたり、中盤に降りてきてボールを要求したりと2人のうち1人には自由が与えられていた。
ゾーン①での守り方
ゾーン1ではDFラインがペナルティエリア外にラインを保つ原則が見られました。また中盤の4人のうち1人がボール保持者へ必ずプレスして圧力をかけています。
①ライン間のバランス=5m以内に抑え、スペースを減少させる。ペナルティエリア内のスペースはキーパーと協力して守備を行う。ペナルティエリアから出る。時間がない場合は全力でラインアップする。
②ラインバランス=ペナルティエリアの幅よりも広がらず、ラインのバランスを保っている。人と人の間の距離間を減少させ、ギャップを消す。
③センターリングに対する守備の構築=無し
④認知=全体がボールの位置と味方との距離間を把握する。スペースを埋めながら、ゴールに近い相手に対しては、「人」につく。
ゾーン②での守り方
ゾーン2のハーフスペースでボールを受けられた場合は、サイドへボールを誘い込む守備が目立ちました。ハーフスペースは危険なゾーンですが、サイドへボールが流れることによって、センターリングに対する準備をする時間を稼げます。
① ライン間のバランス=DFラインはペナルティエリア外にラインを保つ。中盤ラインは全力でプレスバック。中盤の選手はボール保持者へ挟み込む守備を行う。
②ラインバランス=逆サイドのセンターバック・サイドバック・ボランチ・サイドハーフはゴール前の守備。人と人の間の距離間を減少させ、ギャップを消す。
③センターリングに対する守備の構築=無し
④認知=全体がボールの位置と味方との距離間を把握する。敵の位置を確認して、センターバックかサイドバックがボールへアタック。サイドへボールを追い出す為の、体の向きやプレスのかけ方を意識。
ゾーン③での守り方
ゾーン3では、DFラインがペナルティエリア内、中盤ラインがペナルティエリア外にいることが多く見られた。またサイドのボールに対して、サイドバックとサイドハーフが、カバーリングとペルムータを上手く使っている。サイドバックのカバーにサイドハーフが入るのが特徴的だ。
①ライン間のバランス=5m以内に抑え、スペースを減少させる。ペナルティエリア内のスペースはキーパーと協力して守備を行う。
②ラインバランス=センターバック2人と逆サイドバックはゴール前のセンターリングに対する守備を行う。ボール保持者にプレスするサイドバックと近い方のセンターバックの間に、敵がいる場合、また他の選手のカバーが追いつかない場合は、センターバックがゴール前を捨ててカバーにでる。
③センターリングに対する守備の構築=逆サイドのCB・SB・ボランチ・サイドハーフがセンターリングに対して備える。ボールに近いセンターバックは、ボールサイドのカバー、もしくはゴール前のセンターリングに備える。
④認知=マークを確認・明確にする。身体の向きは半身。首を振ってマークの状況を確認する。ポジショ二ングは前のスペースをアタックされてもぶつかれる位置。人につくマークを行う。
ゾーン④での守り方
ゾーン4では中盤ラインもDFラインもペナルティエリア内に位置している。ボールサイドより、ゴール前のセンターリングに対する守備に人数を割く。
①ライン間のバランス=5m以内に抑え、スペースを減少させる。ペナルティエリア内のスペースはキーパーと協力して守備を行う。
②ラインバランス=ゴールに近くにつれ、距離間を短くしていく。サイドバックとセンターバックの距離が開くので、そのスペースへカバーリングする。
③センターリングに対する守備の構築=逆サイドのCB・SB・ボランチ・サイドハーフがセンターリングに対して備える。特に逆サイドのボランチは、DFラインに吸収される形となる。ボールに近いセンターバックは、ボールサイドのカバー、もしくはゴール前のセンターリングに備える。
④認知=マークの確認・明確にする。体の向きは半身。首を振ってマークの状況を確認する。最後に「人」につくマークを徹底。
おわりに
ペナルティエリアを制するものが試合を制する。
このフレーズを頭に入れて自チームのトレーニングを行えば、ゴール前で組織的に粘り強く守備できるチームへ変貌することでしょう。もちろん攻撃も大切ですが、守備のプレー原則の落とし込みにも時間を割く必要があります。ぜひ今日のトレーニングに取り入れてみて下さい。
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