【現地サッカー監督コラム】人を導くリーダーになる指導者の4つの心構え
スペインと日本のサッカーのレベルの違いはどこから生まれるのか?
- サッカーが文化になっている。
- 戦術理論が世界最先端で言語化されている。
- トレーニングメソッドが整理されている。
- リーグ戦制度が整えられており、トップレベルの選手が高いレベルで競うことができる。
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スペインでサッカーを学び、現地でサッカー監督をするようになって、日本サッカーは世界からこれだけ引き離されているのか・・・と正直愕然としました。しかし、これらは簡単に変えることのできるものではありません。歴史と学びの積み重ねが築き上げて、スペインサッカーの最高峰の環境を生み出しています。
ではスペインに追いつく・追い越すために日本がすべき事は?
私は指導者としての『リーダー資質』から意識して追い越していく必要があると思いました。
スペインでも日本でも優秀な監督は「リーダーの資質」を兼ね備えています。人は人。スペイン人でも日本人でも良いリーダーの基準は変わりません。
日本人監督として悔しいですが、スペイン人監督の方が「その資質」を持って戦っている割合が多いと感じています。
この資質を真に理解して実践して行けば、理論や方法論は後からついて来ると思います。そこで今回は、私自身がスペインでサッカー監督として初めて選手を導く立場となったとき、最も尊敬するスペイン人指導者に伝授された「リーダーとしての指導者の4つの心構え」をご紹介します。
①覚悟
『君に指導者として子供・親・クラブ・地域を巻き込んで戦う覚悟があるか?自分の人生をかける覚悟があるか?サッカー指導者【教育者】は、子供の人生を最高にすることも最悪にすることもできる。
人を導く職業はあまり多くない。仕事は「人を動かす仕事」と「人に動かされる仕事」に分かれる。どちらが良くて、どちらが悪いということはない。どちらも誇りを持って仕事をしているのであれば大事な役割だ。
だが、「人を動かす立場の人」は、「みんなの為にもっと先へ」
「人に動かされる立場の人」は、「自分のことを完璧に」
それでは、教師やサッカー指導者はどうだ?「人を動かす立場の仕事」だよな。「自分のことを完璧に」こなすだけでは不十分なんだ。人を導く覚悟が必要。未来を見通す力も、自分を律する力も、人を魅力する力も必要。
指導者が夢を持たないなら、選手たちは夢を持たない。
指導者が学び続けなければ、選手たちは学ばない。
指導者が自分が何者かを知っていないなら、チーム・選手は自分たちを見失うだろう』
これが彼の1つ目のアドバイスでした。チームのリーダーとはそれほど大きな存在なのだと気付かされました。そして一人の人間の人生に関わることの重大さを教えてもらいました。
確かに、優秀な指導者は素晴らしい人格者です。私の恩師たちはスペイン人でも日本人でも素晴らしい人間でした。それは「相当な覚悟で人を導いていた」のだと今になって気付かされます。
②愛
『指導者・もしくは教育者で「愛」のない者は、子供たちと共育することは不可能だ。上っ面の愛は、子供に伝わる。心から愛する。もちろん親子の様にはいかない。だから無償の愛でなくてもいい。全ての子供を自分の子供の様に愛することは出来きない。でも、それを認めた上で「人の人生を背負う覚悟を持って愛すれば、親子の愛に近いもの生まれる」こともある』
納得しました。なぜなら今まで僕が出会った指導者で本当に素晴らしいリーダーたちは必ず『愛』を持って接してくれていました。【Amor アモール(スペイン語で愛の意)】は、人を導くリーダーとなる上で最も重要なのかもしれません。
バルセロナで活躍する優秀な指導者たちも「愛」に溢れた人物たちです。これは日本人指導者も同じだと思っています。
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③継続性
『多くの人は継続することを知らない。なぜなら人間は、常に「弱い生き物」だと頭に入れていないからだ。物事がうまくいっていないときは、あれこれ考えて乗り越えようとするが、物事がうまくいっているとき「できていたことを止める」習性がある。リーダーが止まれば、チームは止まる。リーダーがだらけた生活をしていては、チームもだらける。リーダーは走り続けなければならない。』
これはサッカー監督だけではなく、どんな事でも当てはまります。
当たり前のことを継続する事。これがすごく難しい。そして、これを出来る人だけがリーダーとしてふさわしい人間になって行くのだと思います。
スペインの育成年代のサッカー監督はユースのトップレベルの監督でも500ユーロ〜800ユーロほどを貰えれば良いところです。日本円で6万〜10万でしょうか?もっと下のレベルの指導者たちは2万円〜5万円でチームを見ています。
2万円〜5万円しかもらわない彼らが何をしているか?
敵の偵察と分析、日々のトレーニングメニューの作成、年間プランニング作成、毎週末の試合、モチベーションビデオ・分析ビデオの作成、年間の選手の出場時間や出席の記録などをつけています。毎日。毎週。毎月。毎年。
以下は僕の監督としての日々の記録や仕事内容です。スペイン人の育成年代の監督たちは当たり前の様にしている事ですので、自慢できる内容ではないですが、参考までにご紹介します。
【試合出場時間】
【カード・得点】
【年間プランニング】
【月間プランニング】
【週間プランニング】
【DAYプランニング】
【トレーニングメニュー】
スペインの育成年代の指導者たちは、プロに相応しい仕事をしている者がプロになると知っています。
プロに育ててもらうんじゃないんです。自分でプロになって行くのです。
お金は関係なく、夢にかけて仕事を継続する力
それは指導者・教育者にとって欠けてはならない要素ではないでしょうか?
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④ユーモア
『君はいつも顔が強張っている。表情をコントロールしないと。大人も子供も笑顔がなくては生きていけない。笑えない人生なら何の為に生きているんだ?笑顔になれないサッカーならやめた方がましだ。監督が苦しい顔をすればチームも苦しい顔になる、監督が苦しいときに笑顔でいなきゃだめだ。』
ユーモア。意外と気づかない要素です。僕も彼に教えてもらって、ハッ!としました。
チームの選手たちの表情は、監督の表情そのものです。ですから、私は選手の表情からたくさんのことを学ばせてもらっています。
笑顔にもたくさんあります。
面白い時の笑顔。真剣に学んだ時の笑顔。苦しいことを乗り越えた時の笑顔。成長した時の笑顔。もちろんヘラヘラした笑顔も大切です。
その笑顔の種類と数をどれだけ生み出せるか?そんな場所を作れるか?それが教育者・指導者の忘れてはいけない道ではないでしょうか?
難しいです。私自身まだまだ修行の身です。
ただ私が出会った偉大な指導者は必ずユーモアを持ち合わせていました。「けじめ」を子供に教える・躾けることの出来る人たちだったと思います。
まとめ
今回ご紹介した4つの資質は、サッカー監督そして子供たちの人生に関わる全ての人々が意識すべき要素です。もちろん実践されている方々も多々おられると思います。ただ再確認の意味も込めて、できるだけ多くの指導者がこの4つ要素を意識して日々サッカーに携わると、日本サッカーが変わるきっかけになるかもしれません。まずは私が毎日実践しようと思います。
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