攻撃に差を生み出す!センターバック攻撃ビルドアップ時の要点
目次[非表示]
はじめに
現代サッカーでセンターバックというポジションに求められる役割は守備時だけではなく攻撃時にフォーカスされるものも多い。攻撃のスタートとなる役割も求められるセンターバックだが、守備戦術の発達、プレッシングのバリエーション増加により「ビルドアップ」で苦戦する選手も多いのではないでしょうか。
ディフェンスの選手に求められる守備能力に加え、常に危険と隣り合わせの中でボールと共に前進する能力。
今回の記事ではビルドアップのスタートとなり、比較的広くピッチを見渡すことのできるセンターバックが攻撃時に意識するべき基本的な要素を試合前の準備、試合中ボール非保持時のアクション、ボール保持時の技術アクションに分けて解説していきます。
試合前に行える準備、相手のフォーメーション、プレッシングタイプ分析
試合中に取り入れなければいけない情報が多すぎる、、変化していく状況の中で認知が追いつかない、、
こういった悩みを持った選手はピッチで認知すべき情報を絞れていないケースが多いのではないでしょうか?
確かに試合の中での「良い体の向きを作る」、「首を振ってまわりを見る」アクションは認知の局面で重要となります。
ですが複雑性の高いこの競技では、このスポーツの「特徴」や「傾向」を事前に理解し頭に入れておく事で認知すべき情報の整理ができ判断スピードを高めることができます。
センターバックが意識しておくべき基本的なフォーメーションの噛み合わせ、自チームのビルドアップに対する相手チームのプレッシングタイプ分析。守備時のシステム変化によってセンターバックが基本的に対峙するFW、MFのプレスがどのような傾向で行われているのかをいくつかのタイプに分け、どこを捨ててくるのか、どこにスペースができるのかを分析しておきます。
【合わせて読もう!】【連載:セビージャで戦うサッカー監督】スペイン現場試合分析1(全3回)
例:1-4-3-3 VS 1-4-3-3
タイプ1 1トップ 数的不利(限定)
1トップが2CBに対して限定し数的不利から数的同数を作る
逆のCBがフリーに
タイプ2 1トップ+インテリオール 数的同数(プレッシング)
片方のインテリオールが出てきて4-4-2にシステム変化、2トップのような形で2CBへプレス
中盤が攻撃側の数的優位に
タイプ3 1トップ+ウイング 数的不利→同数(外切りプレッシング)
ウイングの選手がSBへのパスコースを切りながらCBへプレス
サイドバックがフリーに
タイプ4 数的同数でのプレッシング(コート全体で1対1の状況)
中盤から1枚、DFラインから1枚前のラインに加わり前線からのプレスに出てきている状態。
相手最終ラインが数的同数の状態に
etc...
【合わせて読もう!】【解説】サッカーフォーメーション4-3-3の長所・短所とシステム変化
ボール非保持 「攻撃の戦術アクション」ポジショニングと体の向き
実際の試合の中でのアクション。
試合中の大半の時間を、選手はボールを持たずに過ごします。
技術アクションの前後のポジショニングと体の向きで見える範囲が変わり、選択肢が増える。
ポジショニングの捉え方として、CBは「ボールを受ける」ために相手から離れ自分のためのスペースを作り出すことに加え、「ボールを受けさせる」ために自分をマークする相手を引きつけ、味方のためのスペースを作るという2つの意図を持つことが重要です。
常に自分がボールを受けようと「近寄る」アクションだけでは自分だけでなく味方のサポートに入るスペースを消してしまう可能性も。
状況によってボール保持者に意図を持って「近寄る」「離れる」「角度を作る」事でサポートが可能。
ボールを受ける前には選択肢を増やす意識を持っておく。
プレスにはまってしまう選手の特徴として挙げられるのはボールを受けた時点の体の向きによって既に選択肢が少なく、プレスの方向が絞りやすいといった点です。
プレスで限定される前から選択肢を絞らせないように、「できる限りコート全体が見え、次のプレーの選択肢を複数確保できる体の向き」を作っておくことを意識しましょう。
継続的に味方に対する効果的なサポートを行うためには技術アクションを行う前の「事前アクション」と後の「事後アクション」をセットで整理しておくことも重要です。
例)コントロールの事前アクション→パスコースを与えるポジショニング、選択肢を持つ体の向き パスの事後アクション→アクションを止めず異なる方向へのサポートで味方への選択肢を与える。
【合わせて読もう!】4種類のサポート|サポートの種類を使い分けてボール保持率UP!
ボール保持時 「攻撃の技術アクション」
実行のフェーズ、ボール有りの3つの重要技術アクション
1.コントロール
ボールを受ける際のコントロールの重要性「オプションを持つコントロール」。
良い体の向きを作れていてもコントロールのボールの置き所次第で次のプレーオプションを減らしてしまう可能性がある。ボールロストを恐れ、相手からボールを遠ざけるコントロールも状況によってはオプションを減らし自らが苦しい状況へとなりうる。
相手との距離がある場合は積極的にボールを前に置きプレスを回避するためのオプションを増やす。
ポジショニングで得た数的優位でも「オプション」がなければDFは楽に守備ができてしまう。周りの選手はオプションを与え(ポジショニング)、ボール保持者はボールを有効なスペースへ運びだすコントロールオリエンタード(方向づけられたトラップ)によってオプションを確保する。
【合わせて読もう!】トラップ際を狙わせない!サッカーの試合でつかえるトラップのコツ【3ステップ】
2.パス
最優先すべき技術アクション。
ドリブルよりもプレースピードが上がり、身体的負荷も少ない。
最終ラインの選手は、できる限りラインや人を超えるパスを意識しましょう。
味方のオプションを失わせない、戦術的意図(前進、保持、引きつけ etc...)を込めたパスを常に心がける。
【合わせて読もう!】パスがサッカーの試合で上手く使えるようになるコツ10選
3.運ぶドリブル
パスコースが無く、スペースが有る時は運ぶドリブルの3つの用法(前進、引きつけ、割って入る)を使い分けビルドアップを試みる。
運ぶドリブルによって何が引き起こせるか、戦術的意図を整理と生まれるスペースを理解しておくと良いでしょう。
【合わせて読もう!】コンドゥクシオンってなに?スペインの常識『運ぶドリブル』をマスター!
終わりに
絶え間なく複雑に状況の変化するこのスポーツで「型にはまった」選手になることは危険ですが、原理原則などの基礎知識の整理や必要な情報の事前収集等、ピッチ外でも学べること、準備できることは沢山あります。特に最後方からピッチ全体を常に見渡し攻撃を組み立てる役割を担うセンターバックの選手がサッカーの知識を深めることは個人、そしてチームの大きな成長へと繋がります。
FCバルセロナのCB、Lenglet選手はとあるインタビューで対戦相手攻撃陣の特徴をビデオで分析すると述べていましたが、同様に攻撃局面にも目を向け相手チームのプレスのパターンや特徴の分析も行いプレーしています。また同僚のPique選手に対し「誰よりもサッカーを理解している」とコメントを残しているように、ビッククラブを支えるのは日々の激しいトレーニングに加え「サッカーをよく理解する」ための公には見えない場所での努力を行っている選手達なのかもしれません。
関連記事
【サッカーのポジション別役割まとめ】センターバック(攻撃時のタスク)