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【連載:セビージャで戦うサッカー監督】スペイン現場試合分析1(全3回)



目次[非表示]

  1. 1.試合分析において重要なこと
  2. 2.対戦相手の分析
  3. 3.試合前のチェック
  4. 4.分析方法
      1. 4.0.1.〈図1〉相手は青、1-4-4(ライン)-2。自チームは1-3-5(中央はダブルボランチとトップ下)−2。
      2. 4.0.2.〈図2〉相手チームは1-4-4(ダイヤモンド)−2。自チームは上記と同じ。
    1. 4.1.まとめ
    2. 4.2.関連記事

近年、アナリストの存在がクローズアップされ、その中でも「試合分析」が注目されています。
世界中のTV番組では、スクリーンを使って、プレーの解説が行われるのが当たり前となっています。

スペインの戦術解説サッカー専門番組 → https://www.youtube.com/watch?v=C3JuB6eS5IY

今回は、「試合分析」という観点において、スペインの育成年代で8シーズン第一監督を務めている経験を踏まえて話をしたいと思います。

【あわせて読みたい】育成年代の試合分析におけるデータ記録の活用方法



試合分析において重要なこと

ただ「試合分析」は何を目的とするかを明確にしなければいけません。上写真のような分析は、視聴者に対して、バルセロナの得点シーンでカギとなった動きを伝えることが目的となっています。

ですが、多くの監督にとって関心があるのは、これから対戦する相手の分析です。「試合分析」において、対戦相手を分析するための方法を、私がスペインで学んだことを中心にお伝えします。近年、プライバシーの保護により、試合の録画が難しい状況となりました。映像があれば、選手たちにより明確なアイディアを与えることができるでしょう。

しかし重要なのは何を分析し、それをどう選手たちに伝えるかです。→試合分析基礎


対戦相手の分析

相手を対戦する前に分析する。スペインではプロクラブだけでなく、育成年代でも当たり前の光景となっています。

プロクラブでは最低5試合前から相手を分析すると言われていますが、育成年代の監督は自分のチームの試合もあるため、グランドに足を運び、1試合対戦相手の試合を観ることができれば良い方だと思います。その1試合で何を分析するかが重要です。

【合わせてオススメ】スペインサッカー育成年代リーグ戦の仕組み



試合前のチェック

試合前にチェックしておける部分は次のようになります。

スタジアム名、リーグ戦の節、日付、時間、カテゴリー、ホームチーム名、アウエイチーム名、主審の名前、監督たちの名前、選手たちの名前(セビージャ、ベティスのスカウトは、必ず監督たちに選手たちの名前と年を確認しています)、暫定順位。

スペインでは各地域の協会が、独自のHPを作成していますが、私の住むアンダルシアでは、順位表、個人の得点ランキングが掲載されるため、得点力のある選手を前もってチェックできます。


現場で使えるメモ。できるだけシンプルな方が見やすいですが、バリエーションはいくらでもあります。


分析方法

基本的には近々対戦する相手を分析します。試合中にはシステムやメンバーなど、2つのチームを記録することを勧めます。システムの比較ができれば、基本的な配置における、スペースの有無が分りやすくなります。→(矢印)を使って、選手個人が頻繁に繰り返す動きを記入することも有効的です。

そしてこの分析をスタートする前、自分の中で選手を観る時の基準を作っておくと良いでしょう。フィジカル、技術、戦術、メンタル面において、自分の中で基準を作っておけば、試合を観ながら、対象チームの選手たちに評価を付けることができます。(ここでは1-5段階)。上で紹介したメモでは相対的に[1-5]で選手評価を付けるようになっていますが、フィジカル、技術、戦術、メンタルの各項目を評価してもいいでしょう。

さらに、各システムの特徴を理解しておき、そこに分析するチームの選手の特徴を交えて観る必要があります。例えば、1-4-4-2を使っているとしても、中盤がダイヤモンドの時と、ラインの時では、自分のチームと向かい合わせた時のスペースに違いが出てきます。

〈図1〉相手は青、1-4-4(ライン)-2。自チームは1-3-5(中央はダブルボランチとトップ下)−2。

〈図2〉相手チームは1-4-4(ダイヤモンド)−2。自チームは上記と同じ。

分りやすくDFライン、サイド、中央でのマッチアップを黄色枠で枠組みすると、相手のシステムによるスペースの変化を見ることができます。

1-4-4-2(ライン)は守備において、プレスとカバーが行いやすい選手配置を実現できますが、両サイドハーフの選手たちが中央や逆サイドに寄ることができないと、中盤(ピッチ中央)に大きなスペースができ、数的不利な状況を作り出されることがあります。それは両サイドハーフの選手たちの特徴により生まれる問題です。〈図3〉

【図3】


まとめ

システムを記すだけでは、ただ数字を並べただけです。それを前提として、そこに選手たちの特徴を考慮して配置することで、システムが動き出すのです。その動き出したシステムが、どういった形で相手の脅威となり、そしてどこが弱点となるかを見抜くことが、ゲームの中で生きる試合分析に繋がります。第2回に続く。

➡️【連載:セビージャで戦うサッカー監督】スペイン現場試合分析2(全3回)




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若林大智

若林大智

スペイン・セビージャ在住。 2008年に渡西し、スペイン協会公認サッカー指導者ライセンスレベル3取得(日本のS級相当)セビージャの街クラブ、サン・アルベルト・マグノでInfantilU-14の監督を務める。

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