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2021年度バロンドール受賞!16歳で1部デビュー、アレクシア・プテラスの知られざる経歴


目次[非表示]

  1. 1.はじめに
  2. 2.プレーの特徴
  3. 3.プロになるまでの道のり
    1. 3.1.幼少期は補欠で砂のお城作りに夢中も... ‘ビッグフット’ がトラップ能力を開花
    2. 3.2.リバウドに憧れ、バルサに挑戦も1年でライバルクラブに移籍。16歳で1部デビュー
    3. 3.3.レバンテ時代のシーズン終盤に父親が他界... そして、バルセロナに復帰
  4. 4.バルセロナでの9年間
    1. 4.1.バラ色の9年間では無かった…ストイック過ぎるが故に退団も検討
    2. 4.2.スタンドからピッチへ:カンプ・ノウでゴールを決めた初の女子選手
  5. 5.最後に

はじめに

2018-2019シーズンの準優勝を経て、2020-2021シーズンスペインに初の女子チャンピオンズリーグ優勝という快挙をもたらしたFCバルセロナ女子チーム。

近年成長著しいスペイン女子サッカーの価値、実力を世界に知らしめた。

その現ヨーロッパチャンピオンを牽引するのは2021年度、スペイン人女子選手として初のバロンドーラーに輝いたバルセロナMFアレクシア・プテラス(27)。


今回の記事では様々な監督たちが彼女について語ったMARCAの記事や、EL PAÍSでのビセンテ・デル・ボスケ監督との対談インタビューをもとにアレクシアを紹介します。

プレーの特徴

FCバルセロナ男子チームと同じく1-4-3-3を基本システムとするチームでの彼女のポジションは「インテリオール」。

中盤と最前線のライン間でボールを受けると、中央からはDFの背後を狙う針の穴を通すようなスルーパス、サイドからは正確なクロスを操る。また攻撃的MFには欠かせない10点台の得点力も誇る。

(スペイン女子リーグ2021年12月22日第15節終了時点で12得点13アシスト、得点・アシストランキングともに首位を走る)

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現在、女子バルセロナを率いるジョナタン・ヒラルデス監督は、スペイン紙『マルカ』のアレクシア特集で次のように分析する。

「彼女はビルドアップに参加し、ライン間でもボールを受け、自らも決める能力を持つトドカンピスタ(万能型MF)。その時々でチームが必要とする全てのプレーコンセプトに臨機応変に対応でき、ビルドアップ、前進、フィニッシュの全ての局面において私たちを助けてくれるチームに不可欠な存在である」



また、スペイン紙『エル・パイス』主催のデル・ボスケ監督との対談インタビューでは、「プレーしたいエリアはサイドより中央ですよね」という問いに対し、こう答えている。

  Alexia Putellas: “No creo que el Balón de Oro me cambie la vida” El fútbol español puede vivir este lunes un día histórico si la jugadora internacional del Barça logra el Balón de Oro, premio para el que es la máxima favorita y que a nivel nacional solo consiguió Luis Suárez en 1960 El País



「はい、試合中は常に何がベストかを考え、判断を下すことが好きです。どうすれば味方により多くの時間を与えられるか、どうすればビルドアップを簡易化できるかなど。判断が最も下されるエリアは中央です。試合を分析することが好きで、たくさんの試合を観ます。自分の短所や長所は自覚しているつもりです。ここ数年はフィジカル能力も高めましたが、例えば60mの競走には勝てないことは分かっています。ただデュエルには勝ちたかった。次に起こり得るプレーを常に予測しています。味方が必要としていることや次のパスをどこに出すべきかなど、色々と考えています。」

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2020/21シーズンはスペイン1部リーグ、コパ・デ・ラ・レイナ(女王杯)、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)の3冠達成に大きく貢献し、バルセロナ(2012年から在籍)の必要不可欠な存在として躍動し、女子スペイン代表では27歳にして歴代最多出場(92)の記録を保持しているレジェンドである。


プロになるまでの道のり


幼少期は補欠で砂のお城作りに夢中も... ‘ビッグフット’ がトラップ能力を開花


アレクシア(1994年2月4日)は、カタルーニャ州バルセロナの郊外にある(バルセロナ市内から約40分)モリェット・ダル・バリェス(Mollet del Vallès)という人口約5万人の地域で生まれ育った。当初は地元で男女合同の町クラブでサッカーを始めるも、男子とうまく馴染めない日々を過ごした。すると両親は、女子チームを持つクラブを探し、自宅から11km離れたCEサバデルに6歳から通わせた。

しかし、女子チームに入団できたのは良いものの、6歳から14歳までの選手達は人数の問題で一緒にプレーせざるを得ない状況だった。そのため、最年少のアレクシアは当然フィジカルも年上の選手には敵わず... 当初は主に補欠だったため、ペットボトルの水でグラウンドの土を濡らしてお城作りに夢中だったようだ。

大きなハンデがあったが、身長や身体では劣っていても、足だけは年齢のわりには大きかったそうだ。同じく『マルカ』でのアレクシア特集で当時のコーチ、ジョゼップ・マリア・クロサスが語っている。


  Alexia Putellas vista desde el prisma de sus entrenadores: "Es la futbolista con m疽 clase que he visto" Alexia Putellas se ha convertido en la primera espala en ganar el Bal de Oro, un reconocimiento que le llega en plena madurez futbol﨎tica y que es fruto del trabajo de muchos MARCA


「アレクシアは、年齢のわりに足が大きく、ボールを逸らすことなくトラップができたことによってフィジカルのハンデを補えました。また最年少ということもあり、年上に可愛がられていましたが、彼女にしか出来ないボールさばきが出来たからということもあります」

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クロサスによれば、CEサバデルは小規模の町クラブのため多くの試合で大量失点で負けるのが普通だったそうだ。

「私は彼女達にプレーを楽しむことが大事だと言い聞かせてきました。でも、アレクシアみたいな闘争心の塊の様な選手はそれだけでは満足しきれないですよね」


リバウドに憧れ、バルサに挑戦も1年でライバルクラブに移籍。16歳で1部デビュー


小さい頃から父親や祖父と一緒にカンプ・ノウを訪れていたアレクシア選手は、背番号30を背負うメッシのデビュー戦も生で観戦している。それ以前から彼女と同じ左利きの元ブラジル代表FWリバウドに惹かれ、バルセロニスタとなった。そしてCEサバデルで頭角を表した結果、2005年(当時11歳)に念願のバルセロナに引き抜かれた。

しかし、わずか1年後、アレクシアが所属していたカテゴリーが消滅。そこで同じバルセロナを拠点とするエスパニョールに入団。その4年後に16歳という若さで1部デビューを果たした。当時エスパニョールの下部組織でコーチを務め、選手としても活躍したティティ・カムニェスは、『マルカ』でアレクシアのことを「ティキ・タカの先駆者」と呼んでいる。

「ティキ・タカというパスサッカーのコンセプトが主流となる前から彼女はこのプレースタイルを好み、時代を先取りしていた選手でした。私達が使っていた4−3−3で彼女は左サイドから正確なクロスを上げ、左足を最大限に活かしていました」

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レバンテ時代のシーズン終盤に父親が他界... そして、バルセロナに復帰


1部デビューからはスペイン代表U17で欧州選手権を連覇し(2010年、2011年)、W杯3位(2011年)に輝くなど、着実と結果を残し、強豪レバンテに移籍した。レバンテ女子チームは常に上位4位を争うビッグクラブである(2020-2021シーズンは1位バルセロナ、2位レアル・マドリードに次ぐ3位)。


わずか17歳でアレクシアは34試合に出場し、15点を挙げた。当時レバンテの指揮を取っていたアントニオ・コントレラス監督が、現在アレクシアが右足も使いこなせる様になったキーマンである。同じく『マルカ』のアレクシア特集で語られている。


「みんな彼女の左足ばかりフォーカスしていましたが、私は右足を鍛えるようにしつこく言い聞かせました。彼女にはいつも『右足は階段を登るためにしか使っていない』と冗談で言っていました。右足を鍛えた結果、両足がほぼ利き足と化している。バルセロナ加入直後に電話がかかってきましたが、驚いた様子で右利きかと聞かれたと言ってきました」


「戦術にうるさい」コントレラス監督。自身のことをこう語る同監督は、アレクシアについて「コーチ陣の指示やアドバイスを聞く姿勢」や「ピッチ上で反映させる機転の速さ」を絶賛している。


「とあるバルセロナ戦の直前、相手GKが高い位置にポジショニングする癖があるから、チャンスがあればゴールを狙えと言った。すると、試合開始直後にピッチ中央からキーパーを見もせず強烈な左足シュートを放ち、ゴールを奪った」

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選手として着実と成長していたアレクシアだが、2012年5月、最愛の父親が他界。家族と一緒に過ごすため、帰郷を余儀なくされた。バロンドール授賞式でも天国の父親にメッセージを捧げていたが、父親との絆は深かった。しかし、アレクシアは悲しみを超え、同年7月、今度はトップチームでプレーするためにバルセロナに復帰した。

バルセロナでの9年間


バラ色の9年間では無かった…ストイック過ぎるが故に退団も検討

アレクシアは2020/21の3冠(リーグ、女王杯、UCL)を達成するまでに、8年に渡りリーグ優勝を4回、コパ・デ・ラ・レイナ優勝を5回経験している。輝かしい功績だが、バルセロナは国内リーグが毎シーズン優勝が義務付けられている優勝候補の強豪。2016年から2019年にかけて3年連続もリーグ優勝を逃した時は、精神的にも参ったという。『エル・パイス』でのデル・ボスケ監督との対談インタビューで明かしている。


「最後まで優勝の可能性を残しながら敗れた3年間。その時は、私が身を引くべきなのではないかと、もうこのクラブに貢献できることは無いのかもしれないと悩みました。でも、クラブの強化部長と話した末、首を横に振られ、自分を信じろと、そしてまだ重要な選手になれると激励されました」


そのクラブで後にバロンドールを受賞するなど知る由もなく、チームのエースは陰で深刻に悩んでいた。それだけ自分に対する要求は大きかった。2020/21シーズン、本人とクラブにとっても初のCL優勝を果たした直後にシャビ・ロレンス監督に向けられた言葉がそれを物語っている。


「ヨーテボリ(スウェーデン)の表彰台で彼女に祝福の言葉を伝えたましたが、『うん、ルイス、でもコパも優勝しないと。今年こそ3冠を制覇しないといけない』と言われました。試合後は各選手にそれぞれのプレー映像を見せるんですが、彼女は常に悪いプレーを見て改善することしか考えていませんでした。良いプレーは当たり前と捉え、賞賛や褒め言葉を嫌います」


スタンドからピッチへ:カンプ・ノウでゴールを決めた初の女子選手

2021年1月5日、バルセロナは女子チームの創設50周年を記念してエスパニョールとのダービー戦をカンプ・ノウで開催した。試合はバルサが5−0で大勝を収め、先制弾を挙げたのはアレクシアだった。バルセロナ女子チームは1970年12月25日にカンプ・ノウでプレーした経験があるが、結果は0−0だったため、カンプ・ノウで初めてゴールを決めた女子選手に輝いたのはアレクシアなのだ。


HIGHLIGHTS | Barça Women 5-0 Espanyol | Victory at CAMP NOU! 


新型コロナウイルスの影響により、エスパニョールとのダービー戦は惜しくも無観客開催だったが、子供の頃スタンド越しで観ていた憧れの選手がプレーしていた同じピッチに立ち、しかも女子選手初ゴールを決めた。子供の頃からバルセロニスタであるアレクシアにとっては計り知れない喜びであったであろう。



最後に

バロンドール受賞からわずか72時間も経たず、アレクシアのインスタグラムのフォロワーは40万人から一気に100万人を超えた。彼女の功績がスペイン女子サッカーの注目をより一層集めるであろう。

今では各国の代表選手が集まるスペインリーグ、2021-2022シーズンは1部リーグに3人、2部3部リーグを合わせると10人以上の日本人選手が活躍している。

【合わせて読みたい】スペイン女子サッカーリーグの仕組み【サッカー留学研究所】

現地で観戦する女子リーグの試合のレベルは本当に高い。

この指導者、選手共に高いレベルを持つリーグの知名度はもっと高くあるべきだと考える。

女子の育成にも力を入れるスペインサッカー、整備された育成環境をベースとした更なる発展にこれからも目が離せない。

スペクラでは今後もスペイン女子サッカーの情報を発信していきます。

スーペルクラック編集部

スーペルクラック編集部

スペイン・バルセロナを拠点に活動。「本物のスペインサッカーをありのままに生き生きと伝えたい」そんな想いで日々コンテンツを更新する。ライター、サッカー監督、プレーヤー等、多岐にわたるスペイン在住邦人が執筆・編集。深くサッカーを学びたいあなたへ。

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