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【試合分析】女子サッカー史上最多観客動員記録を更新したエル・クラシコを解説


目次[非表示]

  1. 1.はじめに
  2. 2.1stレグ レアル・マドリード 1-3 FCバルセロナ
  3. 3.2ndレグ 戦前予想
  4. 4.2nd レグ FCバルセロナ 5-2 レアル・マドリード (トータル8-3)
  5. 5.女子サッカーの歴史を変えた一戦。史上最多となる観客数『91,553人』
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はじめに

2022年3月20日(日)に行われたラ・リーガ第29節、レアル・マドリード対FCバルセロナの一戦。

チャビ監督が指揮官として初めて挑んだ「エル・クラシコ」でホーム、首位のレアル・マドリードに対してFCバルセロナが0−4というスコアで勝利した。

その僅か二日後、アルフレド・ディ・ステファノスタジアムではもう一つの「エル・クラシコ」が行われた。

女子CLでは史上初となるFCバルセロナ・フェメニーノ対レアル・マドリード・フェメニーノのエル・クラシコがベスト8で実現した。

リーグでは24節終了時点で24勝無敗、すでに優勝を決めているFCバルセロナと来期のCL圏外、5位(1試合未消化)のレアル・マドリードの一戦。

リーグ戦では前期は1-3、後期は5-0でバルサが勝利を納めていた中、CLでの戦いは予想に反する立ち上がりとなった。

1stレグ レアル・マドリード 1-3 FCバルセロナ

レアル・マドリードは去年のチーム得点王、スウェーデン代表のアスラニやスペイン代表のコレデラ、マルタなどを欠き、FCバルセロナは得点ランキングトップのオランダ代表メルテンス、3位のナイジェリア代表オショアラ、スペイン代表アタッカーのマリオナなどが欠場。

FCバルセロナのフォーメーションは1-4-3-3、メンバーは試合前の予想通りとなった。

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1列目のプレッシングを回避しゾーン2に前進すると、右サイドはウイングのノルウェー代表ハンセンがサイドレーンにポジションを取り、左サイドは左ウイングでスタートしたスウェーデン代表ロルフォが内側にポジションを取り左サイドバックのスペイン代表レイラが高い位置で幅を作るアシンメトリー戦術。

右サイドバックのトレホンがスライドしDFラインは3枚に、パトリがDFラインの前でサポート役となりアレクシア、アイタナの両インサイドハーフは片方がビルドアップに加わりもう片方がライン間でプレー。

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対するレアル・マドリードは1-4-2-3-1、立ち上がりからFCバルセロナのビルドアップに対してサイドに人数を掛けた激しいプレッシングをかける。

スピード、運動量のあるスペイン代表の両サイドアタッカーアセネアとオルガが攻撃時には脅威を与え、守備時には高い運動量でサイドバックのサポートに徹しバルサのキーマンである右ウイング、ハンセンに対しDoble lateral(ドブレ・ラテラル、二重のサイドバック)とも呼ばれる形で2対1を作り、スピードのある攻撃的サイドバック、レイラに対してはスペースではなく足元で受けさせ縦への前進を閉じ中央に誘導した。

中央では強度の高いアグレッシブなプレッシング、ゾーン2に侵入されれば素早い後退でライン間のスペースを減少させバルサのインサイドハーフはなかなかライン間でボールを受けられず下がってボールを要求するシーンが増えた。

フリーマンとなるエルモソがボールを受けに落ちればCBがついて行き簡単にボールを受けさせず、低い位置にポジションを取るインサイドハーフもそのCBの空けたスペースを活用できなかった。

組織攻撃時はボールを保持し、レバンテから今季加入した昨年の得点ランキング2位、スペイン代表FWエスターのボールキープ力、DFライン背後を狙う突破のデスマルケを中心に攻撃を展開。

そして前半8分にゴールは生まれる。ボールを奪い組織攻撃に移ろうとするバルサに対しネガティブトランジションでプレスをかけ中盤でボールを奪ったマドリード。

エスターが1対4の数的不利な状況の中、ファーストディフェンダーを決定させない方向変換を加えた運ぶドリブルによる攻撃的ディレイで時間を作る。

その時間を活かしフィニッシュゾーンに到達した左ウイングのスペイン代表、オルガを認知したエスター選手はバルサ右サイドバックのトレジョンを固定、2対1の局面を選択。

トレジョンを引きつけたタイミングでオルガがゴール方向に幅を減少させるフィニッシュのサポートでボールを受けゴール方向にコントロール、左足を振り抜きゴールを決めた。

1対4→2対4の数的不利の状況でゴールを奪い切り、レアル・マドリードが先制に成功した。

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前半はマドリードがペナルティーエリア内に侵入する回数が多く試合を支配し、前半の枠内シュート数はマドリード3本、バルサはペナルティーエリア外からのミドルシュート1本といったスタッツとなった。

バルサの30歳の若きスペイン人指揮官、ヒラルデスは後半に向け選手交代、ポジションチェンジでチームをのプランを修正。

後半バルサはアセネアの突破に苦しんだレイラを下げてスペイン代表MFピナを左ウイングとして投入、ユーティリティプレーヤーのロルフォが左ウイングから左サイドバックに下がった。

ピナの投入によりアイタナ、エルモソ、アレクシアとの流動的なポジションチェンジによるフエゴ・インテリオール(中央でのプレー)がより機能し始め、ロルフォはライン間ではなく得意のサイドでのプレー、中央に人数をかけざるを得ないマドリードに対しハンセンもよりスペースを手にし両サイドからも脅威を与えた。

後半7分、ロルフォのクロスに反応したハンセンが倒され獲得したPKは微妙な判定で議論が生まれたが、アレクシアが冷静に沈め同点に。

80分には流れを変えたピナがこぼれ球を押し込み逆転、トランジションでも優位に立ったバルサ、ハンセンが突破したタイミングではゴール前でバルサの数的優位が生まれていた。

終了間際には、プレスがかからず迷いが生じ間延びしたマドリードの組織守備に生まれたスペースに落ちていくピナ、ヘルモソにボールが入る。DFラインのプレスはかかりきらずに前を向かれ、中途半端に空けたDFラインの選手間のスペースに二列目から走り込混みボールを受けたパトリがラストパス。

再び決めたのはアレクシア、先日の男子クラシコでのオーバメヤンのチップキックでの得点を思い出させるシュートで1-3とした。

怪我人で多くの選手を欠く中で、「その交代しかオプションがないのであろう」と言われたバルサを最高の形で機能させたヒラルデス監督率いるバルサがアウェイでの1stレグで大きなアドバンテージを手にした。

マドリードは前半の攻守にわたる高いインテンシティが攻撃陣の疲労にも影響し、結果逆転を許したが、2点目が決まっていてもおかしくなかった前半には多くの決定機を生み出しゲームを支配した時間帯を自信に2ndレグへ向かうこととなった。

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2ndレグ 戦前予想

試合後の会見で、「難しい試合となることはわかっていた、だがこれほどのハイプレッシャーは予想していなかった。ピッチで起きていたことに適応するのに多くの時間を要した、次はやるべき事をより早く理解しなければならない。」と語ったヒラルデス監督。

FCバルセロナのスターティングメンバーは1stレグでピナを4人目の中盤、「偽ウイング」と称し、ロルフォを左サイドバック、マドリードの前線のスピードに苦しんだペレイラに代え1ヶ月振りにピッチに戻って来たスペイン代表CBパレデスを含めた逆転劇を生んだ後半の布陣になると予想された。

対するレアル・マドリードのアルベルト・トリル監督は、前日会見で「1stレグでも見てとれたように、均衡した試合であったし我々が相手を上回った時間帯もあった。このチームにはどのような状況であっても闘い続けられるDNAがある。試合に向けたいくつかのプランがある、今季バルサと対戦した試合ではどの試合でも上手くいった時間帯があった。偉大なライバルを前にすることはわかっている、ほぼ完璧な試合をすることが求められるだろう。」とコメントした。

1stレグでバルサを苦しめた前半のプランから大きな変更はなく、CBのイバナ以外は同じスターティングメンバーが予想された。


2nd レグ FCバルセロナ 5-2 レアル・マドリード (トータル8-3)


両チームのスターティングメンバーは試合前の予想通りとなった。

試合はマドリードの1stレグと同じプランを匂わせるハイプレスでスタートしようとしていたが、FCバルセロナがそれを上回る立ち上がりを見せた。

「偽ウイング」ピナを加えた中盤のポジションチェンジはより流動的になり、ボール保持だけを目的にピナ、エルモソが降りてくるだけではなく空けたスペースにアレクシア、アイタナが飛び込むこの形は1stレグよりもより整備されスピードも増した。

特にライン間、4-4ラインの四角には常に選手が入りパスが入る。特にピナは選手間にポジショニングを取るだけでなく、右サイドバックと右センターバックの間を狙うデスマルケでサイドバックを脅かし、アイタナは左サイドバックと左センターバックの間を狙う運ぶドリブルでも脅威を与えた。

マドリードの4-4-2が中央を閉めれば高い位置を取った両サイドのロルフォ、ハンセンが1stレグではあまり見られなかった背後への飛び出しで一気にDFラインの背後を取る。

6分に見せたハンセンの裏への抜け出しにはマドリードのハイラインでのプレスに更に迷いを与える狙いもあった。

この攻撃の流れで得たコーナーキックの流れからマピのラッキーな形でのゴールが生まれバルサが先制。

バルサのマドリードのビルドアップに対するプレッシングも1stレグ前半から改善され、中盤のアイタナがエルモソと2トップの形でCBに対してプレスをかけるところまでは変わらず、捕まえ切れなかった2ボランチにはアレクシアがテレサを捕まえ、パトリはマイテとソルノサを中間ポジションで見た。

エスター、マイテへのロングボールに対してはマピ、ペレイラが高い集中力で対応した。

攻守における高いインテンシティで押し込むバルサだったが、1stレグで素晴らしい活躍をしたオルガがまた仕事をする。

自らの強度の高いプレスで得たスローインからの流れで打ったシュートがパレデスのペナルティーエリア内でのハンドを誘発。自らが決め15分に試合を振り出しに戻した。

同点で前半は終了したもののアイディアがより明確となったバルサ、選手間の距離も良くボールロスト後のトランジションも機能しマドリードに長時間のボール保持を許さなかった。

​​​​​​​前半のスタッツはバルサが支配率70%、シュート数12本でマドリードのシュート数2本(PKを含む)を大きく上回った。


ハーフタイムでの交代は両チームとも無し、後半はマドリードが良いスタートを切る。

後半2分、前半はロルフォに完封されたアセネアがドリブル突破で脅威を見せると、マドリードは勢いそのまま中盤でボールを奪い後半インテルオールにポジションを上げたスペイン代表ソルノサがロングシュート。ゴラッソが決まりマドリードが逆転した。

バルサがホームで2失点したのは2019年4月以来となった。トータルスコアは4-3となった。

しかしバルサも主導権を渡さない。後半5分にアイタナが運ぶドリブルで相手を引きつけハンセンにパス、クロスからゴールに迫りチーム、観客を鼓舞するとその次のプレーでサイドバックとセンターバックの間でエルモソからのボールを受けたアイタナが切り返し左足を一閃。わずか3分で同点とした。

後半9分にはピナの左足でのミドルシュートがサイドネットに刺さり逆転、そして後半16分、バロンドーラーがこの試合でも再びスコアラーとなる。

アイタナが落ちれば、よりゴールに近いライン間のポジションをとったのはアレクシア。美しいデスマルケでイバナを置き去りにし、ハンセンからのパスを受け右足でバルサの4点目を決めた。

後半24分にはロルフォが個人技で左サイドを破りクロス、ハンセンが押し込み「マニータ」(5得点)を達成。

流動的なポジションチェンジ、多彩な攻撃オプションでマドリードの守備を攻略したバルサがホーム「カンプ・ノウ」での一戦でも勝利し準決勝進出を決めた。


女子サッカーの歴史を変えた一戦。史上最多となる観客数『91,553人』

2022年3月30日に行われたこの試合、アレクシアが「世界の女子サッカーにこの試合以前、以後といった印を刻む試合となると思う。たくさんの女の子達がこの特別な舞台でプレーする彼女達のようになれるという夢を持つだろう。」と試合前のインタビューで語ったように、女子サッカーの歴史を塗り替える史上最多となる観客数91,553人(2012年ロンドンオリンピック決勝日本対アメリカは歴代3位となる80,203人)を記録した。


「彼女達に勝つためには時間、経験が必要だ。私たちは良い仕事をしている。チームには5、6人の22歳以下の若い選手達がいて、まだまだこのような試合の経験が必要だ。このコンペティションにおいてバルサは6度の準決勝経験がある完成されたチームだ。私たちはこのコンペティションに到達したばかり。その中でも良い時間帯を披露できたし試合をとても難しくさせることができた。これが道のりだ。少しずつ彼女達に近づいていく。」

とコメントしたトリル監督率いるマドリードも今後のスペイン女子サッカーのレベルをさらに引き上げることを証明した。

両チーム合わせ15人以上の選手がスペイン代表に名を連ねる、この「性別を超えた」クラシコを始め、日に日に注目度を増すスペイン女子サッカーからますます目が離せない。


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スーペルクラック編集部

スーペルクラック編集部

スペイン・バルセロナを拠点に活動。「本物のスペインサッカーをありのままに生き生きと伝えたい」そんな想いで日々コンテンツを更新する。ライター、サッカー監督、プレーヤー等、多岐にわたるスペイン在住邦人が執筆・編集。深くサッカーを学びたいあなたへ。

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