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『生きた学び』を得る 話を聞ける選手、自分の意見を言える選手


目次[非表示]

  1. 1.はじめに
  2. 2.(良い環境+良い指導者)✖選手の意欲=「選手のパフォーマンス」
  3. 3.話を聞ける選手、聞けない選手、自分の意見を言える選手、言えない選手
  4. 4.自分の持つ知識、考えと新たに得た情報を組み合わせ生み出す答え、『生きた学び』
  5. 5.おわりに
    1. 5.1.関連記事

はじめに

サッカー先進国を始め、今日では技術、戦術、フィジカル、メンタルなどの様々な要素が言語化され、定義づけられ、それらを選手に落とし込むためのメソッド、教授方が生み出され、共有、議論、発展が日々なされています。

人として、選手として成長していくために良い環境で、知識を持った指導者の下でトレーニングを行う重要性はもちろん、加えてより大きな鍵となるのが選手が持つ『意欲』。それらは選手の成長に欠かせないものであると考えられます。

その「意欲」とは?上手くなりたいとただがむしゃらにトレーニングを行うパワー?自分のやりたいことだけをやり、自分だけが楽しく過ごすことで気持ちを満たすこと?それには様々な形があるかと思います。

その意欲の度合いを測る要素の中の一つに育成年代の選手たちにとって成長の鍵となりうる「話を聞く」能力が挙げられるかと思います。

では話を聞く能力とは何なのか?指導者の指示を忠実に守る、実行する選手が良い選手なのか?

今回の記事は日本とスペイン、また異なる地域の子供を見て気付いた選手の成長の「鍵」となりうる要素についての記事となっています。

【合せて読みたい!指導者へのオススメ記事】​​​​​​​
【現地サッカー監督コラム】人を導くリーダーになる指導者の4つの心構え


(良い環境+良い指導者)✖選手の意欲=「選手のパフォーマンス」


この数式はバルセロナのとあるクラブのオフィスに張られていたチームのスローガンのようなものです。

この式を見た時にまず、選手のパフォーマンスを引き出す指導者としての役割を改めて考えさせられました。

これは、サッカーのトレーニングにも用いられている複合理論(技術、戦術、フィジカル、メンタルなどの要素は切り離されたものではなく相互に影響を及ぼすものであり、トレーニングはそれらの要素を取り入れたものであるべき)という理論と同じように、良い環境(トレーニング環境、トレーニング場所、選手を取り巻く人々、選手が受けるサポート etc...)や良い指導者(知識、経験、学ぶ意欲、選手との関わり、自分の指導の自己分析 etc...)、選手の意欲(周囲へのリスペクト、学ぶ意欲、高い目標設定、勝利へのこだわり etc...)は相互に作用し選手のパフォーマンスに繋がるということではないでしょうか。

大人が選手のトレーニング環境を整えること、そして指導者自身が1から2に、2から3成長することで選手の能力をさらに引き上げることが可能である。逆に指導者が立ち止まり、学ぶことをやめれば選手の成長の可能性を妨げることとなる。【(10+1)×10=100, →(10+5)×10=500... 】

プレーヤーと関わる大人、指導者が最大権力者となること、知識の最大所有者として自分の成長は棚に上げ、その知識の中に子供達を押さえつけることは選手のパフォーマンスを上げるためには弊害となります。

【合わせて読みたい】【現地サッカー監督コラム】子供が変わる!大人の振る舞い3原則


話を聞ける選手、聞けない選手、自分の意見を言える選手、言えない選手

環境に対し、乗数となる選手が持つ意欲が0であれば、選手のパフォーマンス向上はかんたんな掛け算の数値(×0=0)となってしまいます。

では選手の意欲、姿勢とはどのようなものが挙げられるでしょうか。

自身が指導を行う立場でも、選手の立場でも心当たりがあるかと思いますが、選手の中には話をよく聞いている選手や集中力が持たない選手、頭の固い選手や頭の柔らかい選手がいると思います。

中でもすぐに結果を出せる、話をよく聞き実行できる選手は賢い選手と見られる反面、危険な側面も持ち合わせています。

選手がサッカーを学ぶ、上達していく上で大前提として重要となる指導者の話を聞く能力。

では言われた事ができる選手がいい選手?言われたことができなければ悪い選手?指導者の言うことは絶対?

言われたことを忠実にこなす選手≒言われたことしかできない選手?

サッカーという22人が足でボールを使う不確実性の高いスポーツで言われたことしかできない選手、ある問いに対して一つの答えが決まっている選手、指示を待っている選手は年代、レベルが上がっても良い選手でいられるか?

認知、判断、実行のプロセスの判断の基準が監督の指示によるものだけでいいのか?

答えはノーです。ピッチ上でプレーするのは選手で、監督はコントローラーを持ちません。

選手は移り変わる複雑なシチュエーションの中で状況を認知し得たいくつかのオプションの中で正しい判断を下していかなければなりません。

戦術を身につけるべき年代では良い習慣を身につける必要がありコーチングの比重は高いかもしれませんが、いずれは選手が迎えるハイレベルで、プレッシャーの多い環境ではピッチの中で選手自身が見て判断し実行しなければなりません。

いつも話を良く聞いている選手に「この場面では何をするべき?」と問いかけると、いつも求める答えを出してくれる。しかしその答えに対して「なぜ?」と聞くと明確な答えが出せない選手がいます。

その選手はもしかすると「もっと上手くなりたい、話を聞きたい、サッカーってどういう仕組なのか知りたい」ではなく、「話を聞かないといけない」「正解を言わなければならない」と考えているかもしれません。理由はみんなそうしているから?監督が恐いから?言えなければ恥ずかしい思いをするから?答えを即答できる選手が褒められる環境だから?

ポジティブな要素として、日本人選手の中には話を聞ける選手が多く、スペイン人選手の中には自分の意見を言える選手が多いと感じます。逆に日本人選手の中には自分の意見を口にすることに慣れていない選手、スペイン人選手の中で話を聞けない選手も同様に多く感じます。

※あくまで個人の感想、意見です。

レベルの高い場所にいる選手はこの両方(話が聞けて考え、意見が言える)を兼ね備える選手で、その場所はこういったプロセスが引き出される環境なのではないでしょうか。

分かった気になっている。伝わった気になっている。こういったことに後から気づくともったいなく感じることが多いと思います。

一夜漬けのテスト勉強で頭に入れたことが後々頭に残っていないのは、それが「生きた学び」では無いから。

​​​​​​​選手がすぐさま答えを言えることではなく、選手の新たな知識の習得プロセスへのアプローチが重要なのかもしれません。

【合わせて読みたい】【バルセロナで戦うサッカー監督コラム】指導者の競争


自分の持つ知識、考えと新たに得た情報を組み合わせ生み出す答え、『生きた学び』

指導者がこう言ったからこう。

もちろん説明がスッと自分の中に落ちるもの、言葉の噛み砕かれた素晴らしいコーチングにより一度で納得のいくものであればそれは直接自分の新たな知識として取り込むべきものです。

しかし少しでも疑問が生まれた時、その瞬間がより選手が『生きた学び』を得るチャンスなのではないでしょうか。

現在の自分の所有する知識と新たな学びを擦り合せることによる「自分の知識の再構築」

意見を口に出すことで選手は自分の疑問を表現できる、指導者は選手がどのように考えているのかがわかる。納得の行く答えを導き出そうとする。そういった過程を経てたどり着いた答えは選手のなかに深く落とし込まれ、かつ応用のきくものとなると考えます。

「なぜ」その答えに行き着いたのか。始点と終点だけではなく「過程を考える」作業を経たものであればその「なぜ」がわかり状況が変わっても応用が聞く。

逆にその過程がなければ答えは常に同じ。同じシチュエーションは解決できるがシチュエーションの僅かな変化に対応できない可能性が高い。

これは選手、指導者双方の成長を考えても「対話する」ことの重要性を意味する。

選手はより知りたがり、指導者はより細かい説明ができなければならない。指導者は選手の投げかける意見、疑問を煙たがってはいけない。煙たがる必要は無い、選手とともに答えを作り上げればいい。指導者のみが喋る権利を持つ環境を作り出してはいけない。

・伝わらない原因は追求するべきである。

意欲を持たない選手が話を聞かない、熱意が伝わらないのは選手自身のモチベーションに働きかける必要があるかもしれない。

しかし選手が意欲を持って聞いているのに理解できないのは選手の責任ではない。伝え方を再度考えるべきかもしれない。選手は一人一人考えが異なり受け取り方も違う。指導現場で培ってきた自分のやり方は参考にはなるが、その「一選手」に対して唯一無二の正解とは限らない。


選手の中に残る「生きた学び」は環境、選手、指導者それぞれの努力の相互関係によって生み出されると考えます。


【合わせて読みたい】
スペインで活躍する女性サッカー指導者が考えるサッカー選手のモチベーション管理法①


おわりに

選手のモチベーション、意欲を引き出すのは難しい。それは新たな要素として学ぶ必要があるもの。

しかし選手の持つ、「サッカーが大好き」で「サッカーが上手くなりたい」、「どんどん上を目指したい」といった根本にある最も大事な「意欲の火」を消させない、もっと燃え上がらせることは全ての指導者が持つ役割なのではないでしょうか。

国籍、年代、地域など環境によって特色はあれど、選手一人一人が異なる考えを持ちアプローチの仕方も変わる。

文章に書き出すより実行するほうが何倍も難しいのは百も承知ですが、今でもサッカーが大好きでこのスポーツに関わっている自分が昔そうだったように自分が受け持つ選手達も頭→心→体を通った「生きた学び」を求めていると考えれば、それが行動へ移す最大の原動力となるのではないでしょうか。

\\ 現地人に話を聞いてみよう//


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西畑 勇佑

西畑 勇佑

福岡県出身、バルセロナ在住。スペインサッカー協会公認指導者ライセンスレベル2所持(日本のA級相当)。スペイン育成の名門U.E.SANT ILDEFONSのU-13の第一監督を務めながら、スペインリーグでプレーヤーとして活躍する。大学時代にはJICAの青年海外協力隊員としてスポーツ振興に関するボランティアを行うため、南米・ボリビア多民族国へ。チームリーダーとしてボリビアでのサッカー普及に貢献した経歴も持つ。

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