サッカー留学で大切な語学以外の鍵、『異文化適応力』
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はじめに
海外でのサッカー留学や指導者留学など、「今いる環境から外に出る」決断をする際【サッカーを深く学び、より成長すること】が目的となるケースが多いのではないでしょうか。
Cultural Intelligence /異文化適応力
グローバル化が促進される21世紀において、求められる大切なスキルの一つ。
異なる文化圏の人と協働するために、相手と自分の文化的背景の違いを認識する能力。
この【異文化適応力】は、ビジネスシーンでのみ求められる能力というわけではありません。
記事内では、オランダの社会科学者ホフステード博士が導き出した国によって異なる価値観について紹介します。
スポーツの魅力の一つとして、異なる文化を持つ人たちを繋げてくれるという点があります。
確かに、スポーツは言語を超えるものかもしれません。
世界共通のルールがあり、人と人を繋いでくれるもの。しかしサッカー留学の目的はこの「スポーツを通じて人と繋がる」だけではないはずです。
『日本のものとは異なる新たな知識を得たい』
『本物のスペインサッカーを深く学びたい、理解したい』
このような思いを抱き、海を渡るのではないでしょうか?
これまでに聞いたことがないサッカー戦術用語や環境の大きく異なる生活、新たな言語。このような課題に直面し、選手としてはもちろん人間としてもより成長できるチャンスがサッカー留学にはあります。
では、そのチャンスを掴むためにはどのような工夫ができるでしょう?
語学力の向上?ハイレベルなサッカースキルの修得?
サッカー留学が成功するための答えは確立されていません。
今回の記事では、留学における成功のヒントとしてこれまであまり大きくフォーカスされることのなかった【文化】の違いについてご紹介します。
こちらの記事を参考に今あなたがいるチームや周りの人と自分の価値観にはどのような違いがあるか、より良いコミュニケーションを生みだすためにはなにができるかを考えてみてください。
この「価値観の違い」は同国内でも起こりうるものでもあります。
文化とは?
そもそも文化とはなんでしょう?
本記事では、オランダの社会科学者ホフステード博士の言葉を拝借します。
Culture/文化とは、ある集団と他の集団を区別する各社会の中で暗黙のうちに組み込まれたルール/心のプログラムと定義します。
例えばA国では、最後まで人の話を聞くことが尊重され、B国では自分の意見を発信することが尊重される。そんな二カ国が対面すると片一方が議論をし続けもう一方が聞き役に回る、という状態に陥る傾向にあります。
A国の人は相手が話し終わるのを待とうとするので、話し続けるB国の人に対し攻撃的な人というイメージを抱くかもしれません。また、B国の人は発言をしないA国の人に意見を持たない人・やる気がない人と思われてしまうかもしれません。
この場合どちらが一方的に悪いということはありません。ただお互いの【良い】と思われてきたものが異なるだけです。しかし、その捉え方の違いを知らないことでお互いがお互いに対して不信感を抱き信頼関係を構築できないことがしばしばあります。私達人間の【良い】と言われるものは、0~12才の間に学校や家族を通して学習されると言われています。
今回フォーカスするのはこのピラミッドの中間部分です。
お互いの【良い】を理解した上で異国の人と協働できる能力をCultural Intteligence /異文化適応力といいます。
本記事では、ホフステード氏が導き出した各国の【良いとされる物】を知る方法を紹介します。
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ホフステードの国民文化論
前提として国民文化論は、【国】という社会における文化の価値観の違いであり、個別の人間の違いではないというものがあります。
そのため、必ずしもその国出身の人がこれに当てはまるわけではありません。
さらに、ホフステードは以下のような言葉を残しています。
“文化のもたらす影響を理解せずに国境を超えたビジネスに取り組むのは、水に一度も触れたことがないのに泳げると錯覚することと同じだ”
彼は主にビジネスについて述べていますが、これは新たな国で挑戦する全ての人に当てはまります。
サッカー留学とは、違う文化的背景を持つ国での挑戦です。
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ホフステードの6次元モデル
ホフステードの6次元モデルとは、国の相対的な文化の違いを次元ごとに0から100までの間で数値化したものです。
※繰り返しとなりますがこの理論は、【国】という社会における文化の価値観の違いであり、個別の人間の違いではないという前提があります。
権力格差
階層を重視するか、平等を重視するか
先生と生徒、上司と部下。この判断基準は、自分より権力がある人との関係を力の弱い人がどう捉えるかです。権力格差が小さい国で有効なのは、周りをやる気にさせる影響力です。反対に、権力格差が大きい国では、畏怖の念を使いこなすことが大切とされています。
日本の権力格差は54です。
思ったより低いという印象を抱く人が多いと思います。なぜなら、ヨーロッパやアメリカを中心とした国々とのビジネス間での風潮で『日本の意思決定スピードは遅い』といった話を聞くケースが多いからです。しかし、この54という数値は全世界との比較をしているため日本の権力格差は54と中間に位置しています。またこの数値はアジア圏内では権力格差が低いとされています。
集団主義/個人主義
自分が属する内集団に依存し、その利益を尊重するか、独立し個人の利益を尊重するか。
違いは、主語をどのレベルにおくかです。集団主義が強い国では【私達】に重点が置かれ、個人主義が強い国では【私】に重点が置かれます。
集団主義の強い国では人間関係が重要視され、個人主義が強い国では職務遂行が大切にされています。
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日本は46と中間に位置しています。多くの人は、日本はどちらかというと集団主義側であるとイメージした方が多いのではないでしょうか?
世界全体を見渡すと実は集団主義の国の方が多くあります。
ヨーロッパの国々やアメリカは個人主義色が強く、アジアでは集団主義色が強いです。
個人主義色が強い国の多くでは個人の意見を主張することが美徳とされています。
そのため周りと意見が食い違っていたとしても、自分の意見を発信する人が『面白い』と思ってもらえるケースが多いと考えられます。
反対に、集団主義色が強い国では人と人との調和が美徳とされています。
そのため、集団主義色が強い国で『個』を強調しすぎた場合挑発的であると見られてしまう可能性もあります。
これらに良し悪しはありません。
今自分がいる国、これから挑戦する国がどちらに重点を置いているか調べてみると面白いかもしれません。
男性性/女性性
表現から誤った認識をされてしまいやすい項目の一つです。ホフステードがこの指標を打ち出した時、多くの問題定義がされたテーマです。
指標の内容は、「人生の中で何を大切にするか」
家族・友人・大切な人と一緒にいる時間を大切にするか、達成・成功・地位を得ることを大切にするか。
男性性が強い国では、明確な目標を持つことや地位、成功に価値が置かれています。結果を大事にするため、結果を出した人が評価される社会です。
女性性が強い国では、日々の生活の質や平等を大切にします。
なぜホフステードが「女性性」と「男性性」というネーミングにしてしまったかは、解明されていません。
日本は「95」で世界で最も男性性が強い国とされています。
職人気質な人が多く、目標達成意欲が強い人が多い傾向にあります。
この反対に位置するのが、北欧やヨーロッパ諸国。
例えば、スペインは「42」というどちらかというと女性性が強い国です。
人生で何に重きを置くか、人生をどう捉えるかといったテーマとも言えるでしょうか。
スポーツ選手はスポーツが人生そのものなのか、人生の一部がスポーツなのかといった捉え方の違いも生まれてくるかもしれません。
不確実性の回避
不確実なこと・曖昧なこと・知らないことを脅威と捉えるか、その中でもまず何かやってみようと考えるか。
不確実性の回避率の高い国では、グレーゾーンを苦手とし、ルールやシステムを作ることで安心感を得る社会を指します。代表とされる国は、日本・フランス・ドイツです。さらにこの不確実性の高い国は、2分できます。一つは不確実なことはできるだけ避けたいという考えから、規則や法律、ルールなどをたくさん作るフランスタイプです。しかしこれらの法律やルールは、破る事が前提とされています。反対にドイツでは、不確実性を着実に管理するためにルールを作り、全員がしっかりそれを守る風土があります。
不確実性の低い国では、ルールやシステムはあまり重要視されず不慣れな状態を楽しむ傾向にあります。アングロサクソン諸国や、北欧の国に多い傾向にあります。
日本は「92」と圧倒的に不確実性の高い国とされています。
長期思考/短期思考
将来・未来に対してどう考えるか
長期思考の社会では将来的な成功を見据えて教育に励み他の国から吸収する姿勢が多く見られます。勤勉で、辛抱強いのが長期的思考が強い国の特徴です。反対に短期的思考の国では、結果を求めるのが早い傾向にあります。
日本は最も長期オリエンテーション指向の社会の1つとして評価されています。
人生の楽しみ方
人生を楽しみたい・楽をしたいという気持ちを抑制し、悲観的に捉えるか、気持ちを発散させ充足させポジティブに捉えるか
抑制的な国では、人生を運命的と感じ悲観的主義の傾向が強いです。充足的な国では、人生は自分でコントロールできるという考えのもと楽観主義者が多い傾向にあります。
最後に
以上がホフステードが導き出した国民文化の違いです。
スポーツを通しての観点、社会、経済を通しての観点などで感じ方に大きな違いがあったのではないでしょうか。
異国の地で挑戦するということは、今までの【あたりまえ】が通用しない世界に飛び込むということです。
海外に行けば、異なる文化に「触れる」ことは簡単です。それは旅行であっても感じることが可能です。
しかし異文化適応力はただ異国の文化に「触れる」だけでは、向上しません。
サッカー留学といった現地の環境、人々と向きあう経験は、多様化された世界を生き抜く上であなたを強くしてくれます。それは、サッカー選手としてはもちろん、人間としても。
今回の記事を通して海外にサッカー留学に来ることで得られることはサッカーだけなのか、他にどのような成長ができるのかを是非イメージしてみて下さい。
さらに、よりサッカー留学中の学びを最大化するためのツールとしてこの理論を利用してください。
他の国でどのような【国民文化】があるのかはこちらのサイトで確かめることができます。
https://www.hofstede-insights.com/country-comparison/ ※英語表記のみ
【無料カウンセリングはこちらから】
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