絶妙な「抜け出し」のタイミングが引き起こす!Rソシエダ自慢の攻撃的サッカー
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はじめに
美食の聖地としても有名な、バスク州のサンセバスチャン市。そこを拠点としてプレーするのは、スペイン1部リーグの常連クラブでもある古豪レアル・ソシエダです。
今シーズンの「ラ・レアル」は、アトレティコ・マドリードに対して2-0で勝利し、CL(チャンピオンズリーグ)出場圏内にまで上り詰めたりと話題を呼んでいます。更にレアル・マドリードからレンタル移籍中のマルティン・ウーデゴールの目覚ましい活躍もあり一層注目度を増しています。
しかし、このチームの魅力はウーデゴールのみではありません。相手の出方を伺いながら隙を突くカウンターアタックのみに頼ることなく、称賛の嵐を巻き起こす魅力的な電撃サッカーを繰り広げる事に成功しているのです。
基本フォーメーション 1-4-2-3-1
今季のレアル・ソシエダの基本フォーメーションは1-4-2-3-1の布陣。
第3節に靭帯断裂の大怪我を負い、手術を受け負傷離脱中のキャプテンのイジャラメンディがシーズン序盤はダブルボランチの一角としてスタメンに名を連ねていましたが、その大黒柱を欠場で欠く中でもこの基本フォーメーションを保っています。
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1.高い位置をとるSBからワイドに展開する1-3-4-3
縦に速い高速サッカーと言えば、カウンターの色が強いチームを思い浮かべます。しかし、Rソシエダは守備から攻撃に入るだけではなく、組織攻撃では1-3-4-3にシステムチェンジを行い後方からビルドアップをしっかりと行います。
両サイドバックは攻撃的ウイングバックとして高い位置を取り、後方3枚でのビルドアップを担当するのは元々中盤の選手であり、2CBの間に落ちてプレーするスベルディア。ディフェンスラインの前方にはミケル・メリーノとウーデゴールのインサイドハーフ2枚が異なる高さにポジショニングをとる。ウイングから内側、FW両脇へとポジショニングをとる場所には「抜け出し」担当者、オヤルサバル+ポルトゥの2シャドー、そしてワントップはゴールゲッターのウィリアン・ジョゼ。
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ビルドアップ時のRソシエダは、直接インサイドコースを狙わず、中央へのパスやドリブルでの侵入を匂わせることによって相手ブロックを絞らせ、フリーとなったサイドにまず展開を試みます。最悪ボールを奪われたとしても、サイドなら中盤選手のカバーリングや逆サイドの選手のスライドが間に合います。中央レーンでボールを失うとSBが高い位置にいるのでトランジションが間に合わず、最終ラインが直接カウンターを受ける形となります。
ここで鍵を握るのが、サイドライン付近ではなく中央レーンにポジションを取り、SBのサポートに入るオヤルサバルとポルトゥの抜け出しのタイミングです。
2.抜け出しの天才2人が仕掛ける「罠」
ワントップのウィリアン・ジョゼは、左サイド内側に切り込み利き足の右足でシュートを狙えるため、時には左サイドに流れる事もありますが基本的にはポストプレー役として相手センターバックを「固定」しゾーンから動かせません。
一方、オヤルサバルとポルトゥは、ほぼウィングと化している両サイドバックと被らない様に、サイドラインで待ち構える事は無くDFラインのギャップの辺りにポジショニングを取ります。
後方からのビルドアップによりラインを超えて前進してくる両サイドの2選手をフリーにさせまいと相手DFがプレスをかけた瞬間、Rソシエダの罠(トラップ)が発動します。
オヤルサバルは足元へのパスを受けれる、また背後にも抜け出せる絶妙なポジショニングでサイドバックに迷いを生じさせます。サイドで相手を引き付けた場合、オヤルサバルが左サイドに空いたスペース、角を突き、逆サイドではポルトゥが同じような役割を担います。189㎝の高身長を誇るウィリアン・ジョゼにがら空きのサイドからクロスを上げることができれば、自然とゴールチャンスは生まれます。
3.相手がFW3人の誘いに乗らない場合:ウーデゴールの出番
当然、相手も何度も同じ手は食らいません。背後を警戒しラインを下げてうかつにスペースを与えず、Rソシエダの前線の選手の持ち味であるスピードを消しにかかります。
サイドからの攻撃が停滞すると、次なる手段は中盤に生まれるスペース、インサイドコース。ここで大きな存在感を示すのが、話題のウーデゴールです。卓越したテクニックと類まれなプレービジョンから誰もが思い浮かばないパスコースを描きます。
今シーズン、0‐3で勝ったアラベス戦先制ゴールのアシストシーン(0:08)と、
https://www.youtube.com/watch?v=7-HLvh70Hi4
0‐1で制したセルタ戦の決勝点アシスト(0:45)。
https://www.youtube.com/watch?v=JfZ8R31-gH4
こちらを見れば、彼の卓越したプレービジョン、パスセンスは一目瞭然です。
4.守備時は1-4‐1‐4‐1、GKまで追いかけず、チーム全体でバスクラシオン(守備のスライド)
前線にスピードのある選手を揃えるチームに対して、キーパーにまでハイプレスを掛けロングボールを蹴らせような守備のイメージを持たれることもあるかもしれません。
しかし、Rソシエダが行う組織守備は1-4-1-4-1へシステム変化しミドルブロックを敷いた状態からスタート。
プレッシングのギアを入れるのは相手のビルドアップを誘導しサイドの選手にボールが渡った時。ワントップのウィリアン・ジョゼがプレスをかけると同時に、ボールを取り返し再びスペースを強襲することを目的にチーム全体が流れる様にバスクラシオン(守備のスライド)を仕掛けます。
正確なバスクラシオンを仕掛け片方のサイドに選手を密集させ、ボールに対するアグレッシブな守備で逆サイドへの展開を許しません。ボールを奪う事に成功すれば、相手DFライン背後にスペースを得た状態で再び縦に早い攻撃を展開できます。
5.ポジティブトランジションでも同じ意図
スピードのある前線の選手を活かすためボールを奪った後、守→攻の切り替えでも縦に速い攻撃を第一オプションとしてプレーする。
このような特徴を持ったチームの試合は時にボールが頭上を行ったり来たりする展開にもなり得るが、ライン間のバランスが崩れ間延びが起きれば中盤に高い技術を持つ選手を抱えるRソシエダにとっては好都合。
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スピードを活かせる背後のスペース、中盤の選手の質が活きる中央のスペースはどちらもRソシエダにとっては相手に脅威を与えるものとなります。
ここまでに出てきた名前以外にも、重要なゴールをマークしたスウェーデンの新星イサクや中盤で違いを生み出すベルギー代表ヤヌザイなど、チーム戦力の厚みも今シーズンRソシエダが展開するこのダイナミックなサッカーを手助けしているのではないでしょうか。
まとめ
カウンター以外にもダイナミックな高速サッカーを繰り広げる手段。
そのプレーの実演を可能とするための、相手の背後を突く「抜け出し」の重要性。
この記事を読んで頂けたら、次のRソシエダの試合観戦をより楽しんで頂けるでしょう!
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