2018ロシアFIFAワールドカップ・セットプレー分析総集③(全5回)
目次[非表示]
- 0.1.VAR(ビデオ判定導入の影響)
- 0.2.シーン① グループリーグ・チュニジア戦、前半34分
- 0.3.シーン② グループリーグのパナマ戦、22分
- 0.4.シーン③ 同試合、前半45分
- 0.5.シーン④ ベスト16のコロンビア戦、後半57分
- 0.6.まとめ
- 0.7.☆関連記事☆
現代サッカーで日に日に重要性を増しているセットプレー。2018FIFAワールドカップロシア大会でも半数以上のゴールがセットプレーから生まれたようです。FIFAの公式記録によると、30%以上のゴールがセットプレーから生まれたようです。
FIFAの公式ページ記録→https://es.fifa.com/worldcup/statistics/
そこで今回は2018年FIFAワールドカップロシア大会のセットプレーの分析を行います。セットプレーには、キックオフ、ゴールキック、CK、スローイン、直接FK、間接FK、PKが、攻守において存在し、さらにドロップボールも含まれます。
合わせておさらい♪サッカーの13のプレーシチュエーション【セットプレー編】
データが示すように現代サッカーにおいてセットプレーから多くの得点が生まれていますし、それはロシアワールドカップでも同様でした。
本編は、セットプレーにおいて多くのバリエーションを持っているイングランドに注目し、PK(ペナルティーキック)を分析します。
【コーナーキックのセットプレー(攻撃編)はこちら】
VAR(ビデオ判定導入の影響)
今大会はVARが導入されたことでPKが増えていますが、それをきっちり決めることができるストライカーがいるのはチームにとって大きな利点となりますが、GKだけでなく、チームとして守備の準備をすることも欠かせないものとなっています。
PKの守備において、セカンドプレーを相手に拾わせないために、各チームが様々な戦略を練っています。イングランドは今大会、チュニジア戦で相手にPKを与え失点していますが、その時のイングランドの守り方を見てみましょう。
シーン① グループリーグ・チュニジア戦、前半34分
グループリーグのチュニジア戦、前半34分、チュニジアのサッシがPKを決めます。
【画像1】イングランドが赤、チュニジアが白
イングランドは9人の選手たちをペナルティーエリアの外に配置します。1番は最も遠い場所にいますが、彼はキッカーの助走に合わせてペナルティーアークを通過し、ペナルティーエリア内に入ります。2番もペナルティーアークを通ってペナルティーエリアに入ります。4、5、8番はキックに合わせてペナルティーエリアに入ります。
【画像2】
キッカーのタイミングに合わせ、キック直前は選手たちが我慢してペナルティーエリアに入らないようにしています。そしてキック直後にペナルティーエリアの各ゾーンにリバウンドを拾いに行きます。
【画像3】
赤枠の3選手(1、4、5番)はボールが蹴られたサイドに入ります。黄色枠の選手(2番)はキッカーの後方に入り、緑枠の選手(8番)はボールが蹴られた方と反対側に入っていきます。
【画像4】
チュニジアはPKを成功させましたが、イングランドはPKにおける守り方を見せました。
GKが止めるか、ゴールポストに当たらないとリバウンドはないと思いますが、近年、PKキッカーのデータを集めるのは当たり前となっており、ある程度の傾向が出ています。だからこそセカンドプレーに備えることは、PKを阻止するという上で重要なことなのです。決めて当たり前と言われるPKも、データ収集によりそれが難しい状況になっていますが、GKが止めたり、ポストに当たった場合、セカンドプレーに備えていないと、キッカーや相手チームに詰められるのは当たり前です。PK戦とは違い、その後のプレーに続きがあるからこそ、綿密な戦略が必要とされます。
PK戦のデータについて話をすると、イングランドのGKピックフォードは、ベスト16のコロンビア代表戦、PK戦の場面でペットボトルに書かれた情報を元に、PK戦を戦っていましたが、1本がクロスバーに当たり、もう1本を彼がストップしていました。
【画像5】
準決勝を終えた時点でイングランドは、PKを3つ獲得し、それを全てケーンが決めましたが、彼はコロンビア戦でのPK戦でもゴールを決めています。イングランドが獲得したPKの内、2つがパナマ戦で生まれていました。その2つのPKにおいてケーンは、ほぼ同じコースに蹴って2つ共成功させています。
シーン② グループリーグのパナマ戦、22分
【画像6】白がイングランド、赤がパナマ
【画像7】
キッカーはケーンで、ゴール左上にキックします。リンガード、スターリングはキック直後にケーンが蹴る左側にリバウンドを拾いに行きます。ヤングとヘンダーソンはケーンの助走に合わせて、ペナルティーアークを通って、ケーンの左側、キックをする方に入っていきます。アリは右サイドでペナルティーエリアに入るはずですが、相手にブロックされてしまいます。
シーン③ 同試合、前半45分
【画像8】
【画像9】
キッカーは再びケーンで、ここでもゴール左上に蹴ります。この前のPKと同じ選手たちがペナルティーエリアの外にいますが、リンガードがより中央に絞っています。スターリングとリンガード、そしてアリはキックに合わせてペナルティーエリアの中に入ります。ヤングとヘンダーソンは、ケーンの助走に合わせて、ペナルティーアークを通ってリバウンドを狙いに行きますが、4選手がケーンのキックする左側に入っています。
シーン④ ベスト16のコロンビア戦、後半57分
【画像10】赤がイングランド、黄色がコロンビア
ここでもイングランドは5人の選手たちをケーンのキックに合わせてペナルティーエリアに送り込んでいますが、パナマ戦と配置が違います。1番はより左サイドに配置、2、3、4番はペナルティーアークの外から入り、ゴール正面のリバウンドを狙いに行き、5番は正面より右サイドのリバウンドを狙いに行きます。
【画像11】
コロンビア戦、ケーンはゴール正面にチップキックのような形でゴールを決めています。イングランドの選手たちはある程度ケーンが蹴る場所を知っていたから、ペナルティーエリア外の配置も、パナマ戦から変更しているのではないでしょうか。パナマ戦、ケーンの蹴る左側に2人の選手たちが配置され、ペナルティーアーク外から入る選手たちも、少し左側に入っています。しかしこのコロンビア戦では、中央を3人で狙い、サイドに一人ずつを配置しています。
【画像12】
イングランドの試合でケーンが蹴ったPK5本のデータが、このPKを蹴る前に出ていました。失敗した1本を含め、4本をゴール左側に蹴っているのが分かりますし、この前のパナマ戦では2つとも左側に蹴っていることから、相手GKがそこに飛ぶことは予想できたでしょうし、実際、オスピナはケーンが2度決めていたシュートコースに飛ぼうとして、途中でボールに足を当てにいっています。相手の情報収集を逆手に取った戦略であり、さらにそのシュートに反応されたことも含めて計画が練られています。
まとめ
今回はPKの攻守において分析しました。ワールドカップという大舞台で緊張というものは避けて通れないものだと思います。そんな中、選手たちがいつものコースにシュートを蹴るのは予想できるものであり、だからこそデータは役に立ちます。しかし、コロンビア戦のケーンのように、そのデータを逆手に取るために選手たちの配置を変更し、よりゴールの可能性を高めるために準備をしたのがイングランドです。セットプレーに隠れた両チームの駆け引きを見るのもサッカーの楽しみです。
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