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【超一流サッカー分析官】フアンホ・ビラの言葉を読み解く「アナリストになるには、まず監督になれ」


目次[非表示]

  1. 1.はじめに
  2. 2.フアンホ・ビラ カンファレンスでの言葉
    1. 2.1.・フアンホ・ビラの意図
    2. 2.2.・監督を経験していないコーチングスタッフによくあるシーン
  3. 3.終わりに
    1. 3.1.関連記事

はじめに

本記事では、「一流のコーチングスタッフ」について考えましょう。サッカーの現場に携わるには、監督・第二監督・コーチ・アシスタントコーチ・フィジカルコーチ・トレーナーなど沢山の方法があります。最近は、サッカーアナリストと言う仕事も出来始めました。注目される分野ですが、「アナリストはただ戦術だけについて考えていれば良い」ということではありません。

ウナイ・エメリの元専属アナリストだったフアンホ・ビラのカンファレンスをYOUTUBEで発見しました。彼の言葉から「アナリスト(コーチングスタッフ)」に欠けてはならない要素を読み解きます。

【合せて読みたい】【連載:セビージャで戦うサッカー監督】スペイン現場試合分析1(全3回)


フアンホ・ビラ カンファレンスでの言葉

以下のリンクで、現在アーセナルで監督を務めるウナイ・エメリのバレンシア時代の専属分析官であるフアンホ・ビラのカンファレンスを見ることが出来ます。(現在はイングランド2部Nottingham Forestnの分析官として活躍)

El Análisis en Fútbol en un Equipo Profesional por Juanjo Vila 

動画を見ていると12分12秒〜12分40秒に面白い内容を話していました。スペイン語学習中の方は翻訳してみて下さい

Un analista de rendimiento no es lo mismo que un analista táctico. Luego lo verán algunos trabajos de este chico que realizaba lo que es trabajo estadístico perfecto. Perfecto. Para mí tenía un problema. No era entrenador. Entonces sabía cuantificar. Pero no sabía porque. Vale. De hecho, Yo creo que todos los analistas de rendimiento, si hay alguno que no es entrenador, le invito a que sea entrenador. Para ser analista, primero hay que ser entrenador. Hay que conocer a jugador. Dominar todas facetas de juego, principios ofensivos y defensivos. Tener conocimiento global y general de juego.

⇩翻訳⇩

トップパフォーマンスのアナリストと戦術アナリストは違う。後で、この子(フアンホ・ビラのアシスタント分析官)が行なっていた幾つかの仕事を紹介するが、彼の仕上げる統計分析のタスクは完璧だった。完璧だったよ。ただ僕にとっては、ひとつ問題があった。彼は、監督をしたことがなかったんだ。だから統計はできるが、「なぜそうなのか」が分からないんだ。そう。実際に僕は、もし監督をしていない方がいるなら、トップレベルのアナリスト全員に、監督になることをお勧めする。アナリストになるためには、第一に監督になる必要がある。選手を知る必要がある。攻撃・守備の原則、全てのプレーシーン、プレーの一般的・グローバルな知識も把握しなければならない。

・フアンホ・ビラの意図

フアンホ・ビラはカンファレンスの冒頭でこの言葉を残しています。なぜか?それは監督の経験が一流のアナリストとして必須事項だからです。

監督は、ビッククラブでも町クラブでもプロクラブでも、どんなチームでも、一国を治める大将です。つまり全ての責任を背負って戦う必要があります。

監督と、その他スタッフの「チームを観察する視点」は全く違います。それは「恐れ」から来るもので、みんなの人生を背負って戦う重圧です。

そんな重圧の中で、全てをマネージメントするのです。

例えば・・・

選手との信頼関係→選手を観察する・話す・聞く・時には家族を巻き込んだフォーカスも必要です。

クラブとの信頼関係→コーディネーターや幹部・上層部、時には代表とも話して関係性を築きます。

プレーモデルの構築→プレーモデルについてはこちらの記事(https://super-crack.com/learn_reading/modelodejuego)をご覧ください。


分析→自チーム・対戦相手・データ分析(アナリストはここ)

年間・月間・週間プランニング→第二監督・コーチとトレーニング構築

など、多岐に渡ります。

つまり、監督をするとサッカーの仕事全体を俯瞰的に捉えることができるのです。しかも、誰よりもチームの事を多角的に考えながら、質の高い仕事を求められます。

少しでも間違った判断をすれば、チームは直ぐに崩れ去ります。その結果として、自分の首だけでなく、自分を信頼して付いてきたコーチングスタッフの首も飛びます。


・監督を経験していないコーチングスタッフによくあるシーン

「」=会話  ()=心の声

【アナリストの場合】

アナリスト→「監督!今週の相手はラインが高いので、ディフェンスラインの背後のスペースにロングボールを蹴り込むのはどうでしょうか?さらに前の試合、相手のハーフスペースはガラ空きです。相手は4-4-2ですし、こちらは5-3-2にフォーメーションを変えましょう!偽5バックでプレッシングすれば、位置的優位を作れます。ハーフスペースも2人のインサイドハーフでうまく使えますし・・・」さらに15分続く。


監督→「分析ありがとう!いつも優秀だね!検討するよ!」(それ金曜に言われても、明日試合だし・・・。5バック一度も使ったことないな。しかも、今週センターバックが怪我で2人もいないしな。そういえば、うちの俊足エースも出場停止だったな。背後へのロングボールには足の速いFWが必要だから、そのプランも厳しい。システムは、5-3-2か・・・。チームも今は、戦術変更すべきではない時期だから変えづらいな。相手は今週のトレーニングでハーフスペースの守備を改善してくるのは予想できるし、そこの攻撃にかけることも難しい。全部正しい分析だけど、次の試合で使うのは難しいなぁ。)

【コーチの場合】

コーチ→「監督!あの選手、この前の試合で全然ダメだったんで、個別にミーティングをして気合入れときました!」


監督→「先回りしてくれたんだね!ありがとう」(あの選手は、今自分で乗り越える時期だったから、そっとしておきたかったんだが・・・。一言欲しかったな。)


例2

監督→「首位との試合前のミーティング、君ならなんて声をかける?」

コーチ→「ビビらないことですかね!あとは、プレッシングの確認ですかね」

監督→「そうか・・・ありがとう」(もっと深く考えた意見が欲しいな・・・。)

【フィジカルコーチの場合】

格下との試合のウォーミングアップで、

フィジコ→「おい、今日は絶対勝つぞ!必ず勝てる!お前たちの方がテクニックもある。フィジカル的にも強い。いつもの力を出せれば勝てる!」

監督→(格下のチームとの試合だからこそ相手をリスペクトした状態で、選手にゲームに入って欲しいのだが・・・。試合前のミーティングで作り上げた緊張感が薄れてしまうかも

しれないな・・・。)


終わりに

監督をするとチーム全体をマネージメントするので、コーチングスタッフの役割も俯瞰で見ることになります。

各部門の責任者の「監督経験」は、コーチングスタッフ一人一人の力を、足し算ではなく、掛け算にします。育成年代でも、タウンクラブでも、どこでも良い。まず「監督」としての重圧を背負ってみると良いのではないでしょうか?

アナリストもチーム全体の状態を考慮し、分析結果から「なぜ」を導き出す必要があります。フアンホ・ビラの言葉を借りれば、「アナリストになるためには、第一に監督になれ」。トップレベルになればなるほど、このフレーズの重みを実感することになるのかもしれません。

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栗本悠人

栗本悠人

スペイン協会公認サッカー指導者ライセンスレベル3所持(日本のS級相当)スペインの現地クラブで小学生年代から高校生年代まで全カテゴリーの監督を歴任。大学時代は人間性の教育の研究に従事し、小学校教員免許を所持する。教育学、経営学、心理学をヒントに、サッカーの競争原理と育成の統合を目指している。スペクラ創設者&スーパーアドバイザー。 

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