【ウィングなしの4-4-2】R・マドリード2016-17シーズンCL優勝に繋がったジダンの「最高傑作」
2018/19をあえなく無冠で終えたレアル・マドリードは、シーズン半ばの3月初頭に3つ全ての主要タイトル(リーガ、CL、国王杯)を失いました。
その絶望的な状況でフロレンティーノ・ペレス会長が助けを求めたのは、3度目のCL制覇を達成した直後、2018年の夏に辞任を決意したジネディーヌ・ジダン監督。
ジダン監督と言えば、就任当初は4‐3‐3を使用していましたが3シーズンに渡り定着したフォーメーションは4‐4‐2(試合によっては4‐1‐4‐1の場合も)。
中でもウィングを起用せず4‐4‐2で挑んだ、特に印象深い一戦があります。
それは、現地でもジダン監督の「オブラ・マエストラ」(最高傑作)とも称えられている、2017年に開催されたCL決勝ユベントス戦。
1‐1でハーフタイムを迎えたものの、後半に3点を追加し4‐1でイタリア王者を圧倒した試合のキーポイントをおさらいしましょう。
1.守備的なワンボランチなら、ビルドアップを任せる必要はない
レアル・マドリードB(別名カスティージャ)を率いていた頃からジダン監督は攻撃的な選手が多い最前線が際立つチームにバランスを与えるワンボランチの起用を重要視していました。
カスティージャ時代、その役割を担っていたのはマルコス・ジョレンテでしたが、トップチームではカゼミロを起用。
似て非なるプレースタイルですが、ジダンが重要視したのはチームに与える安定感。
しかし、お世辞にもカゼミロはビルドアップが得意な方ではありません。
そこでジダン監督はビルドアップをクロース、またはモドリッチに任せカゼミロを一列前に置きました。
これによってユベントスMF1名にカゼミロに対するマークを強いらせ、ビルドアップの際に卓越したボールタッチを誇るクロースとモドリッチにより広いスペースを与えました。
2.ほぼウィングと化した両サイドバック
オフェンスラインで本領を発揮する両サイドバック、カルバハルとマルセロ。
この2名を中盤より手前に敷くことによって、前例のケースと同様ユベントスのサイドバックは両選手を常に警戒せねばなりませんでした。
なおかつクロースとモドリッチの邪魔にならない壮大なスペースを献上。
では、クロースとモドリッチはどこの位置でゲームメーキングを担っていたのか。
3.インサイドハーフはSBの後ろでサイドを埋める
そう、すなわちモドリッチはカルバハルの後ろ(右サイド)、クロースはマルセロの後ろ(左サイド)。
ジダン監督が好む4‐4‐2に変わりはありませんが、キーパーの前に構えるDFラインはモドリッチ、ヴァラン、セルヒオ・ラモス、クロースによって構成されていたのです。
モドリッチとクロースはゆっくり反転してからビルドアップができるだけではなく、カルバハルやマルセロのボールロストの際には即座にカバーリングに入れたのです。
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4.トップ下(イスコ)を自由自在なフリーマンとして起用せよ
C・ロナウドとベンゼマがツートップを張っていた4‐4‐2において残るキーマンは、固定されたトップ下としてではなく自由自在な動きを求められたイスコ。
イスコが動き回っていたゾーンは主に2つ。
一つ目は、最前線と中盤のライン間。味方のビルドアップにユベントスの選手がプレスをかけようとすると、イスコにボールが渡った瞬間あっという間にゾーン3までの距離が縮まります。更に相手選手がプレスをかけた事によって、当然レアル・マドリードはそこで数的優位を作ることも出来ます。
二つ目は、モドリッチ/カルバハルかクロース/マルセロが待ち構える両サイド。同じく、ここでイスコがサポート役を担う事で3対2の数的優位が成立していました。
まとめ
序盤からベイルやルーカス・バスケスなど従来のウィングを起用せずとも、両サイドをオープンに羽ばたかせる事で4‐4‐2の味を強く引き出していました。
サイドバックやインサイドハーフのポジションを工夫し、試行錯誤した結果4‐4‐2の理念を忘れることはありませんでした。
レアル・マドリードの公式TVが流したハーフタイム映像でも見られたように、ジダン監督は選手達に「両サイドにより速く展開」「マルセロ、ダニ(カルバハル)はもっと前へ」「インサイドプレーより逆サイドに展開」等々、サイドから攻める重要性をより強調していました。
中でも、ゴールまでの道のりについてジダン監督は「サイドから崩しクロスさえ上げることが出来れば、ゴールは自ずと生まれる」と語っていました。
非常にシンプルで当たり前かのように思われるコメントかもしれませんが、上記の4点を読むと「アイディアこそ一つだが、それを成し遂げるには無数の過程がある」という言葉の意味を理解できます。
指揮官のアイディア、そしてどのような過程を経てそこに辿り着くのか、来シーズンも目が離せません。
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