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昇格2年目でリーガ5位&UEL出場権を獲得!大躍進ヘタフェCFの戦術解説


目次[非表示]

  1. 1.はじめに
  2. 2.4-4-2の長所を存分に生かす効率的な戦術を駆使
  3. 3.高速再生する守備ブロック
  4. 4.素早いバスクラシオンと無数のカバーリング
  5. 5.ボール保持にこだわらない効率的カウンタースタイル
  6. 6.常に4バックのバランスを崩さないリスク管理力
  7. 7.まとめ
  8. 8.関連記事



はじめに

2018/19シーズンを5位で終えUEFAヨーロッパリーグ(UEL)出場権を獲得したヘタフェCF。日本代表MF柴崎岳が所属することで日本では知られています。

クラブは2014/15シーズンに屈辱の2部降格を経験し、再建の必要性を求められました。1年目で昇格を果たすと、昨シーズンは1部昇格1年目ながら8位と躍進します。

柴崎選手の今季出場試合数は9試合(リーガ7試合、国王杯2試合)。チームで最もクリエイティブな選手を起用しないヘタフェは、効率的な戦術にこだわり結果を残しました。

本記事では、ヘタフェ大躍進の理由を戦術的な観点よりわかりやすく説明します。


4-4-2の長所を存分に生かす効率的な戦術を駆使

ボルダラス監督が主に起用したフォーメーションは4-4-2でした。

今シーズンのヘタフェは守備力に長け、失点数はバレンシアに並び、たったの35失点。なんと最少失点を記録したA・マドリードに次いで、失点が少ないチームとなりました。

対戦相手が口をそろえて「やりにくい」と言う理由は、時間・スペースを与えないコンパクトな守備にあります。FWからMF、MFからDFの間に生じるスペースを広げず、常に”守備ブロックのコンパクトさ”を意識しています。

【解説】サッカーフォーメーション4-4-2の長所・短所とシステム変化

高速再生する守備ブロック

4-4-2の長所である守備の安定感を利用し、守備ブロック形成に重きが置かれます。

平行的なポジション配置により、カバーリングとぺルムータ(カバーリングのカバーリング)の役割が明確化します。このストロングポイントを最大限に生かすため、ポリバレントにプレーできる選手を重宝しました。

複数のポジションをこなせる選手を縦関係に配置。選手のポジションチェンジを可能にし、攻守におけるバランスを保ちます。

縦関係とは、センターバック&ボランチ・サイドハーフ&サイドバック・ボランチ&フォワード。3つの関係を指します。例えば、サイドバックがオーバーラップした後、守備へ戻ってくるまでにタイムロスが生まれます。そのときに、サイドハーフがサイドバックのカバーリングに入ることで、高速の守備ブロック形成が可能です。

一方で、ボランチやサイドハーフには高度な守備戦術理解と激しい運動量が求められます。この点では、柴崎選手のプレースタイルとヘタフェのプレーモデルが一致しなかったと言えるでしょう。

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素早いバスクラシオンと無数のカバーリング

敵陣でのハイプレスからボール奪取し、ゴールチャンスに結びつけば理想です。しかし、ヘタフェの場合、個人のクオリティーで劣ることが多々あります。ボールを持って主導権を握ることが難しい試合がシーズンで多くなることは明白でした。

ボールを持たずに主導権を握る戦術。それがヘタフェの効率的な攻撃につながります。意図的にボール保持を放棄し、強力な守備から、ロングカウンターを仕掛ける形です。

実際ヘタフェは自陣ゴール前での守備を苦にしていません。守備ブロックを下げても、下げられることはなかったと言えるでしょう。

どのゾーンでもヘタフェの守備は、 ”高速バスクラシオン”と”コンパクトブロック” を用いて、相手にスペースを与えません。相手の攻撃が左サイドに流れれば、チーム全体が右サイドへ。右に流れれば、左へ。流動的にプレッシングをかけます。※バスクラシオン=守備のスライド。

その高速スライドの守備力を最大限に引き出す秘密は、無数のカバーリング。

縦関係にポリバレントな選手をそろえるヘタフェは、カバーリングとペルムータの連続で相手を前進させません。

例えば、サイドハーフが抜かれたら、守備能力の高いボランチ・サイドバック・フォワードの3人でカバーに入ります。

ボランチが追いつかない場合は、サイドバックがプレスに。しかし、「最後の砦」センターバックは中央レーンから出てきません。サイドバックのカバーリングに、センターバックと同じ守備力を持ったボランチが入ります。相手を遅らせている間に、サイドハーフがペルムータ。再度4枚の壁を形成します。


ボール保持にこだわらない効率的カウンタースタイル

【解説】サッカーフォーメーション4-4-2の短所・長所とシステム変化

プレーが過度水平的なり、ボールを前へ運べないことが、このフォーメーションの短所と言えます。

事実、ヘタフェもビルドアップにこだわらず、少ないタッチ数で直線的に敵陣を攻める効率的なサッカーを選択しています。

前線に2人残すことで、守備→攻撃の切り替えに迫力をもたせます。効果的なカウンターアタックするには、守備時のフォワードの位置が大切です。ヘタフェはボールのあるレーンにFW2人を残すことによって、奪った瞬間に素早いカウンターを仕掛けています。


常に4バックのバランスを崩さないリスク管理力

ヘタフェのツートップは、主将のホルヘ・モリ―ナと、3月スペイン代表に初招集されたハイメ・マタ。攻撃時は、ホルヘ・モリ―ナがポストプレー役となり、相手センターバックをゾーンから動かせません。そして空いたスペースを、ハイメ・マタが流動的な動きで相手を翻弄します。

ここに両サイドハーフの2選手に加え、ダブルボランチの一人が加勢します(基本的にアランバリ)。しかし、もう一人(マクシモビッチ)は相手のカウンターを警戒し、必ず4人のDFラインをサポートします。

またサイドバックのオーバーラップはめったに見られません。4バックの選手が常に背後でリスク管理している状態になります。攻撃時まで、バランスを崩さない。超高速カウンターが成功しなかったときに、すぐに守備の陣形を整えるためのトリックです。


まとめ

ボール保持率に勝り、ゴールチャンスが多いにも拘らず、決定打を決め切れず・・・。チャンスが数少ない相手に、隙を突かれて、負けてしまうことが多々あります。

それはビルドアップから作ったチャンスで生まれるスペースと、カウンターから作ったチャンスで生まれるスペースに関係します。

ビルドアップで作るチャンスは、基本的に相手の守備組織が整っている場合が多い。相手のブロックが組織化=スペースが減少。つまりシュート数は多いが、スペースのある決定的なチャンスが少ないと言えます。

一方、カウンターで作るチャンスは、相手のネガティブトランジションを攻撃することになります。相手のブロックが組織されていない=スペースが減少する前。つまり作れるチャンスは少ないものの、1回のチャンスが十分なスペースのある決定的な形になる可能性が高くなります。

ヘタフェはリスクを冒さない効率的なサッカーを徹底して成功しました。しかしエゴの強いプロサッカー選手が、守備に走り回ることは、想像以上のストレスになります。

その点で、成功の秘密は「良いときも悪いときも、全員ボルダラス監督を信じ、徹底して彼らのプレースタイル貫いたこと」と言えるでしょう。

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杉森正人

杉森正人

スペイン・マドリード在住スペイン生まれの日本人。スペイン4大サッカー紙のひとつMARCA(マルカ)で記者としてインターンを経験。在籍時には、スペイン語・日本語の2カ国語をネイティブレベルに扱える強みを活かしたサッカー記事を執筆した。現在は現地コーディネート会社に勤める。

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