知らなきゃ損!スペイン発・世界サッカーのトレンド【アシンメトリー戦術】後編
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はじめに-アシンメトリー戦術とは?-
ヘアスタイルでよく耳にする言葉「アシメ(アシンメトリー)」。
実は世界のサッカーでもアシンメトリーを取り入れた戦術がトレンドになっています。
アシンメトリー(【英】asymmetry)の意味は、日本語で「左右非対称」。シメトリー(【英】symmetry)「左右対称」の対義語です。
アシンメトリー戦術とは、組織攻撃・組織守備のシーンにおいて『左右非対称』にチームがアクションを起こす戦法を指します。
前編はこちら→知らなきゃ損!スペイン発・世界サッカーのトレンド【アシンメトリー戦術】前編
【前編の目次】
モダンサッカーへの歴史
-ゾーンとレーン-モダンサッカーにおけるアシンメトリー戦術の発生
FCバルセロナ組織攻撃におけるゾーン毎のポジション配置
【FCバルセロナ組織攻撃 ゾーン1】
【FCバルセロナ組織攻撃 ゾーン2】
【FCバルセロナ組織攻撃 ゾーン3】
FCバルセロナに対するアトレティコ・マドリード組織守備時のゾーン毎とプレッシング
【アトレティコ・マドリード組織守備 ゾーン1】
【アトレティコ・マドリード組織守備 ゾーン2】
【アトレティコ・マドリード組織守備 ゾーン3】
-アシンメトリー戦術-
レーンごとに「攻撃時のポジション配置」と、「守備時のプレッシング」を変更することで左右非対称を生み出す。それがアシンメトリー戦術です。
各ゾーンでのオーガナイズは当たり前。最先端のモダンサッカーでは、右と左のレーンごとにチームとしてアクションを変え、優位性を生み出すフェーズに入りました。
後編では組織攻撃と組織守備時に分けて詳しく解説していきます。
合わせて読みたい!サッカーの13の基本的プレーシチュエーション
(組織攻撃と組織守備についての説明付き)
組織攻撃における左右非対称(アシンメトリー)
組織攻撃のアシンメトリーは、チーム全体の規律がない場合にも発生します。「知らず知らずにうちに左右非対称になっている」現象です。しかし偶然性に頼った戦術で、再現性を高めることは不可能。選手・監督・コーチは全体でイメージを共有する必要があります。
では実際の以下の条件下で、組織攻撃におけるアシンメトリー戦術をプランニングしてみましょう。
4-2-3-1 vs 4-4-2 4-2-3-1のアシンメトリー組織攻撃
【自チームの条件】
・プレーモデル=ポジショナルプレー
・左ウイング10番=テクニックがあり、ライン間でボールを受けるとチャンスを作れる。(右利き)
・左サイドバック3番=攻守に運動量が多い。背は高くないがスピードがありオーバーラップが得意
・ボランチ6番=守備的MF。リスク管理能力に長ける。
・ボランチ8番=攻撃的MF。攻撃を組み立てるチームのレジスタ。(左利き)
・右ウイング11番=スピードスター。縦への突破が得意。1vs1は高確率で突破する。(右利き)
【敵チームの条件】
・右サイドバック3番=ゾーンディフェンス。ウイングに対するマークが甘い。
・左サイドバック2番=ボールウォッチャーになる。背後のスペースへの対処が甘い。
・ディフェンスラインのスライドが大きい=逆サイドに大きなスペース。
【右レーン】
【左レーン】
上記の図のように、左右非対称にポジションニング。これで自チーム選手の特徴と、敵チームの選手の特徴をふまえた攻撃が可能になります。位置的関係だけでなく、質的関係でも優位な状況を生み出せます。アシンメトリーの組織攻撃をうまく用いると、敵が自チームの戦術を見抜けない点もこの戦術の良い点です。
組織守備における左右非対称(アシンメトリー)
組織守備のアシンメトリー戦術は最近のトレンドになっています。
この戦術は、組織攻撃における左右非対称の配置へ対抗手段として発達しました。
では実際の以下の条件下で、守備のアシンメトリー戦術をプランニングしてみましょう。
4-2-3-1 vs 4-4-2 4-4-2のアシンメトリー組織守備
【自チームの条件】
・プレッシング=ゾーン2・ミドルブロック
・FW11番=インテンシティーが高く、守備能力も高い
・FW9番=エースストライカー。守備をサボる傾向がある
・MF8番・6番=戦術理解力に長ける。ライン間の選手管理がうまい。
・右サイドバック3番=ゾーンディフェンス。ウイングに対するマークが甘い。
・左サイドバック2番=ボールウォッチャーになる。背後のスペースへの対処が甘い。
・ディフェンスラインのスライドが大きい=逆サイドに大きなスペース。
【敵チームの条件】
・左センターバック4番=ビルドアップに不安がある。(右利き)
・右サイドバック2番=オーバーラップは少ない。ボールを持たれても怖くない。
・左サイドバック3番=攻守に運動量が多い。スピードがありオーバーラップが得意
・ボランチ6番=守備的MF。リスク管理能力に長ける。
・ボランチ8番=攻撃的MF。攻撃を組み立てるチームのレジスタ。(左利き)
・右ウイング11番=スピードスター。縦への突破が得意。1vs1は高確率で突破する。(右利き)
【右レーン】
【左レーン】
アシンメトリー戦術の効果と弱点
効果 |
-選手の特徴に応じたゲームプランが組める。 -敵チームの質的優位性を相殺できる。 -どちらかのレーンで数的優位を作りやすくなる。 -ゲームの流れの読みが外れたとき、修正が簡単 =シメトリー(左右対称)の「基本的なプレッシングに変える」など -プレッシングが相手チームに見破られにくい。 -組織攻撃のポジションチェンジの規則性が相手チームに見破られにくい。 |
弱点 |
-各レーンで選手の動き方が違う=高度な戦術理解が求められる。 -戦術的理解が低いチームで実行すると、インテンシティが落ちる。 -組織攻撃⇔組織守備のトランジションで選手が混乱する可能性がある。 -トレーニングでの落とし込みが困難=ゲームの中で擦り合わせる。 -どちらかのレーンで数的優位を作られやすくなる。 -トランジションまでのオーガナイズがないとチームが崩れる可能性がある。 |
理解度チェック
以下の条件下で、組織攻撃と組織守備のアシンメトリー戦術を考えなさい。
①4-3-3vs4-2-3-1【4-3-3フォーメーション攻撃のアシンメトリー】
②4-3-3vs4-2-3-1【4-3-3フォーメーション守備のアシンメトリー】
自チームの条件 |
プレーモデル=ポジショナルプレー FW9番=マークを外す動きが超一流。ペナルティエリア内で仕事をする生粋のストライカー。守備のインテンシティも高い。 右WG10番=チームナンバーワンプレーヤー。1人は剥がせるドリブルと卓越したパスセンスを持つ。(左利き)スーパースターだけに守備はサボりがち。 左WG11番=中に入ってのミドルシュートが得意。(右利き)ディフェンスラインまで戻る持久力も備える。 CB4番・5番=ビルドアップに自信があり。右CBのロングフィードは逆サイドまで届く。4番は空中戦に強く、5番はカバーリングと対人能力に長ける。 左SB3番=俊足。オーバーラップが得意。守備に不安。 右SB2番=ゲームを作れるサイドバック。足元でボールを受けるのが得意。1vs1の守備に絶対の自信を持つ。 ボランチ6番=バランサー。リスクマネジメント能力が抜群に高い。守備の戦術理解度が高い。 インサイドハーフ8番=ゲームクリエイター。ボールをDFラインから前線へ供給する。守備時のポジショニングが抜群にうまい。 インサイドハーフ7番=バランサー。中盤のダイナモ。攻守にピッチを走り回れる。 |
敵チームの条件 |
プレーモデル=ミックス(ポジショナルプレー+ダイレクトプレー) FW9番=スピードはないが、ボールを収めることができる。守備のインテンシティも高い。 MF10番=テクニック抜群。攻撃の中心人物。守備時は2トップになってプレッシング。 WG11番・7番=俊敏性が高く、1vs1の能力に長ける。サイドバックへはマンマークの守備。 ボランチ8番・6番=パス能力に長ける。空中戦には弱い。ゾーンを守る場面で、マークへついていく傾向がある。 SB2番・3番=対人能力が高い。マークの受け渡しでミスをすることが多い。ゾーンディフェンス。 CB4番・5番=ビルドアップ能力に難点。守備ではラインアップが遅く中盤にスペースを空けることがある。 |
動画もセットで♪
【サッカートレンド戦術】守備のアシンメトリー戦術 −FCバルセロナの組織守備−
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理解度チェックの回答例
①4-3-3vs4-2-3-1【4-3-3フォーメーション攻撃のアシンメトリー】
右レーン
左レーン
②4-3-3vs4-2-3-1【4-3-3フォーメーション守備のアシンメトリー】
右レーン
左レーン