【連載:セビージャで戦うサッカー監督連載】スペイン現場試合分析3(全3回)
目次[非表示]
- 1.はじめに
- 2.セットプレーの種類とメモの取り方
- 3.データ記録による自チームの分析
- 4.まとめ
- 4.1.★関連記事★
はじめに
前回4つの局面における分析について話をしましたが、「試合分析」において、私はセットプレーを切り離して分析をした方が良いと思います。
それはボールが止まった状況でスタートするので、フットボールの中でもセットプレーは異なる性質を持つからです。
【スペイン現場試合分析1回目はこちら】
セットプレーは試合のスコアに大きな影響を与えるプレーであり、様々な対策が施され、セットプレー専門のコーチまで出てきています。
スペインの育成年代でも、監督たちはセットプレーの練習に時間を割くことを惜しみません。
そのため、セットプレーの分析においても、異なる準備が必要となります。
セットプレーの種類とメモの取り方
セットプレーの種類には、キックオフゴールキック、CK、スローイン、直接FK、間接FK、PKに関して、攻守において分けられます。
さらにドロップボールによるセットプレーもあります。
これらのプレーにおいて、前回私が掲載したピッチの図を使うこともできます。
キックオフ、ゴールキック、スローイン、ドロップボールに関してはこれまでのピッチ図①に書き記しますが、直接FK、間接FK、CKの場面では、攻守において少し違った図(ピッチ図②)を用意します。
全てのプレーではなく、これは危険だ、ここは利用できる、というプレーに関して記録しています。そしてセットプレーがスタートする時、どういう方法でスタートしたのか、スタート時のキックの種類、スローインの投げ方などに注意が必要です。
そのため、全ての選手たちの番号を記入するのではなく、鍵となる選手たちの記入に務めます。CKの攻守においては、一旦全ての選手たちの配置を記入することもありますが、選手たちの動きに注目しています。
【前回紹介した試合分析をメモするピッチ図①】
【直接FK、間接FK、CKなどのセットプレーをメモするピッチ図②】
データ記録による自チームの分析
これまでは「試合分析」において、対戦相手を分析してきましたが、私は自チームの分析も、監督にとっては欠かせない仕事だと思います。
自分のチームの試合であれば、どういうプレーができた、できなかったということは図に書かなくても、頭に残るはずですし、試合中にメモを取っておけば後で整理できます。
ですが、数字を残すことで、しっかりとしたデータを記録することができるので、私はそのデータ記録を第二監督に頼んでいます。システムのチェックは、作戦ボードに自チームのシステムと相手のシステムを重ねます。
その次は、自分が今シーズン気になる項目をリストにして、その時間帯を記録してもらいました。
両チームのゴール、GKに止められたシュート(もしくはDF)、枠外シュートの時間と、選手を記入します。さらに自チームのCK、PK、そして相手チームの時間も記入します。しかし、これは私が興味のあるものなので、ボール奪取の回数や、FKの時間など、自分の目的に沿った項目で作成できます。
合わせ読みにオススメ!【分析観点とメモ】
このデータの他、出場時間の記入も頼んでいました。試合の後、修正すべき点をまずは考え、さらにこのデータを加えます。すると、より深い自チームの分析が可能となり、次の試合に向けての準備へとつながります。
自分のチームの試合において、これまで紹介したような分析の方法を、試合中に行うことはありません。もちろんトップレベルでは、監督が試合を率いている間にも、スタッフが分析を行い、ハーフタイムには必要とするデータ、映像がそろっているでしょう。
しかしスペインの育成年代の現場において、監督としての試合中の分析は頭の中で行うか、もしくは第2監督、その他のスタッフとの会話の中から結果を導き、次の瞬間にはそれを選手たちに伝えなければいけません。
なので、客観的に次の対戦相手の試合を分析するのと、自分のチームを率いながら相手を分析する方法に、違いあるのは当然だと思います。
まとめ
スペインが最も優れているかは分かりません。どこの国でも違いはあるものです。
ですが、監督として「試合分析」をする時のポイントは、何を分析し、どう選手たちに伝えるかということになると思います。
それは監督一人ひとりの考え方により、変わってくるものです。
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