スペイン代表プレーモデル分析 ボール保持フェーズ
目次[非表示]
- 1.はじめに
- 2.プレースタイル
- 2.1.ポジショナルプレー
- 2.2.最小限のポジションチェンジ
- 2.3.全体の戦術理解度の高さ
- 2.4.Pausa パウサ(一時停止)
- 2.5.ウィークポイント
- 3.最後に
- 4.関連記事
はじめに
11月11日、2022カタールW杯に参加する26選手を発表したスペイン代表。
その選手層の厚さ故に現地では発表直前までメンバー予想で盛り上がりを見せた。
今回の記事では、W杯のグループステージで日本と対戦する無敵艦隊スペイン代表のボール保持フェーズのプレースタイルについて説明しています。
この分析をする中で、感じたのは今年のスペイン代表は勝ちにこだわったサッカーをしているなという事です。
それではスペイン代表がどのようなプレーをしているのか見ていきましょう。
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スペイン代表 プレーモデル分析VSスイス代表 UEFA Nations League
プレースタイル
ポジショナルプレー
・スペインサッカーを象徴するようなポジショナルプレー。(それぞれのポジションに役割がある)
基本的に、今年のスペイン代表は1-4-3-3というシステムを使用しています。(相手チームのシステムによる変更はあると思います)
今回のスペイン代表はそれぞれのポジションの選手に明確な役割が与えられていると感じました。
・キーパー+センターバック
3対1の数的優位を作り、ボールを動かす事で、相手守備ブロックを動かし、前進を目指す。(パスや運ぶドリブルで)
・サイドバック
幅を取りつつ、相手ウイングを引きつける。(中央のスペースを広げる)
・ボランチ
相手フォワードの後ろで、センターバックとのパスライン常につくることでセンターバック間のボール回しをサポートすると共に、相手トップ下を引きつける。
・インサイドハーフ
ウイングと相手ボランチの間に立つ事で、ウイングのプレスの牽制とボランチを引きつける。
・サイドハーフ
幅と深さを確保。守備ラインの裏のスペースを利用。
・フォワード
深さを確保しつつ、必要な時にインサイドハーフが作ったスペースを利用する。
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最小限のポジションチェンジ
・ポジション変更を積極的に行わない。(常に選手間の距離感が保たれている)
選手が自分のポジションの範囲内でプレーする事が多いと感じました。
ポジションを変更しない事にはメリットとデメリットがあるように感じます。
メリット:
・どこにどの選手がいるのか見なくてもわかる。
・常にチームとしてバランスが取れているので、ボールを失った際にすぐにプレスを開始することが出来る。
デメリット:
・守備側もバランスが崩されない。
・守備チームの選手は自分のマークが誰か常にはっきりとしている。
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スイス戦では、モラタ選手がこのように中央のスペースに降りてくるような動きや
左サイドで、ガビ選手がポジションを落とし、空いたスペースにサラビア選手が入り、ジョルディ・アルバ選手が上がるというパターンをよく使用していると思いました。
全体の戦術理解度の高さ
・選手の戦術理解度が高い故に、流れの中でポジションの変更があった場合、他のポジションの役割を遂行できる。
スペインの強みの一つは、選手一人一人の戦術理解度の高さだと考えています。
なので、試合中に流れでポジションが変更しても、自分が今いるポジションで何をしなければいけないのかを多くの選手が理解しています。
さらに、今のスペイン代表は毎試合違う選手を起用しています。それでもチームとしてのレベルが落ちない、どの選手がプレーしても同じようなプレーが出来るのは、選手一人一人の戦術理解度が高く、すぐにチームとして行いたいことを理解する事ができるからだと思います。
W杯のような過密日程のトーナメント戦では、誰がプレーしてもチーム力が落ちないようなチームは強いと思います。
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Pausa パウサ(一時停止)
・ボールを奪った後と前進し相手チームを押し込むことに成功した場合、一度オーガナイズし直すことでポゼッション時間を増やす。
スペインサッカーでは、Pausa パウサ(一時停止)がとても重要視されます。今年のスペイン代表はボールを奪った後やプレスを回避し相手チームを押し込んだ際一度パウサします。
パウサをする理由は色々あると思いますが、僕が思う理由は、ポゼッション時間を長くしたい事とチームを出来るだけバランスが取れた状態にしておきたいからだと思います。
なぜかというとスペイン代表やポゼッションを重視するチームがトーナメント形式の試合で勝ち上がりづらい理由の一つであるカウンターを阻止するためだと考えています。
ポジション移動をあまりしない理由も同じだと思います。
その結果僕の意見では、今年のスペイン代表の強みはパスサッカーではないと考えています。パスを繋いでフィニッシュまで行く事よりも、パスをしながら相手のバランスを崩し、相手にボールを奪われた瞬間に自分たちはバランスが取れた状態でプレスをして、奪った後のショートカウンターをする事が今年のスペイン代表の怖さだと感じています。(ボールを失った後のプレスが早く、すぐにマイボールにしたがる。)
プレスをする為のフィジカル面の準備と配置の準備をするために、ボールポゼッション時間を長くし、常にバランスを保っているのだと考えています。
ウィークポイント
・ウィークポイントはロングボールを蹴らされる事。
ただ今回のスペイン代表からボールを奪う事はそんなに難しい事ではないように感じています。
W杯本戦までにまた違ったスペイン代表になっている可能性もありますが、現時点ではハイプレスに対しての解決方法が見つかっていないように感じています。
苦し紛れのロングボールもモラタ選手は背の高い選手ではありますが、圧倒的な強さを持っているようには感じません。
僕が思う問題点は、センターバックの裏のスペースを利用できていない事だと考えています。
インサイドハーフの選手の立ち位置によって中央のスペースを開けてフォアードの選手がファルソ・ヌエベ(偽9番)として中央で数的優位を作ろうとしていると思いますが、センターバックの後のスペースを攻撃する選手がいないので、センターバックの選手がフォアードの選手に対して出てきています。
このセンターバックをフィハール(固定)するような動きや立ち位置をウイングの選手(がとるようになると、中央の数的優位を守る事が難しくなるのではないかと思います。
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・ボールを失った後のプレスの時にバランスを崩す
ボールを失った後のプレスはスペイン代表の強みでもあり、弱みでもあると思います。なぜならその瞬間に彼らはリスクを背負ってバランスを崩します。
ボールの近くの多くの選手がプレスを開始するので、ボールを奪った後にそのプレスを回避する事さえできれば、優位な状態でカウンターをする事が出来ると思います。
最後に
今回はスペイン代表のボール保持フェーズの分析をしました。
今までのスペイン代表のような美しいサッカーでは無いかもしれません、しかしリスクを減らす事で今まで以上に結果にこだわっているサッカーをしているように感じます。
もちろん日本代表の活躍も期待しますが、勝敗にこだわるスペイン代表がどこまで勝ち上がるのか楽しみです。