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身体的負荷をコントロールし、選手の成長を最適化する「ミクロサイクル」


目次[非表示]

  1. 1.はじめに
  2. 2.ミクロサイクルの種類
  3. 3.1日のトレーニングの特徴
  4. 4.ミクロサイクルの見本
  5. 5.最後に
  6. 6.関連記事

はじめに

ミクロサイクルを作成する事は、身体的負荷をコントロールして選手の成長を最適化する為に、そして怪我を防ぐ為にとても重要な役割を果たします。


毎週末に試合があるバルセロナでは、1週間のトレーニングの中で選手に適切な身体的負荷をかける事で選手の能力を向上しつつ、週末の試合で選手達が最大限のパフォーマンスを発揮するためにコンディションを整える必要があります。


ミクロサイクルを使用するもう1つの利点は、1週間で選手に浸透したいコンセプトを整理する事が出来ます。

どの日のどのトレーニング(アップ、メイン、クールダウン)に、どのコンセプトを指導するのかを前もって整理する事で、選手の学習を最適化します。


今回の記事では、1週間で適切な身体的負荷を刺激する為に、フィジカルコーチとして僕がチームの為に設計したミクロサイクルを紹介します。

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ミクロサイクルの種類

先ほど説明したように、バルセロナでは毎週末土曜日もしくは日曜日に試合があります。

なので、4つのミクロサイクルのパターンがあります。

・ミクロサイクル 7日 (土曜・日曜)

・ミクロサイクル 6日 (土曜・土曜) 

・ミクロサイクル 6日 (日曜・日曜)


・ミクロサイクル 5日 (日曜・土曜)

このようにスペインでは、試合1日後を+1、2日後を+2、そこからは次の試合までの試合5日前は-5、4日前は-4、3日前は-3、2日前は-2、前日は-1と呼びます。

僕のチームは週に4日、月曜日、水曜日、木曜日と金曜日にトレーニングがあります。


1日のトレーニングの特徴

+1、+2のトレーニングセッション

目的:疲労回復と負荷を均等にする(試合に60分以上出場した選手と試合に60分以上出場出来なかった選手)

基本的には、+1もしくは+2のどちらかは1日をオフにして、他の1日をトレーニングします。

どちらをオフにするのかは、コーチ陣の好みやトレーニングの日程によって決まります。


+1をオフ、+2をトレーニング:

・試合の次の日は、戦術的負荷と身体的負荷が残っており、選手のモチベーションが上がらない。

・試合次第では、+2の日に疲労が残っておらず、-4のトレーニングを行う事が出来る。


+1をトレーニング、+2をオフ:

・試合の次の日に軽めの有酸素トレーニングを入れることで、回復が早まる。

・試合2日後に、一番疲労感を感じる選手もいる。

・試合に出場できなかった選手に大きな負荷をかける事が出来る。


60分以上出場したグループ (疲労回復)

・   選手1人あたりのスペース:100㎡以下

・   参加人数:6対6以上

特徴:

・   加速/減速を減らす

・   高スピードでダッシュを減らす

・   走行距離を減らす

・   高スピードでの走行距離を減らす


60分以上出場出来なかったグループ (足りてない負荷をかける)

・   選手1人あたりのスペース:200㎡以上

・   参加人数:6対6以上 

特徴:

・   加速/減速を増やす

・   高スピードでダッシュを増やす

・   走行距離を増やす

・   高スピードでの走行距離を増やす



-4のトレーニングセッション(インテンシーバ・介入スペース):

・   選手1人あたりのスペース:100㎡以下

・   参加人数:5対5以下

目的:

・   選手個人の能力向上にフォーカスしたトレーニング。

・   パワー系のトレーニング

・   高い強度、短時間のトレーニング (インテンシーバ)

特徴:

・   加速/減速を増やす

・   高スピードでダッシュを減らす

・   走行距離を減らす

・   高スピードでの走行距離を減らす


-3のトレーニングセッション(エクステンシーバ・共同スペース):

・   選手1人あたりのスペース:200㎡以上

・   参加人数:7対7以上

目的:

・   チームのパフォーマンス向上にフォーカスしたトレーニング。

・   持久力系のトレーニング

・   戦術要素

・   試合に近い状況のトレーニング 

・   大きいスペースで、長いアクションのトレーニング(エクステンシーバ)

特徴:

・   加速/減速を減らす

・   高スピードでダッシュを増やす

・   走行距離を増やす

・   高スピードでの走行距離を増やす


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-2のトレーニングセッション(インテンシーバ・相互支援スペース):

・   選手1人あたりのスペース:100㎡ から200㎡

・   参加人数:4対4から7対7

目的:

・   選手間のコーディネーション(グループ)にフォーカスしたトレーニング。

・   戦術要素

・   短いアクションのトレーニング

特徴:

・   加速/減速を減らす

・   高スピードでダッシュを増やす

・   走行距離を減らす

・   高スピードでの走行距離を減らす


-1のトレーニングセッション(アクティベーション):

・   選手1人あたりのスペース:100㎡以下

・   参加人数:6対6以上

目的:

・   選手間の関係性向上

・   セットプレー

・   試合プランのトレーニング

特徴:

・   加速/減速を減らす

・   高スピードでダッシュを減らす

・   走行距離を減らす

・   高スピードでの走行距離を減らす



重要なポイント:

・試合後2日間は、選手の疲労回復、試合時間の少ない選手に身体的負荷をかける。

・試合3日前に、試合に近い状況で身体的負荷をかける

・試合前2日間は、負荷を下げていき、試合の準備をしつつ試合3日前のトレーニングの疲労を回復する。そして試合の日に一番良いフィジカルコンディションで試合へ臨む。(超回復理論)

・また違う記事で詳しく紹介しますが、選手1人あたりのスペースと参加人数を調節する事で、自然と特徴通りのトレーニングになります。



ミクロサイクルの見本

ミクロサイクル 7日 (土曜・日曜)

ミクロサイクル 6日 (土曜・土曜) 


ミクロサイクル 6日 (日曜・日曜)


ミクロサイクル 5日 (日曜・土曜)


最後に

今回僕が紹介したミクロサイクルは、バルセロナの大学や大学院で学んだ事や、構造化トレーニングや戦術的ピリオダイゼーションについての論文や本を読んだ上で作成しました。

人間の身体、頭やメンタルの仕組みを知り、日々のトレーニングでどのような負荷をかけるべきなのかを知る事は選手の成長の助けになり、週末の試合で最高のパフォーマンスを発揮出来るようにコンディションを整える事で、試合に勝つという結果にも繋がると考えています。


ぜひ皆さんも自分のチームに合ったミクロサイクルを作成してみて下さい!


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石黒力蔵

石黒力蔵

愛知県出身、2013年高校卒業と共に、バルセロナへ指導者留学。 サッカー指導者ライセンスレベル2を取得後、バルセロナの大学でスポーツ科学を専攻。FCBarcelona Innovation hub プロサッカー指導者コース(大学院)受講中。 スペインの古豪CE JupiterとFF Badalonaにて全ての年代を第一監督、第二監督として指導。現在はEC Granollers にてユース年代のパフォーマンス向上部門の責任者を務めつつ、ユースAチームの第二監督兼フィジカルコーチとして活躍している。 さらにスペイン人指導者と共に、UNIQとしてバルセロナと日本で心理学を主軸としたサッカースクールを展開中。 Instagram→@riki_soccer_bcn

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