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【プランニング理論】育成年代サッカートレーニング計画メソッド解説


目次[非表示]

  1. 1.はじめに
  2. 2.なぜプランニングが必要か? 
  3. 3.プランニングとは
  4. 4.【プランニング】トレーニング計画の問題点
  5. 5.プランニング『5つの柱』
  6. 6.プランニングを始めよう
    1. 6.1.①プレーモデル分析
    2. 6.2.②普遍的なサッカー原則に基づく技術・戦術アクションの分類
    3. 6.3.②プランニングの設定期間と設定テーマ
      1. 6.3.1.年間【戦術】プランニング
      2. 6.3.2.月間【戦術】プランニング
      3. 6.3.3.週間【戦術】プランニング
  7. 7.終わりに
  8. 8.関連記事

はじめに

シュート・パス・センターリング・タックル・1vs1の守備・ワンツー....。

マークを外す動き・幅・高さ・深さ....。

フィニッシュの構築・守備スライド・ラインアップ・ポジションチェンジ.....。

まだまだ無数に存在するトレーニングテーマその中から、指導年代やチームの課題に合う適切なトレーニングメニューを組み立てること。選手1人1人を伸ばしながら、チームとしての機能性にもフォーカスをすることは、一筋縄にはいきません。

「今日のトレーニングのテーマは何にしよう?」

「あれ? 先週も同じトレーニングだったな」

「プレーモデルがどこまでチームへ浸透しているかわからない」

「トレーニングするべき原理原則が整理されていたら・・・」

そのような悩みを抱える方も多いと思います。


トレーニングテーマを整理し、計画的・段階的にチーム・個人をレベルアップする。その目的を達成するための、最も重要なツールとして「プランニング」が存在します。そもそもサッカーだけでなく、全てのスポーツにおけるトレーニングに、プランニングの概念が欠かせません。学問に基づいた「予測」や「見立て」を作成することで、計画的にチームや選手をレベルアップ・アップデートすることが可能です。

スペインではサッカーのトレーニングにもプランニングの概念が、育成年代から浸透しています。年間・月間・週間のプランニングを通して「その日」のトレーニングメニューを構築します。

日本サッカーでは育成年代の現場までプランニングの概念と知識が届いていない現状は明白です。「その日、その日」でトレーニングテーマを設定するとき、”テーマの習熟度・進行度・浸透度”を図ることはできません。


―育成年代のサッカー指導者にプランニングの基本的な概念を知り、実践して欲しい―

その想いで、本記事では『プランニング理論における定義と、その重要性』。さらに『育成年代の技術&戦術プランニング』についてお話します。



なぜプランニングが必要か? 

プランニングとは文字通り、トレーニング計画を指します。またプランニングはスポーツだけでなく、すべての「教授活動」に生まれる概念です。

例えば、教育の現場ではプランニングは、「教育計画」と呼ばれます。

文部科学省から学習指導要領が発行され、教育計画が定められています。学習指導要領とは、各学年で身につけさせたい技能・能力を細かく定義・分類分けした日本教育のバイブルです。

小学1年生の算数では、足し算から始まり、引き算、掛け算といったように徐々にレベルが上がっています。学ぶべき項目を、学習テーマごとに1学期・2学期・3学期と、わかりやすく分類する。教師は学習指導要領が指定した「身につけさせたい能力」に基づいて、年間指導計画と評価計画を作成。これが「プランニング」です。年間指導計画をもとに、1学期→1ヶ月→1週間、そして「その日」の授業を組み立てます。

自分のクラスのレベルに適応させる必要がありますが、小学1年生に”いきなり掛け算を教える”ようなことはありません。これをサッカーに置き換えると―。

学習指導要領=原理原則の整理。学習テーマの年代別分類

年間指導目標=今シーズンのプレーモデル作成

年間指導計画=年間プランニング

上記のような構図になります。

サッカーの場合、教育のように言語化が進んでいないことが、プランニング作成における難易度をあげている要因です。教育とサッカーで言語化の進行度に差が生まれている理由は、研究者と論文の数に由来しますが、今回は詳しく言及しません。


プランニングとは

バルセロナ体育大学INEFの教授であり、構造的プランニング理論で有名なFCバルセロナのパコ・セイルーロ。彼は、以下のようにプラニングを定義しています。

コーチングスタッフによって、トレーニングするべき1つ1つのテーマを包括的に描写、予見、組織される。理論的に設計された「予測」の集合体である。これらの予測は、クラブに所属する選手たちの年代に適した形で実行される。プランニングは、定められたトレーニングテーマを分析・修正し、管理することを可能にする。シーズン中に要求される結果達成のため、選手のトップパフォーマンスを引き出す適切なトレーニングプロセスを獲得することが目的となる。

パコ・セイルーロ

プランニングは「各選手の年代」を考慮するべき。それがセイルーロの主張です。各年代でサッカープレーヤーが優先的に身につけておくべき能力は変わるからです。小学生年代の選手にチーム戦術やフィジカルトレーニングばかりを教えても逆効果になってしまいます。

将来のプレーヤーのパフォーマンス成長を見据えながら、チームも強くする。

プランニングを一言でまとめると「分析と管理」です。最高のパフォーマンスを引き出すため、チーム・選手のレベル・年代に応じたトレーニング計画を作成する。そして無数の学習テーマを整理・分類することで、選手とチーム両方におけるパフォーマンス向上のフォローアップが可能となります。


【プランニング】トレーニング計画の問題点

プランニングは、特に陸上といった個人競争スポーツのトレーニング効率を上げるために生まれた概念です。年に3回ほどの大会に合わせて、ケガ予防、フィジカルコンディション調整、基礎運動能力向上の時期をプランニングします。

しかし、毎週末コンスタントにハイインテンシティのゲームがある集団スポーツの構造上、年間計画だけでは十分ではありません。さらにフィジカルコンディションの調整と向上だけでなく、戦術的なコンセプトもチームへ浸透させる必要があります。また毎週末の対戦相手に合わせたゲームプランのトレーニング時間も割かなければなりません。

つまり集団スポーツ(特に毎週末コンスタントに高強度のゲームがある構造)のトレーニングに、個人競争スポーツにおけるプランニング理論を”そのまま取り入れることは不可能”と言えます。

集団スポーツにおけるプランニングは、「変化」が前提となります。戦術・プレーモデルの落とし込み。毎週、対戦相手によって変わるゲームプラン、そして日々変化する選手やチームの状況。すべてを把握し、シーズン前にプランニングしたトレーニングテーマを、予定通りチームに落とし込むことは容易ではありません。

だから、年間プランニング・月間プランニング・週間プランニングの3つのトレーニング計画期間を同時に管理する。これにより、週ごとにチームに浸透させたいコンセプトを変更しても、トレーニングテーマを分析・管理することが可能となります。(詳しくは後述。)


プランニング『5つの柱』

サッカーにおけるプランニングは、基本的に5つの柱を知る必要があります。

テクニック=技術の習得→特化運動能力・戦術的意図


戦術=普遍的な戦術アクションとプレーモデル構築→個人戦術・グループ戦術・集団プレー戦術・チーム戦術


フィジカル=フィジカルコンディション向上・調整→基礎運動能力(スピード・持久力・パワー・柔軟性・コーディネーション)特化運動能力・ケガ予防


メンタル=選手個人にフォーカスした闘争精神の植え付け・理想とする人間性を獲得する共育→リスペクト・自己犠牲・努力・共感・愛・自己管理など...。

社会関係性=チームにフォーカスした闘争精神の植え付け・理想的な社会性を獲得する共育→チームビルディング・グループワーク・チームコンセプトの共有


プランニングを始めよう

※今回は5つの柱の「①テクニック」「②戦術」にフォーカスしてプランニングを組みます。実際は、5つの柱すべてを組み込むことで、完全版のプランニングとなります。


①プレーモデル分析

まずプレーモデル分析から始める必要があります。

プレーモデルに関してはこちらの記事を必ず御覧ください。→スペインサッカーから伝わる「プレーモデル」の言葉の真意を読み解く


『チームそして個人目標、理想の在り方の設定』

『13つのプレーシチュエーション各場面におけるプレー解釈の構築』


この2つを外的要因・内的要因、両側面から分析して作成します。

例えば、ゾーン1でのビルドアップは「危険か」、「危険ではないか」その解釈をチームとして定めることが最も重要です。チームの中で解釈の違いが生じる場合、チームパフォーマンス低下は必須。監督がピッチの各場面でチームに共有したい情報を整理し、チームが目指す未来を定める。この作業を飛ばすことはできません。


②普遍的なサッカー原則に基づく技術・戦術アクションの分類

まず、年代とレベルに合わせたバランスを考える必要があります。以下の図のように、「レベルが上がる」もしくは「年代が上がる」につれて、普遍的ツールから特殊的なツールへ変化します。プランニングに組み込む割合は逆三角形に変化することが基本です。

『普遍的なサッカー原則に基づく技術・戦術アクションの習得』→『プレーモデルやゲームプランに応じた技術・戦術アクションの応用』

この流れでプランニングの割合を定めましょう。


次に5つの項目についての『普遍的なサッカー原則に基づく技術・戦術アクション』を整理・分類します。

基本的な分類は以下となりますが、各監督のアイディアで減らしたり・付け足すことが可能です。

※これらの分類から生まれた各テーマのアクションを技術、または戦術コンセプトと名付けます。



②プランニングの設定期間と設定テーマ

分析した「プレーモデル」と、「普遍的なサッカー原則に基づく技術・戦術アクション」を期間毎に分割していきます。


年間【戦術】プランニング

年間プランニングでは、5つの項目のバランス設定を行います。以下の順序で行ってください。

①年間のトレーニング日数とトレーニングセッション数の計算

例)トレーニング週3回/リーグ戦30試合/プレシーズン4週間の場合

(シーズン29週間+プレシーズン4週間)× 3日=99日※トレーニング日数

1回のトレーニングで行うセッション数が4つの場合→99日×4セッション=396セッション※トレーニングセッション数

②技術と4つの戦術のパーセンテージ%設定

例)小学4年生でレベルがそこまで高くないチーム

  • 技術=50%
  • 個人戦術=20
  • グループ戦術=10%
  • 集団プレー戦術=10%
  • チーム戦術=10%

③各項目における年間セッション数目安の確認

つまり年間396セッションと考えると・・・。

テーマ
年間セッション数
技術
158.4 session
個人戦術
79 session
グループ戦術
39.6 session
集団プレー戦術
39.6 session
チーム戦術
39.6 session

この数字を目安に各項目のトレーニングボリュームを年間通して分析・管理します。


月間【戦術】プランニング

いよいよ戦術と技術の各コンセプトをトレーニングする月ごとに分けていきます。これまでのデータから、月間のトレーニング日数は、4週間×3日=12日。月間のセッション数は、12日×4セッション=48セッションとなります。

つまり各項目における月間セッション数を計算すると・・・。​​​​​​​

テーマ
月間セッション数
技術
24 session
個人戦術
9.6 session
グループ戦術
4.8 session
集団プレー戦術
4.8 session
チーム戦術
4.8 session


次にセッション数の割合から、習得度の予測を立てる必要があります。

「技術テーマのトレーニングは24セッション。だから技術コンセプトを全部入れよう 。」

といった単純なプランニングでは、選手がアクションを習得する前に、次の課題が始まる原因となります。選手の成功体験が減り、トレーニング効率が落ちる可能性もあるので注意しましょう。

プランニング例)


週間【戦術】プランニング

まず1週間の流れを考えてみます。1週間×3日×4セッション=12セッション/週間。

つまり各項目におけるつまりセッション数を計算すると・・・。

テーマ
週間セッション数
技術
6 session
個人戦術
2.4 session(2~3 session)
グループ戦術
1.2 session(1~2 session)
集団プレー戦術
1.2 session(1~2 session)
チーム戦術
1.2 session(1~2 session)

※端数は毎週調節→チーム戦術に力を入れたい場合。=端数を削って、チーム戦術がテーマとなるコンセプトのセッション数を増やします。

※フィジカルプランニングの分野に関わりますが、ボリューム・負荷・インテンシティの関係性を考慮してトレーニングテーマを振り分けましょう。→以下の図を参考にしてください。

プランニング例)

終わりに

さて今回は育成年代のプランニング理論の概念についてお話しました。ぜひ現場で自分なりに実践して1年間の歩みを記録してください。

サッカーに必要な能力を総合的にトレーニングするため、分析して管理する。特にこれからの育成年代のサッカー指導者における必須能力になるでしょう。


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栗本悠人

栗本悠人

スペイン協会公認サッカー指導者ライセンスレベル3所持(日本のS級相当)スペインの現地クラブで小学生年代から高校生年代まで全カテゴリーの監督を歴任。大学時代は人間性の教育の研究に従事し、小学校教員免許を所持する。教育学、経営学、心理学をヒントに、サッカーの競争原理と育成の統合を目指している。スペクラ創設者&スーパーアドバイザー。 

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