【スペイン流サッカーポジション別役割まとめ】ウイング(攻撃時のタスク)
目次[非表示]
- 0.1.はじめに
- 0.2.〈タスク1〉チームのピッチ上での横幅を確保する。
- 0.3.〈タスク2〉フィニッシュゾーン(相手ゴール前)に近づくにつれて、横幅を縮めていく。
- 0.4.〈タスク3〉サイドレーンでボールを受ける際の体の向きに注意する。
- 0.5.〈タスク4〉サイドレーンでボールを引き出すときは、高さを調節する。斜めのポジションを維持することで、相手のラインを超えることが可能になる。
- 0.6.〈タスク5〉中央レーンにボールがある時は、ゴール方向への斜めの動きでサイドバックの背後を狙う。
- 0.7.〈タスク6〉サポートのデスマルケと、突破のデスマルケを使い分ける。
- 0.8.〈タスク7〉相手ゴール方向を意識したアクションを心がける。
- 0.9.〈タスク8〉ボールを受けたいスペースと逆の方向に一度フェイントを入れてボールを引き出す。
- 0.10.〈タスク9〉パスを出したあとは必ず継続性を与えて新たなサポートの動きをする。
- 0.11.〈タスク10〉サイドチェンジを意識したサポート。サイドチェンジの後はできる限り素早く攻撃する。
- 0.12.〈タスク11〉アドバンテージ(優位性)のある状況では、止まらない。
- 0.13.〈タスク12〉サイドバックがオーバーラップできる状況では、ドリブルで相手を引きつけ2vs1の状況を作り出す。
- 0.14.〈タスク13〉センターリングでは、ゴール前に入ってシュートを狙う。
- 0.15.〈タスク14〉相手の守備ブロックが整い、自分のサイドで突破できない場合は、後ろや横を使って攻撃をやり直す。
- 0.16.まとめ
現代サッカーでは、ウイングに様々な能力が求められています。以前のように、「守備時には前線に残って攻撃に備える」ことは少なくなり、自陣まで戻って守備をするウイングは当たり前の光景となりました。また、攻撃面では守備戦術の大幅なレベルアップにより時間とスペースが制限される状況で、1人で数人を打開できる能力も必要となります。
守備・攻撃面でのウイングの役割は多様化・複雑化していますが、世界レベルの選手たちは戦術的なアクションを完璧にこなしながら、個人のタレントを輝かせることができます。
戦術的インテリジェンスが欠けていては、いくらドリブルが上手くてもスペインでは試合に出ることさえできません。皆さんは、攻守の両翼・ウイングのポジションの役割について言葉で説明できるでしょうか?
求められる役割がもっと明確にわかっていたら・・・。教える指導者もはっきりと言語化して選手に要求できます。また教えられる選手側も頭の中にはっきりとしたイメージを思い描いて、アクションを実行することができるでしょう。
今回は、ウイングの攻撃時のタスクのまとめ完全版を公開します。
ウイング【守備時のタスク】はこちら
はじめに
ポジション別タスクは個人戦術・個人技術のアクションにフォーカスしていますので、チームでの戦い方等は頭の片隅に置いておいてください。とにかくウイングのポジションでプレーする上での原理原則と考えて貰えればと思います。また、攻撃時とは【チームがボールを持っている時】の事です。
〈タスク1〉チームのピッチ上での横幅を確保する。
→ウイングの選手がまず知っておきたいのは、「チームへ横幅を与える」ことです。もちろんピッチ中央に入ってプレーすることもありますが、基本は「外→内」のイメージでプレーすると上手く行く。※メッシのように「偽ウイング」といって、ウイングと見せかけてトップ下の位置にポジションを取ることもあるので、チーム戦術によって変化する場合がある。
〈タスク2〉フィニッシュゾーン(相手ゴール前)に近づくにつれて、横幅を縮めていく。
→サッカーの最終目的はゴールです。フィニッシュゾーンにいるのに、サイドに立ってボールを足元で要求するウイングの選手が沢山いますが、ペナルティーエリアへ侵入するアクションを多くする必要があります。相手の背後を狙う「突破のデスマルケ」や、センターリングに対してゴール前に詰めるアクションなど、ゴールに近づく動きを多く取り入れましょう。
(デスマルケに関してはこちらの記事をチェック)
スペインサッカー攻撃の個人戦術【マークを外す動き(デスマルケ)】
〈タスク3〉サイドレーンでボールを受ける際の体の向きに注意する。
→サイドレーンでボールを受ける際に、完全に相手を背負ってボールを受けているシーンがよく見られます。あと、1~2メートルの横距離をとれば、ピッチ全体を見渡せる状況が生まれます。
〈タスク4〉サイドレーンでボールを引き出すときは、高さを調節する。斜めのポジションを維持することで、相手のラインを超えることが可能になる。
→横幅をしっかり取れたら、次は高さの調節をする必要があります。ボール保持者がプレッシャーを受けている状況では、落ちてきてサポートをします。逆にボール保持者がフリーなら相手の背後を取る動きも有効となるでしょう。
〈タスク5〉中央レーンにボールがある時は、ゴール方向への斜めの動きでサイドバックの背後を狙う。
→ボールが中央レーンにあるとき、ウイングがサイドで足元にボールを呼ぶだけでは、状況は変わりません。相手の背後への斜めの動きを繰り返すことで、相手のDFラインは混乱します。相手サイドバックが付いて来れば、味方のサイドバックがオーバーラップするスペースを作ることもできます。もし付いて来なければ、DFの背後でボールを受けることができ、キーパーと1vs1のビックチャンスに繋がる可能性もあります。
〈タスク6〉サポートのデスマルケと、突破のデスマルケを使い分ける。
→タスク4,5と繋がる戦術的駆け引きのアクションです。よく見かけるのは、足元でばかり要求する選手。これでは怖さがありません。背後への飛び出し(突破のデスマルケ)と、足元への引き出し(サポートのデスマルケ)の2つを状況に合わせて上手く組み合わせる必要があります。
デスマルケについての詳しい説明はコチラ
スペインサッカー攻撃の個人戦術【マークを外す動き(デスマルケ)】
〈タスク7〉相手ゴール方向を意識したアクションを心がける。
→トラップ・パス・シュート・ドリブル。可能な限り相手ゴールに迫るアクションを選択します。フリーなのに後ろにパスをしたり、シュートできる場面でパスを選択するのは、スペインではタブーです。前へ進むプレーができなければ、スペインでは評価されないようです。
【合わせて学ぼう】パスがグッと上手くなる仕組み
〈タスク8〉ボールを受けたいスペースと逆の方向に一度フェイントを入れてボールを引き出す。
→フットサルのアクションに近いですが、サイドのスペースでボールを受ける際、「自分が本当に受けたいスペースとは逆のスペースへ一度動き出す」ひと手間が重要になります。足元で受けたい場合は背後を取るアクションをしてから、止まって足元にボールを呼び込む。背後で受けたい場合は、足元にボールを要求してから、裏へ飛び出すなどの工夫が必要です。
〈タスク9〉パスを出したあとは必ず継続性を与えて新たなサポートの動きをする。
→ウイングはモビリティー(動き)が必要なポジションになります。パスを出したあと、止まっていると攻撃に厚みがでません。パス&ムーブを常に意識しましょう。
〈タスク10〉サイドチェンジを意識したサポート。サイドチェンジの後はできる限り素早く攻撃する。
→ウイングの選手は、サイドチェンジのボールに対して予測してポジションを取らなければなりません。つまり、逆サイドにボールがあるときも、プレーから目を離さず、次の状況を予測してサポートする必要があります。また、サイドチェンジが成功した後は、相手の守備ブロックのスライドが間に合っておらず、スペースがある状況が多いです。そのチャンスを逃さないよう、縦に早く仕掛けるのが効果的になります。
〈タスク11〉アドバンテージ(優位性)のある状況では、止まらない。
→せっかく良い動き出しやドリブルで相手から「前に出る(優位な状況)」シーンを生み出しても、すぐに止まってしまったら意味がありません。相手よりも良いポジションを取ったら、スピードを緩めずゴールへ進みましょう。
〈タスク12〉サイドバックがオーバーラップできる状況では、ドリブルで相手を引きつけ2vs1の状況を作り出す。
→ボールを保持している時に、サイドバックが上がって来るタイミング。ドリブルで相手を引き付けて、サイドバックがオーバーラップできるスペースを作ります。すぐにパスを出すのではなく、一度ドリブルで相手を引き付けることによって、より有効な攻撃が可能となります。
〈タスク13〉センターリングでは、ゴール前に入ってシュートを狙う。
→逆サイドからセンターリングが上がってくるシーン・オーバーラップした同サイドのサイドバックがセンターリングを上げるシーンで、サイドに開いていても意味がありません。クロスに合わせてシュートを狙うためにペナルティーエリア内へ侵入しましょう!
〈タスク14〉相手の守備ブロックが整い、自分のサイドで突破できない場合は、後ろや横を使って攻撃をやり直す。
→縦への推進力があるウイングは、前へ進めない状況で無理に勝負をすることはしません。メッシやネイマールの1試合全部のプレーを見れば、簡単なプレーを選択していることも多いと思います。1vs1の勝負が強い選手は、勝てる状況を把握しています。無謀に突っ込むだけではない、戦術的な駆け引きが大切です。
まとめ
トップレベルのウイングの選手たちは、これらの戦術的タスクを試合中に全て完璧にこなしています。さらに個の打開力もあれば手に負えませんよね・・・。ウイングは「相手のDFラインのバランスを壊すプレー」と「チームで働く賢いプレー」ができなければなりません。日本人のウイングが海外のトップクラブでプレーするためには、ポジション別の原理原則の習得を小学生高学年から取り入れる必要があるでしょう。
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