【バルセロナで戦うサッカー監督コラム】サッカーチームのコーディネーターという役職とは (前編)
はじめに
スペインのクラブチームの育成コーディネーターという役職とは、どういったポストであり、どんな仕事内容を実際に行っているか知らない方も多いのではないでしょうか?
日本にはコーディネーターという役職はなく、監督の上にはすぐにディレクターやクラブ代表のポジションが存在します。スペインでは、ディレクターや代表とのパイプ役として「コーディネーター」というポストが存在しています。
前編では、コーディネーターに就任するまでの流れや、日本とは異なる文化をもつスペインでコーディネ-ターとして働いた経験を伝えます。
将来サッカーに関わる仕事がしたいと考えている方にとって、コーディネーターという役職が新しい選択肢になればと思います。
そもそも、コーディネーターとは?
コーディネーターとは、端的にいうと、クラブの方向性を各監督へ浸透させる事、各チームの動向を管理するポストを指します。日本の会社で言うところの、中間管理職にあたります。また、監督の育成という役割も担っていますので、クラブにとってはコーディネーターの能力が、チーム全体が機能する上で重要な鍵であることは言うまでもありません。
コーディネーター就任までの流れ
今回は、このコラムの著者である私が、実際にどういった流れでコーディネーターというポストに就任したかについてお話します。
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私は、コーディネーターに就任する前々シーズン、クラブで一番レベルの低いチームのU-10の選手たちを率いて監督をしていました。そのシーズン中、監督として結果を残すことができ、その翌年は、クラブのU-10トップチームを率いる監督に就任することができました。
さらに、U-10までの現場レベルでのコーディネーター就任が決まりました。U-10年台のチームはAチームからFチームまで6チームが存在していました。つまり、その6チームの監督たちの育成や、各チームのコントロールが主な仕事となります。
コーディネーターというポジションは、スペイン人でも就任することが難しいとされています。その意味でも日本人である自分が、スペイン人選手やスペイン人監督を管理、統括できると言う立場になれたのは大変光栄な事でした。
日本人コーディネーターとして大切にしてきたこと
先ほども述べましたがコーディネーターの仕事は、クラブの方向性を各監督へ浸透、実行させる事、各チームの動向を管理するなど多岐にわたります。
具体的には、共通したトレーニングメソッドの伝達、クラブが決定した試合・練習でのルールの徹底、試合に欠席した選手の補充、保護者との対応などがあげられます。
これらの仕事、一つ一つを機械的に処理する事もできます。しかし、機械的にならず心を込めた仕事を行うために、信頼関係を構築することを意識していました。信頼関係を構築することは、スペイン人コーディネーターも同様に意識していることですが、日本人である私はそれ以上に気をつける必要がありました。
『みなさん、想像してください。もしあなたのチームにサッカー後進国から来た上司がいたら、最初から100%彼を信頼することができますか?私は、NOです。』
私自身も、スペイン人監督達にこの様に思われていました。
信頼関係を構築するために意識すること
信頼関係を構築するために必要なことは、できるだけ多くコミュニケーションを取ることです。
私の場合は、信頼関係を構築するために毎日、選手や監督、保護者の方々と対話することを心がけていました。
それに加え、可能な限り全6チームの試合や練習を見て、声を掛けるようにしました。国が変わっても人間です。「誰かが自分の事を気にかけてくれている」と感じると嬉しいものです。地味なことですが、これを繰り返し、繰り返し行うことが、やがて信頼関係の構築に繋がるのです。徹底的に歩み寄るコミュニケーションで、1年間通して大きな問題もなく、コーディネーターとしての仕事を終えることができました。
コーディネーターに求められる力
コーディネーターに求められる力とは、どういったものがあるかについて説明します。
管理職の仕事は嫌われ役。時に、監督の評価や選手のレベル分けの判断を迫られることがあります。
この際に、求められるのがコーディネーターとしての威厳です。
威厳といわれても、あまり理解しづらいと思うので、今回はスペインU-10年代チームを例に挙げて説明します。
まず、スペインではAチームがその年代で一番の権限を持っています。そのため、Bチーム以下の選手で良いプレーヤーが入れば、Aチーム昇格させてチームを補強することができます。続いてBチーム、Cチームといった具合に権限がシフトしていきます。
各監督は頭では理屈を理解していても、良い気分にはなりません。もちろん、良い選手を奪われたら自分のチーム戦力が落ち、公式戦で勝てなくなってしまうからです。
このような中でも、「ときに厳しく接し、選手・監督のレベルを見極め、チーム編成をする力」がコーディネーターに求められている能力の一つです。
まとめ
チームにとって、中間的なポストであるコーディネーターは必要不可欠といっても過言ではありません。コーディネーターが組織の発展・維持の鍵を握っているともいえます。
そのため今後は、日本においても各チームの発展のためにコーディネーターという役割は重要になってくるでしょう。
後編では、シーズン中においてスペインのコーディネーターは何をしているのかを細かく述べていきたいと思います。