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2種類の指導形式 ESTILOS DE ENSEÑANZA


目次[非表示]

  1. 1.はじめに
  2. 2.指導形式
    1. 2.1.MANDO DIRECTO マンド・ディレクト 「直接指示」形式
    2. 2.2.DESCUBRIMIENTO GUIADO デスクブリミエント・ギアード 「発見への導き」形式
  3. 3.まとめ:トレーニング前、中、後に何をするのか
  4. 4.おわりに
  5. 5.関連記事

はじめに

"指導者は、小学生年代から簡単な質問を用いてゲームの理解力を呼び覚まし、発展させて行くべきである。"

こちらはカタルーニャ州サッカー協会の指導者学校での授業で紹介された言葉です。

サッカーは、多くの賢者や天才と呼ばれる人々によって多種多様なロジック・メソッド論が生み出され、創造と発展を繰り返し今尚その論理を拡大させています。

指導者資格を取得する過程で整理された理論を学ぶことができ、様々な知識を持つ指導者が増えている今、指導の現場でさらに重要となるのは「指導力」だと考えます。

指導者の皆様も、日々のトレーニングで選手にうまく伝わる指導ができているか、日々試行錯誤されているのではないでしょうか?

トレーニングメソッドなどの知識だけではなく、「どのように伝えるか」といった部分にはサッカーだけでなく様々な分野で活用されている「指導のメソッド」が活用されます。

今回の記事ではカタルーニャ州サッカー協会のメソッドの教科で紹介される「指導形式」に関して説明していきます!

【合わせて読みたい】【サッカートレーニングメソッド】3つのメソッドと5つのセッションタイプ



指導形式

“指導形式は教育-学びのプロセスにおいて先生と生徒の相互作用がどのように発展していくかを示す。” 

(Mosston, 1978)

一言に「指導」とは言っても、現場で活動する指導者には様々な色があります。

また選手の特徴も国や地域が異なれば様々で、その相互作用は多種多様となります。

その中で知識として持っておきたい「指導のメソッド」。

カタルーニャサッカー協会で考えられる指導のメソッドは大きく分けて二つとなっています。

一つ目は「再現メソッド」と呼ばれ、セッション中の指導量が多いのが特徴となっています。

二つ目は「生産メソッド」と呼ばれ、こちらは逆にセッション中の指導量が少ないのが特徴となっています。

各メソッドの中に含まれる二つの代表的な指導形式がこちら。

MANDO DIRECTO マンド・ディレクト 「直接指示」形式

再現メソッドの中に含まれる、「直接指示」形式

MANDO DIRECTO 直接指示

指導者
選手

- 目的

- 内容

- アクティビティ

- 評価基準

 を設定する

指導者の要求を受けるのを待つ 

セッション中 
指導者
選手

 • セッションの伝達 

 • 良いお手本

 • 継続的に訂正する

 • セッションの継続性、メニューの開始と

  終了を直接的にコントロールする

 • 指導者の指示に応え、再現する

 • セッションの自動化

 • 主導権と創造性を失う

直接指示形式における指導者と選手のコミュニケーションプロセスは:

激→反応→評価 (ポジティブ/ネガティブ) 

となります。


この直接指示には、グループをまとめトレーニング強度をコントロールでき、素早く解決へ至るといったメリットがあるが、学びのプロセスにおける関わり合いが少なく「学習」としての意味はあまり持たないといったデメリットも存在する。

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DESCUBRIMIENTO GUIADO デスクブリミエント・ギアード 「発見への導き」形式

生産メソッドの中に含まれる、「発見への導き」形式

DESCUBRIMIENTO GUIADO 発見への導き

指導者
選手


- 事前に知識を入れてからスタート

- 目的と内容をデザインする

- アクティビティの中に主導権を委ねる

- 評価基準を設定する

-トレーニングの中で主導権を持ち、アクションをどのように実行するかを判断する。
セッション中 
指導者
選手

 • 選手の反応を待つ

 • 答えは与えず、情報を

    簡潔化し導く

 • 内容を形作る

 • トレーニングの中で表現する

 • 創造力を働かせ、自分の可能性を探る

 • 自らテクニックアクションを構築する

発見への導き形式における指導者と選手のコミュニケーションプロセスは:

刺激(質問)→考えるプロセス→反応

となります。


この発見への導きには、選手が自ら判断を下し、選手側からの関わりが多くなることから多くの「学習」としての意味、継続性を持つといったメリットがあるが、トレーニング強度をあまりコントロールできず、解決までに多くの時間を要するといったデメリットも存在する。

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まとめ:トレーニング前、中、後に何をするのか


直接指示
発見への導き
トレーニング前
トレーニングの内容と
キーファクターの準備
トレーニングの内容とキーファクター、投げかけたい質問の準備
大枠の質問から小枠の質問が理想
トレーニング中
各場面で解決策を与える
解決へと導くために事前に準備しておいた
質問を投げかける
トレーニング後
各シチュエーションで何をするのか繰り返し伝える
トレーニングしたコンセプトについてよく考える


おわりに

選手の特徴を見極め、タイミング良くアクションを成功させるためのコツ、キーファクターを選手に与える指導者を見ると学ぶべき部分が多く、それが育成の現場での「指導量」へのフォーカスに繋がっていると感じます。スペインでも指導で息が上がっている、そんな指導者を目にすることもあります。

また、「指導量」だけではなくセッションを始める前の短く分かり易い説明、トレーニングを止めるタイミング、選手の考えるプロセスから理解に導く質問などが上手い指導者からも学ぶことが多いと感じます。

この記事で解説したメソッドが全てで、どちらが正解といったことではありません。年代やトレーニングの目的、選手一人一人の特徴・性格やタイミングによっても指導の形式を使い分けることが必要となります。

メリット・デメリットを整理してみると、一見うまくいったトレーニングでも自分の指導を振り返った時によりプランニング通りにいった点や反省点が見えてくることもあります。

自分の学んだ理論や体感したサッカーを、選手の「学び」に繋げられるよう「指導形式」をうまく使い分けていけたらと思います。

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西畑 勇佑

西畑 勇佑

福岡県出身、バルセロナ在住。スペインサッカー協会公認指導者ライセンスレベル2所持(日本のA級相当)。スペイン育成の名門U.E.SANT ILDEFONSのU-13の第一監督を務めながら、スペインリーグでプレーヤーとして活躍する。大学時代にはJICAの青年海外協力隊員としてスポーツ振興に関するボランティアを行うため、南米・ボリビア多民族国へ。チームリーダーとしてボリビアでのサッカー普及に貢献した経歴も持つ。

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