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EUROと五輪でも主力!2大会連続出場スペイン代表6選手の気になるデータ


目次[非表示]

  1. 1.はじめに
  2. 2.GK:ウナイ・シモン(Aビルバオ)
  3. 3.DF:エリック・ガルシア(バルセロナ)&パウ・トーレス(ビジャレアル)
  4. 4.MF:ペドリ(バルセロナ)
  5. 5.FW:ダニ・オルモ(RBライプツィヒ)&オヤルサバル(Rソシエダ)

はじめに

スペイン代表は8月7日(土)、東京五輪サッカーの決勝でブラジル代表と対戦。前半終了間際に先制ゴールを許し、61分に同点に追いつくも、延長後半に追加点を決められ2-1で敗れた。

準決勝では久保建英が牽引する日本代表と対戦。延長戦にもつれ込んだ一戦は終盤のアセンシオのゴールによって1−0でスペイン代表が勝利した。しかし、元日本代表の中村憲剛氏が語るように、「ここ(これまで積み重ねた戦い方のプランニング)に確かな成熟を感じる一方で、その成熟がスペインとの差をより鮮明に浮き彫りにさせたとも言える」試合であった。

そのスペイン代表はEUROを戦った6選手をオリンピックに招集し全員がスタメンで全試合に出場。しかも、GK、DF、MF、FWと各ラインに1選手ずつ抱える豪華なラインアップ。本来であれば同じくEUROにも呼ばれたファビアン・ルイス(ナポリ)やフェラン・トーレス(マンチェスター・シティ)も招集候補に入っていたが、五輪大会は外国クラブに対し拘束権がないため、呼ばれた選手は以下の6名である。

GK:ウナイ・シモン(Aビルバオ)

EURO開幕前までは、メディアやサポーターからも絶大な信頼は得ていなかった。更に、ベスト16クロアチア戦でバックパスをトラップミスし先制ゴールを献上。批判の声も浴びながらも、その後名誉挽回のセーブを連発し、汚名返上に成功した。そして次に迎えたスイス戦のPK戦では相手のキックを2本セーブし、準々決勝のヒーローに輝いた。準決勝ではイタリアに敗れたものの、PK戦で1本目を阻止している。

日本戦でのセーブと言えば、78分に左サイドからニアを狙った久保建英の左足シュート1本のみ。EUROに比べると存在感はそれほど大きくないと感じてしまうかもしれない。しかし、EUROでは6試合6失点、1試合平均セーブ1.5本(60%)を記録した一方で、オリンピックは6試合5失点、1試合平均セーブ2.2本(72%)。決勝でもチームが最後まで戦えた要因は、ウナイ・シモンが2回に渡りゴールを阻止したパフォーマンスにある。

チームを救うミラクルセーブ、安定した数字の中にDFラインの背後へのボールのケアも際立っていた。


DF:エリック・ガルシア(バルセロナ)&パウ・トーレス(ビジャレアル)



今大会を通し、全試合に出場しフル出場を果たしたCBコンビ。EUROでもスタメンで起用された2人だが、A代表ではアイメリク・ラポルテ(マンチェスター・シティ)が不動のレギュラーだったため、エリック・ガルシアとパウ・トーレスが一緒にプレーすることはなかった。それでも、まるで長年ともにプレーしているCBコンビかの様にチームに安定感を与えた。

エリック・ガルシアは、パスサッカーが主流のラ・マシア(久保建英と同年代)で育ち、グアルディオラ監督のマンチェスター・シティで3シーズンを過ごした後、今夏バルセロナトップチームに復帰。ビルドアップ時には強く正確なインサイドパスがチームの攻撃のプレースピードを高める。

決勝戦のオヤルサバルの得点の起点になったのも、エリック・ガルシアの1つのポジションを飛ばしたパスであった。

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一方、パウ・トーレスは昨シーズンEL優勝を果たしたビジャレアルのレギュラーCB。CBコンビの元スペイン代表ラウール・アルビオルはビルドアップを得意としないため、ビジャレアルではパウ・トーレスがゲームを組み立てている。

相手コートでボールを運ぶシーンも多く見られた、彼のボールの持ち方はぜひ参考にしたい。

ポゼッションサッカーを展開するチームのセンターバックが、高いパス成功率を記録するのは必然ともいえるかもしれないが、高いパス成功率を誇るセンターバックがいるからこそ、ポゼッションサッカーが展開できるのである。実際、両選手ともに両大会では驚異のパス成功率を記録している。オリンピックに至ってはエリック・ガルシアが571本、パウ・トーレスが559本で同大会の最多パス数を記録した


エリック・ガルシア
EURO
東京五輪
1試合平均パス(全体)
93.0 (96%)
109.0 (94%)
1試合平均パス(敵陣)
38.7 (92%)
48.5 (91%)


パウ・トーレス
EURO
東京五輪
1試合平均パス(全体)

67.7 (93%)
102.5 (92%)
1試合平均パス(敵陣)
34.3 (90%)
48.8 (89%)

MF:ペドリ(バルセロナ)


18歳ながら、A代表を牽引した「イニエスタ2世」。あこがれのイニエスタに引けを取らない巧みなドリブルテクニック、チャンスメイクはもちろん、20/21シーズン(EURO、オリンピック含め)を通し70試合以上の出場回数はメディアでも大きく取り上げられている。また、献身的な守備も特徴として挙げられるが、あるデータがそれを大きく物語っている。

それは、走行距離である。UEFAの公式サイトが発表したデータでは、ペドリは76,14㎞を記録。同大会で3番目に長い距離を走った選手だが、1位と2位はともにPK戦で決着がついた決勝をフル出場したイタリア代表ジョルジーニョ(チェルシー)、イングランド代表カルバン・フィリップス(リーズ・ユナイテッド)である。つまり、準決勝終了時点では攻撃的MFのペドリが最多走行距離の記録保持者だったということである。

そしてもちろん、攻撃的MFとしての役割も怠らず。EURO最優秀若手選手賞は伊達ではない。6試合フル出場し、91%のパス成功率を全体と敵陣でのパスで記録。しかも、これもまたUEFAの公式データによると、ペドリはボール保持走行距離(38,23㎞)とキーパス(31)において大会1位に輝いた。まさに、ペドリの独壇場だ。

しかし、東京2020ではEUROと比較すると、全体のパス成功率は87%、敵陣でのパス成功率は84%へと激減。ペドリのオーバーワークを心配し、五輪出場を控えてほしかったクラブとは裏腹に、金メダル獲得のため来日したが流石にシーズン終盤の疲労が数字に影響した可能性は高い。

それでも際立つファイナルサードでのパス成功数。EURO、東京2020のどちらでもスペースが少なくプレッシャーの多いゾーン3での成功パス数は最多。

気の利いたポジショニングや「パス」などの「守るドリブル」技術アクション、中でも彼の顔をあげた状態での「運ぶドリブル」は脅威であった。テレビで見ていても十分に相手を引きつけて、ここでパスを出すだろうと思ったところから更に運ぶ。ギリギリまで相手を引きつけるペドリの運ぶドリブルは常に味方に時間とスペースを与えていた。

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FW:ダニ・オルモ(RBライプツィヒ)&オヤルサバル(Rソシエダ)

バルセロナの下部組織で育ち、ディナモ経由でRBライプツィヒにステップアップした右利きの左ウィング、ダニ・オルモ。EUROでは準決勝イタリア戦のPK戦で大事な1本目を外した印象も強いが、ルイス・エンリケ監督が敷いたゼロトップシステムでは「偽9番」として重要な役割を果たした。

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また、EUROではスペイン代表の最多ドリブル選手(17)として輝いた。大会では6位と決して高い順位ではないが、UEFAが公表している最多ドリブル選手15人の内、唯一のスペイン人選手である。これを踏まえると、この手の選手の必要性は一目瞭然。

さらに戦術理解度が高く、様々なポジションでプレーできるユーティリティプレーヤーでもある。グループステージのオーストラリア戦の後半、ダニ・オルモは度重なるシステムチェンジに適応し両サイド、トップ下、ボランチ、そして右サイドバックとしてさえプレーした。両大会のヒートマップ(出典:SofaScore)を比べると、一目でわかる。


EUROでは6試合を通し、わずか156分しか出場がなかったミケル・オヤルサバル。オリンピックではラファ・ミルと並びスペイン代表の得点王(3)に輝いた。周りを活かす役目も果たし、2アシストを記録。日本戦では右サイドで相手DFを引きつけ、アセンシオが決めた決勝点をアシスト、決勝でも強烈ボレーから同点ゴールを決めるなど、若きレアル・ソシエダのキャプテンがエースとしての活躍を見せた。

献身的な守備と膨大なスタミナも特徴である。日本代表との準決勝戦では90分プレーした後、延長前半開始直後に敵陣から猛ダッシュ。自陣のペナルティエリア付近まで途中出場したばかりの前田大然を追いかけ、カウンターを阻止した守備も日本人の記憶に新しい。ペドリの膨大な試合数が注目を浴びる一方で、オヤルサバルもなんと今シーズン合計63試合に出場している、スタミナお化けである。

今大会、スペイン国営TV局「TVE」で解説を務めていた92' バルセロナ五輪金メダリストのアルベルト・フェレール氏は、「彼は大会を通し、素晴らしいパフォーマンスを見せた。スペイン代表のMVPだと言える」と語った。


※データ出典:「SofaScore」


杉森正人

杉森正人

スペイン・マドリード在住スペイン生まれの日本人。スペイン4大サッカー紙のひとつMARCA(マルカ)で記者としてインターンを経験。在籍時には、スペイン語・日本語の2カ国語をネイティブレベルに扱える強みを活かしたサッカー記事を執筆。現在は現地コーディネート会社に勤める。

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