〈サリーダ・デ・バロン〉3人目のコンセプトを使ったビルドアップ
目次[非表示]
- 1.はじめに
- 2.分析事項
- 3.配置とプレスタイプ・前進方法
- 4.3人目のコンセプトを使ったビルドアップ
- 5.キーパーを含めたビルドアップ
- 6.最後に
- 7.関連記事
はじめに
組織攻撃局面でビルドアップを行う際に重要となるSalida de balón(ボールの出口)構築。
近年、守備戦術の発達によるプレッシングパターンの増加など、ゾーン1でのハイプレスに苦しむチームも多く見られます。
プレスをかけられ出口を見出せずに前線へのロングフィードばかりになってしまう…
フリーな選手を見つけてボールと共に前進できたら…
ビルドアップを行う際には、本来主導権を持つべき攻撃側の優位性を活かすため相手システムやプレッシングの特徴理解など、事前に頭に入れておくべき情報があります。
今回の記事では美しいパスサッカーで有名なFCバルセロナを始めビルドアップを得意とするチームが行う基本的なビルドアップのパターンから3人目のコンセプトを使った形をご紹介!
【合わせて読みたい】チーム戦術を作ろう!サッカーの基本『13のプレーシチュエーション』前編
分析事項
まず始めに、自チームDFラインと中盤に対する相手のプレスライン(FW、MFライン)の人数、形、プレッシングゾーンを見てみましょう。
今回は4バックのシステムを使いゾーン1でのプレスを行う相手チーム例に、また「最終ラインは1人以上の数的優位を保つ」という原理原則を元に見ていきます。
配置とプレスタイプ・前進方法
・4-3 VS 3-3 ディフェンスライン→数的優位(1枚) 中盤ライン→数的同数
DFラインで数的優位が生まれています。相手チームセンターフォワードがセンターバックに対してプレスをかけサイドに誘導する。
例)フリーなセンターバックが運ぶドリブルで相手を引きつける、もしくはゾーン2に侵入
個人戦術のサポート、「引きつける」戦術的意図を持った技術アクション「運ぶドリブル」をベースに前進。
【合わせて読みたい】2vs1を制する者がサッカーを制する!オフェンスの9つのポイント♪
・4-3 VS 2-4 ディフェンスライン→ 数的同数 中盤ライン→数的優位(1枚)
ダイヤモンド型の中盤が中間ポジションを取り、中盤での数的不利をカバーしています。
例)ボールを素早く循環させ、サイドバックから両インサイドハーフのサポートでワンボランチの脇のスペースを使う
ベーシックなビルドアップの形ですが、もちろんフリーになった味方へ狙い通りパスが出せないケースもあります。
3人目のコンセプトを使ったビルドアップ
3人目のコンセプト:
ボール保持者(1人目)からサポートに入る選手(2人目)を経由し、直接パスを出す事のできない、状態の良いフリーな選手(3人目)にボールを届けるためのポジショニング、動き、アクション。
例)4-3 vs 3-3
センターバックに対する数的同数を作られた時の3人目のコンセプトを使った前進
・ウイングが外のパスコースを切りながらプレス→中盤の選手がサポートのデスマルケを行い3人目となるサイドバックへパス。
・トップ下の選手がボランチのパスコースを切りながらプレス→中盤の選手がサポートのデスマルケを行い3人目となるボランチへパス。
常に直接パスを受けようと、無理に動き回って味方のスペースを消してしまうのではなく直接受けられない場合は2人目からパスを受けられるスペースを確保しタイミングよく動き出す。
【合わせて読みたい】マーク不可能!?3人目の動きの意味と効果&トレーニング方法
3人目のコンセプトで気をつける点として、これらのシーンでの3人目の選手の動きはあくまで直接ボールを受けられなくなった瞬間に効果的だという点の理解が重要となります。
・1人目のボール保持者はプレスに来る相手選手がプレスバックできないように、できる限り引きつける
・2人目となる中盤の選手は深さをとったポジションから相手のプレススピードを見てタイミングよくサポートに入る
・3人目となる選手は初めから3人目の動きを狙うのではなく、先ずは直接ボールを受けられるサポートのポジションを取り、相手が数的不利でパスコースを切りながらプレスに行かなければならない状況を作る
トライアングルを意識した良いポジショニングがアクションを成功させるキーファクターとなります。
キーパーを含めたビルドアップ
FCバルセロナのテア・シュテーゲン、マンチェスターCのエデルソン、アヤックスのオナナなどを始め、現代サッカーにおいて足下の能力の高いゴールキーパーがビルドアップに加わるシーンが多く見られます。フリーマンともなり得るキーパーには、技術のみならずビルドアップに必要な戦術理解が求められています。
キケ・セティエン率いるFCバルセロナはゴールキックからキーパーにボールを預けてビルドアップを行うオプションを持っており、同じく3人目のコンセプトが見られるシーンが多くあります。
例1)ボランチを経由してセンターバックにパス
例2)インサイドハーフを経由してセンターバックにパス
【合わせて読みたい】キケ・セティエン 名言集
最後に
トップレベルの試合観戦では、各チームが持つプレッシングパターンと同様にのビルドアップのパターンを状況によって使い分けるチーム同士の攻防のインテンシティに目を奪われることが多いのではないでしょうか。
スペインでは育成年代でも、ゾーン1のビルドアップではキーパーを含めたディフェンスラインからチームとしての引き出し方を、相手のシステムによって3つか4つほど用意しています。
形も大事ですが、それらは選手の個人戦術や集団プレー戦術といったサッカーの原理原則の理解が鍵となることを忘れてはいけません。
原理原則、コンセプトを吸収しながら実戦でトライし、様々な状況を解決できる選手を目指しましょう!