【バルセロナで戦う現地サッカー監督コラム】スペインで学んだ『外国人監督』として大切なこと
はじめに
日本で活動されている指導者の皆さんは、海外で活動している日本人指導者に対してどのようなイメージをお持ちでしょうか。
欧州では、サッカーが学問として成り立っています。多くの整理された理論を学べます。また、新しい知識も現場にどんどん導入されるので、その度に知識のアプデートができる環境です。そういった意味で、知識を取り込む環境のクオリティを日本と比べた時、大きく違うことは当然のことです。
スペインにいれば、欧州トップリーグの試合をリアルタイムで見ることも可能です。さらに、毎週行われているトップレベルの育成年代の試合・練習を研究にいけます。育成年代のチームからお手本となるチームが多く、優秀な監督の使う戦術やトレーニングメソッドを現場で実際に学べます。
しかし、「知識」ばかりでは、海外で監督することは不可能です。いや、日本でも不可能でしょう。今回は、私が日本では体験できなかったであろう異国で学んだ監督をする上の経験をお話します。
『外国人監督』の壁
私自身、大きな希望を持ってバルセロナに来ました。
世界最先端の戦術やトレーニングメソッドを学んで、さまざまな知識を駆使し、チームの勝利に貢献したいと意気込みました。
ですが、実際に海外で自分自身が監督をすると、知識だけでは、他の監督との差をつける力にはならない事実を痛感しました。
異国の地で監督をする事は、コーチやアシスタントとしてチームに入るよりも、はるかに多くの問題に立ち向かう必要性があります。
コーチとしてチームに入る場合、監督に対して試合中の問題を改善するための助言が求められます。相手の戦術を分析し、自チームの戦術を「提案」する。それがコーチの仕事です。より知識が求められるポジションですね。
もちろん自分の持つ知識を使って、相手を分析し、対策する事は、監督としても必要な要素です。
しかし、それ以上にチームや選手のアイディアをまとめ、全体を流れ考慮し、チームが最高の状態へ導くため「最終決断」する能力が必要になります。
そして、結果はすべて「最終判断を下した」監督の責任です。酷かもしれませんが、それが現実です。
そのため、コーチやアシスタント以上に厳しい目で見られます。初めは必ず、スペイン人保護者・選手・クラブが私(外国人監督)に対して疑念を抱いています。
『この外国人監督を信じて大丈夫だろうか?』と、皆思っているはずです。
求められる『人間性』
よって、生じる問題はサッカー面よりも、選手やクラブ・保護者との信頼関係によるチームマネージメントの問題が多く存在します。主に、一貫性・リスペクト・謙虚さ・真面目さ、などの監督自身の人間性がチームの運命を大きく影響する分野です。
私の経験では、異国の地であろうが、日本の地であろうが、監督が抱える問題は一緒だと思っています。根本にある問題は常に一緒です。監督として、人としての人間性が最も大事だということです。選手たちが監督を信頼していない場合、日本でも他の国でも、チームは機能しません。
コーチであればそれぞれの得意分野、知識などを生かして信頼を得る事ができます。
しかし、監督はチームを一つにするための圧倒的な信頼の獲得が必要になります。その土台があってこそ、知識が最大限生かされるのです。
最後に
近年、サッカー指導者のスキルは、知識や経験などが必要以上にピックアップされている印象があります。
でも私が感じているそれ以上に大切なことは、「監督自身の生きざま」です。
もちろん、知識をアップデートして学び続けることも必要です。
それと同時に「自分自身の生き方を見直し続けること」も監督をする上で、重要ではないでしょうか。
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