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【バルセロナで戦うサッカー監督コラム】コーディネーターという役職とは (後編)

はじめに

スペインのクラブチームの育成コーディネーターという役職とは、どういったポストであり、どんな仕事内容を実際に行っているか知らない方も多いのではないでしょうか?

日本にはコーディネーターという役職はなく、監督の上にはすぐにディレクターやクラブ代表のポジションが存在します。スペインでは、ディレクターや代表とのパイプ役として「コーディネーター」というポストが存在しています。

前編では、コーディネーターに就任するまでの流れや、日本とは異なる文化をもつスペインでコーディネ-ターとして働いた経験をお伝えしました。
【バルセロナで戦うサッカー監督コラム】サッカーチームのコーディネーターという役職とは (前編)

後編では具体的にコーディネーターがシーズン中どのような働きをしているのかについて伝えます。

将来サッカーに関わる仕事がしたいと考えている方にとって、コーディネーターという役職が新しい選択肢になればと思います。


コーディネーターの3つの仕事

シーズン中、コーディネーターには大きく分けて3つの仕事があります。

①シーズンを通してきちんと各チームが機能する様に手助けすること

②監督・選手の評価をすること

③来シーズンに向けての編成準備をすること

この3つの役割について細かく説明していきます。


①シーズンを通して、各チームが機能する為の手助け

こちらは、具体的にいうとクラブ内のチーム間でのメンバーの補充です。
シーズン中は、選手の怪我や体調不良といった理由で選手補充が必要になることがあります。
その際に選手の補充をする役割を果たすのがコーディネーターです。

この補充という役割について具体例を交えて説明していきます。しかし、その前に補充する際の大事な観点であるサッカー協会が定めるルールを二つご紹介します。

スペインの州サッカー協会(今回の場合はカタルーニャサッカー協会)が規定するルール例
・選手は1日につき1試合のみ出場可能
・選手をクラブ内で補充する際は必ず一つ下のチームから補充しなければならない
この二つのルールを元に、一つの具体例をお話しします。

【ケース】
Bチームのキーパーが体調不良のため試合に出場が不可能な状況になり、今日だけキーパーを補充したいと監督から伝えられた。

先ほど紹介したルールに従ってコーディネーターは、すべき事を判断します。
つまり同日に試合がないチームで、尚且つ出来るだけCチームかDチームに所属するキーパーを探す必要があります。こういった状況では、瞬時にBチームに送る選手を判断して、決断する必要があります。


つまりコーディネーターには、サッカー協会が定めるルールを完璧に理解すると同時に、常に各チームの状況とクラブ全体を把握する能力も求められます。

これは責任の重い仕事です。ミスをすれば試合失格処分になったり、選手が足りなくて試合が出来ないといった事態も起こりうるのです。私自身も規則・ルールについて多くを覚えましたが、スペイン語が難しい時は、常にディレクター陣に手助けを求めていました。


②監督・選手の評価

2つ目の仕事は監督・選手の評価するという役割です。
なぜ、評価が必要なのか?それは、スペインではチームが常にレベルアップし続けるために、シーズンが始まると同時に来シーズンのチーム編成(来季の監督人事や選手メンバー編成)を考え始めるからです。

そのため、コーディネーターは監督・選手を正しく評価することが求められます。正しい評価をするために大切なことは、それぞれ管理している全てのチームの練習や試合をできるだけ多く観に行くことです
「足を運ぶ」ことが大切です。実際に自分の足でコーディネートするチームの状態を観に行くことで、以下のような状態を把握するためです。

【監督・選手を評価する観点の参考例】
・チームの方向性をしっかりと全体で共有しているかどうか?
・監督がどのような意図を持って練習を行っているのか?
・どのようにして監督・選手が試合に臨んでいるのか?
・どのように監督は選手達をマネージメントしているのか?

上記のような様々な観点から監督や選手を評価していきます。

スペインではシーズンが始まると同時に、来シーズンのチーム編成も始まるのです。監督、選手は常に評価対象となり、お互いに競争しています。

そして監督や選手の競争に対して、正しい評価を下すことがコーディネーターとして求められる重要な仕事の一つです。


③来シーズンへの編成準備

3つ目の仕事は、来シーズンに向けた新選手のスカウトの準備です。
スペインでは、シーズンが始まると同時に、来シーズンに向けたチーム作りが始まります。
そのため、新しい監督を迎える前に基礎づくりとしてスカウト選手リストを作成します。

例えば私の所属クラブでは、各監督が対戦相手の能力の高い選手をピックアップし、自クラブ専用サイトで情報を共有しています。さらに、後日改めてコーディネーターが観に行くというシステムを採用しています。そして、該当選手の評価付けをコーディネーターがリスト化して、来シーズンの新監督が決まり次第、獲得へ向けて新監督と話し合いをする手順になっています。

この様に、コーディネーターは新監督が決まる前からスカウト選手リストの作成を行います。つまり、常にチームの基盤作りを考えるのです。次シーズンのチームの未来を創る重要なタスクの1つです。


まとめ

今回記した3点が主なコーディネーターの役割です。コーディネーターはシーズン中のチームの管理と同時に、来シーズンを見据えた仕事が求められます。

その為、コーディネーターの良し悪しがチームの将来を大きく左右すると言っても過言ではありません。また、コーディネーターと言う仕事は多岐に渡る為、「人との繋がり」が大切になってきます。監督、コーチ陣、クラブ上層部、事務の方、選手の保護者など、多方面の人々とコミュニケーションを取り、良い関係性を構築します。。

私はコーディネーターという役割から、多くを学びました。そして皆さんに伝えたい学びは、国籍や人種は関係なく、人としての熱意は必ず伝わるということです。
『正面から問題を受け止め、解決するために真摯に動く』ことで、人の心は動きます

もちろん、言語も大事です。しかし、人が本当に通じ会える瞬間は、言葉ではなく真っ直ぐな熱意だと私は考えています。

【バルセロナで戦うサッカー監督コラム】サッカーチームのコーディネーターという役職とは (前編)



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中村貴大

中村貴大

スペイン・バルセロナ在住 スペイン協会公認サッカー指導者ライセンスレベル2所持(日本のA級相当)スペインの現地クラブでU-10・U-14の監督を務める。過去に育成コーディネーターとしてスペイン指導者の育成にも携わった。Tiwitter→@Spas11nv11Taka

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