catch-img

スペイン代表プレーモデル分析 ボール非保持フェーズ


目次[非表示]

  1. 1.はじめに
  2. 2.ポゼッション率
    1. 2.1.ポゼッション率を高めるボール非保持フェーズの能力
      1. 2.1.1.ボールを失った瞬間のプレス
      2. 2.1.2.ボールを失う瞬間とは?
      3. 2.1.3.リスク管理と戦術的ファール
      4. 2.1.4.集団プレス
  3. 3.個人的に日本代表にやってもらいたい事
    1. 3.1.スペインのポゼッション率を下げる
      1. 3.1.1.ボールを奪った後は、ラインを下げさせる
  4. 4.最後に

スペイン代表 ボール非保持フェーズ分析


はじめに

W杯初戦を7-0というスコアで勝利し、これ以上ないスタートを切ったルイス・エンリケ監督率いるスペイン代表。

今回の記事では、W杯のグループステージで日本とも対戦する無敵艦隊スペイン代表のボール非保持フェーズのプレースタイルについて説明しています。

コスタリカとの初戦でのスペイン代表の守備面について、僕の考えを紹介していきます。

スタメン



【合わせて読みたい】スペイン代表プレーモデル分析 ボール保持フェーズ



ポゼッション率

まずはこの試合のスタッツを見ていきましょう。

これはスペイン対コスタリカの守備面のスタッツです。(Opta)


タックル数、タックル成功率ではコスタリカがスペインを上回っています。

ただこのスタッツには理由があります。

それは、スペイン代表のボール支配率の高さです。

ボールを保持していれば、タックルをする必要がない。攻撃は最大の防御という言葉を聞いたことがありますが、まさにその通りだと思います。

実際にこの試合でスペインはコスタリカに一本もシュートを打たせていません。

じゃあスペインの守備能力自体はそんなに高くないのではないか?という疑問が生まれると思いますが、そんな事はありません。

ボールを支配し続ける為には、高い守備能力を必要とします。


ポゼッション率を高めるボール非保持フェーズの能力

スペインのように、ボール支配率を高める為には、もちろんボール保持フェーズの技術・戦術面の能力の高さを必要としますが、いくつかのボール非保持フェーズの能力を必要とします。

ポゼッション率を高めるボール非保持フェーズの能力

・ボールを失った瞬間のプレス

・ボールを失う瞬間とは?突破を試みる瞬間=ボールを奪われるリスクを負う瞬間

・リスク管理と戦術的ファール

・集団プレス


ボールを失った瞬間のプレス

ポゼッション率を高める為には、ボールを失わない事と同じくらいボールを奪う能力を必要とします。

FCバルセロナもそうですが、ボールを奪われた瞬間のプレスがとにかく早い。

このようなプレスをする為にはまずボール保持時の選手間の距離を近くしておく事そして、ボールを失う瞬間を予測する必要があります。

よく攻守の切り替えという言葉を耳にしますが、スペインでは最近この言葉を徐々に聞かなくなってきています。

このような状況で攻守の切り替えをしていては遅く、選手はボールを失う瞬間を予測する事でボールを失った瞬間に素早いプレスをする事が出来ます。

【合わせて読みたい】チーム戦術を作ろう!サッカーの基本『13のプレーシチュエーション後編



ボールを失う瞬間とは?

それではどのタイミングがボールを失う瞬間なのか?

様々な考えがあると思いますが、今現在僕が指導しているチームでは、突破を試みる瞬間=ボールを奪われるリスクを負う瞬間であるという共通認識を持っています。

つまり、ボールを循環させながら、チームとして相手守備ラインを突破しようと試みた瞬間にボールを失う可能性があるという事です。

この瞬間に、プレーに関わっていない選手はボールを奪われた時の事を想定した行動をする必要があります。


スペイン代表の選手特に今回プレーしていた中盤の選手、ガビ選手、ぺドリ選手、ブスケッツ選手はこのイメージがしっかりと出来ている為、素早いプレスをする事が出来るのではないかと考えています。

さらに、これは無意識なのか、試合のプランなのかはルイス・エンリケ監督に聞いてみないと分かりませんが、ボールの奪われ方も考えられていると感じました。

今回スペイン代表が多用していたフィニッシュゾーンでの突破は、

・サイドでの1対1

・守備ラインの裏へのスルーパス(特に浮き球)

このように突破しようとすることの利点は、ボールを奪われても危ないカウンターを受けるリスクが低いことだと思います。

中央ゾーンでドリブルや細かいパスを避ける事で、危ないカウンターを受ける事を避けているように感じました。


リスク管理と戦術的ファール

最終ラインとボランチの選手のリスク管理能力の高さとそのアグレッシブさも高いポゼッションを保つ為の重要なポイントです。

ボールの循環に参加しながら、いつボールの循環に関わっているのか、いないのかを認識して、パスコースを作るのかそれともカウンターの準備をしている相手選手との距離を詰めるのかこのリスク管理を徹底して行っていると思いました。

さらに、ボールを奪われた自分のマークしている選手にボールが来たときは、自分の守備ゾーンを離れてもアグレッシブについていく事でカウンターの芽を摘んでいます。

突破されそうになった場合は、ファールをする事でプレーを止めています。

カウンターをされない事は、ラインを下げなくて良いだけではなく、フィジカル面やメンタル面にも良い影響をチームに与えます。

相手陣地でボールを奪う、もしくはプレーを止めることで自陣にダッシュをする事がなくなります。さらにカウンターをされないという事はボールを奪われても危険ではないという安心感をチームに与えると考えています。

【合わせて読みたい】【サッカーのポジション別役割まとめ】ボランチ(守備時のタスク)



集団プレス

高いポゼッションを保つ為には、素早くボールを奪う必要があります。

コスタリカ戦では、コスタリカがビルドアップをパスでつないでいく方法ではなく、ロングボールを蹴る事を多用していたので、あまりプレスをする瞬間を見ることは出来ませんでしたが、この試合でもハイプレスをするシーンも見られましたし、過去の試合でもスペインがハイプレスをかけているシーンを見てきました。

そしてこの集団プレスがスペインの強みの1つだと考えています。

スペインの代名詞であるボールの循環(ティキタカ)よりも良いポイントだと個人的には考えています。

特にセンターバックに対するウイングのプレス、こちらのサイドバックに対してサイドバックが出てくる可能性もあるので注意する必要があります。

そのぐらいアグレッシブに集団プレスをしてくると思います。


個人的に日本代表にやってもらいたい事

・スペインのポゼッション率を下げる

・ボールを奪った後は、ラインを下げさせる


スペインのポゼッション率を下げる

最初に、スペイン代表の思い描いているサッカーをさせない事が重要だと思います。

リスクを背負ってマンマーク気味のプレスをする事で、スペインは気持ちよくプレーする事は出来ないと思います。

個々での技術・フィジカル能力では日本の選手達の方が上なのではないかと思います。

ロングキックや縦への速い攻撃はそれほど怖くないと思いますし、スペインの選手の理想のプレーではないと思います。

この思い通りのプレーが出来ていないという感覚を持たせるのは重要だと思います。

さらにボール保持と非保持が目まぐるしく変わるような状況では、日本人のフィジカル能力の方が有利だと感じています。

少し前に大学院の授業で、ヴィッセル神戸で指導していたスペイン人コーチから聞いた話では、あのイニエスタ選手も日本についてすぐはJリーグのプレースタイル対応できなかったと聞きました。スペインの理想のサッカーではなく、日本独特のサッカーをプレーする事がスペインに勝つカギになるのではないかと考えています。


ボールを奪った後は、ラインを下げさせる

ボールを奪った後の前へ進む形をデザインしておく、スペイン代表の選手は彼らのプレースタイルから、ゆったりとしたプレーに慣れています。

試合中にダッシュを何本もさせられるという状況に身体が慣れていない可能性があります。

感覚ではありますが、スペイン代表の守備ラインの選手は日本代表のフォアードの選手達よりもこの面では劣っているのでは無いかとも思っています。

彼らが強みだと思っているであろう、ボールを奪われた後のプレスを回避し、守備ラインの裏にボールを運ぶ事ができれば、フィジカル面でもメンタル面でも、やりづらさをスペイン代表の選手に与える事が出来るのでは無いでしょうか?



最後に

前回の記事でも話しましたが、個人的な意見では、今年のスペイン代表はボール保持フェーズよりもボール非保持フェーズの能力が高いのでは無いかと考えています。

このボール非保持フェーズの能力の高さがボール保持フェーズに良い影響を与えていると思います。


先日あのドイツを倒した森保JAPAN、スペイン相手にどこまで出来るのかとても楽しみです。

石黒力蔵

石黒力蔵

愛知県出身、2013年高校卒業と共に、バルセロナへ指導者留学。 サッカー指導者ライセンスレベル2を取得後、バルセロナの大学でスポーツ科学を専攻。FCBarcelona Innovation hub プロサッカー指導者コース(大学院)受講中。 スペインの古豪CE JupiterとFF Badalonaにて全ての年代を第一監督、第二監督として指導。現在はEC Granollers にてユース年代のパフォーマンス向上部門の責任者を務めつつ、ユースAチームの第二監督兼フィジカルコーチとして活躍している。 さらにスペイン人指導者と共に、UNIQとしてバルセロナと日本で心理学を主軸としたサッカースクールを展開中。 Instagram→@riki_soccer_bcn

 オススメ記事

 
月間の人気記事


タグ一覧


サッカー教本
 無料ダウンロード