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リーガ・エスパニョーラで戦う現役サムライ・インタビュー【上村大介選手】

はじめに

日本人が最も苦手とするリーガ・エスパニョーラで戦う1人のサムライ。

サッカープレーヤー・上村大介選手は、スペイン・カタルーニャ州のクラブ・タラサFC(Terrassa FC)に所属しています。テルセーラ・ディビシオン(Tercera división nacional:リーガ・エスパニョーラ4部)を戦う同クラブは、過去にリーガ2部に名を連ねた古豪。

2017-18シーズンは通年リーグを4位で終え、プレーオフに進出しました。惜しくも昇格とはなりませんでしたが、いまカタルーニャ州で最もセグンダB(Segunda B división:リーガ・エスパニョーラ3部)に近いクラブと言っても過言ではありません。

2017年7月に加入した上村選手は、1年目から監督からの信頼を勝ち取ります。

上村選手が感じる「スペインと日本の違い」について技術編

1シーズン目は34試合中21試合でスタメン出場。2シーズン目は第22節を終えて19試合に出場し、15試合で先発出場しています。

そして昨季の(※)コパカタルーニャで、FCバルセロナBから劇的ゴールを決めチームを勝利に導きます。「バルサからゴールを奪った男」として日本メディアにも取り上げられました。

「日本人がバルセロナB戦で決勝ゴール!バルサ公式も讃える」Livedoor NEWS 2017/08/06 http://news.livedoor.com/article/detail/13437077/

大学卒業後スペインへ渡西し、バルセロナ在住6年目になる上村選手。これまでの歩み、これからの道、そしてスペインサッカーからスペイン生活まで。上村選手が感じる「今の想い」に迫りました。

※スペイン全国リーグ1部~4部リーグに所属するカタルーニャ州クラブと、カタルーニャ地域リーグ1部~4部で前年度リーグ優勝したクラブがトーナメント方式で戦う。


普通?が何かはわかりませんが、大学卒業後は基本的に「就職」という社会のレールがあります。同級生たちが「普通」に就職していく中で、大学卒業後スペインへ飛びたち、サッカーで挑戦しようと思ったキッカケは何ですか?

当時はプロサッカー選手を目指して、J2やJFLへのトライアウトに参加していました。JFLや地方リーグの所属するチームは予算も少なく、自分でお金を払って行く場合もありました。けど、あまりクラブの目に止まらなくて・・・。

『どうしよかなー』と途方にくれてましたね。

その時、大学時代お世話になったGKコーチから「最近何してんねん?」と連絡がきました。将来について相談したら「スペインで新しいプログラムを始めるから参加してみないか」と誘ってもらいました。

当時、自分の中の選択肢が、「スペインへ渡るか」「レベル落としてチームを探すか」「サッカーを辞めるか」の3つだけだった。

―何かアクションを起こさなければ―

と、思っていたのでスペインに挑戦することを決めましたね。

「なんとかなるかな?」くらいのノリで・・・笑

最初は1ヶ月間1チームに練習参加させてもらいました。監督に自分のプレーを気に入ってもらえて、そのクラブと契約することになりました。


言葉も通じない異国の地。サッカー先進国スペインへの海外挑戦。友人や家族もいない一人での戦い。「知らないこと」「わからないこと」に対する不安はなかったですか?

最初は「なんとかなるわ!」って気持ちで不安はありませんでした。

その後スペインへの出国日が近づくにつれて、海外挑戦への実感が湧いてきて・・・。

スペイン語もできない、仕事もない、友人や家族すらいない。頭で色々考えていると、出発日の4日前に急に怖くなったことを覚えています。

不安が押し寄せてきて「このままではあかん」と思いました。「動かなあかん」「助けがほしい」その気持ちで鈍行電車に乗って京都へ1泊2日の1人旅をしました。

母校が京都だったので、高校時代の親友に電話して・・・。

そしたらサッカー部の仲間を集めてくれました。スペインへ発つことへの不安を話したら「なんとかなる。気にすんな!」って。
その言葉で救われました。今でも親友には感謝しています。心の友ですかね。笑


不安を乗り越えてのチャンレンジ。他の国ではなくスペインを選んだ理由を聞かせてください。

ドイツやイングランドなどを選んで挑戦したほうが、日本人の特徴を活かせるとは思います。体が大きい選手が揃うチームの中で、速くてテクニックある選手は必要とされやすい。もちろん他の国で活躍する選手も大変なことはあると思いますが、「スペインに比べたらドイツの方が長所を活かせるかな」と考えたこともありました。

けど「スペインでサッカーしたい」という気持ちが勝ちました。その気持ちを無視して違うことをすれば、「僕らしくない」と思って―

今の目標は、セグンダB(リーガ・エスパニョーラ3部)昇格。スペインに発つ前に決めた「30歳」の区切りまで、スペインで挑戦します。まだまだ夢の途中ですね。


恐怖を克服してスペインへ旅立ったからこそ、現地で生まれる感動も大きいと想像します。

日本ではできない経験をスペインで出来ています。とにかく、スペイン人ってめちゃくちゃサッカーが上手いんです。

―レベルが高い選手たちと、一緒にトレーニングして、リーグを戦って、セグンダBへの昇格を目指す―

『共に前に進んでる感覚。』今、楽しくサッカーできています。

メンタル【スペイン4部リーグ】上村大介選手が語るスペインと日本のサッカーの違い

スペインは「サッカー選手とファンの距離感」がすごく近い。
試合前、スタジアムの近くのバルを通る。ビールを片手に持ったおじさんに『今日は何点とる?』と話しかけられます。笑

他にも自分の背番号【14】を日本の国旗に書いてくれて、毎試合スタジアムに飾ってくれることは嬉しかったですね。昨シーズン初め、ファンから国旗の写真とメッセージが届きました。『これ作ったんだよ!次節から飾るぞ!だからがんばれ!』って。

逆に「距離が近いからこそ、調子が悪いときは厳しい」ですね。

怪我で戦線離脱したあとの復帰戦。スタジアム見渡したら、国旗がなくなってました。

イラッとしましたね!笑 やっぱり忘れられるのは嫌じゃないですか。

すぐ結果を残したかった。復帰3試合目で試合終了間際92分に決勝点を決めたときは、ファンに向かって「国旗飾れ!」とアピールしました。

それ以降、ずっと飾ってくれています。


日本人プレーヤーがサッカーを文化とする国のファンに認められる。サッカー面での充実が伝わってくるお話ですね。では人間的な成長という点で、感動したことはありますか?

人生で1度も海外に行ったことがなかった祖父が、スペインへ遊びに来てくれたことです。

初日、空港に迎えに行ったら「ここは、京都か?」って。笑

バルセロナは歩いて回る場所がたくさんあります。スペイン旅行は、毎日1万歩以上歩いてました。祖父も「歩くこと」を想定していたらしく、スペインに来る前に運動機器を買って体も鍛えていました。笑

滞在中にリーグ戦の試合を観戦しに来てくれました。

クラブのSNSでも『87歳のおじいちゃんが日本から来た!』と投稿して頂きました。

おじいちゃん、喜んでいたと思います。

スペインに渡らなかったら、祖父もスペインに来れなかった。スペインでの祖父との時間は楽しくて・・・。素直に嬉しかったです。


これまでスペイン生活や海外挑戦におけるプラス面にフォーカスしてきました。しかし、サッカー後進国から来た選手が認められる過程は、楽しいことばかりでは無かったと想像します。

そうですね。はじめに一番苦労したことは、スペイン語です。

現地の語学学校は、スペイン人講師がスペイン語で説明して授業が進みます。何もわからなくて。悔しくて、悔しくて。そしてスペイン語が分からない場合は、英語で説明する。僕の場合、英語も分からなかった。

だから分からないことを伝える。解説をしてもらう。けどその解説自体がわからない。

―苦しかったです―

でも環境的にはプラスだった。日本語を話せない環境に自分を追い込めたので。

語学力はサッカーにも生きます。

はじめはスペイン語がわからないことを生かして、下ネタや悪い言葉を教えてもらっって、一緒に笑う。そのようなコミュニケーションもしていました。

しかし本質的なコミュニケーションでは通じなくなってくる。

グランドの内でも、外でも自分の伝えたいことを伝える。それが出来なければ、輪の外に追いやられる。チームには所属しているだけで、チームの一員ではない感覚ですね。

だからスペイン語は勉強しましたね。ネイティブのように話せるレベルではありませんが、コミュニケーションを取ることに問題ないレベルまで勉強しました。


今シーズンで6年目のスペイン生活。楽しいこと、辛いこと。様々な経験をした上村選手の目に映る「スペインの国」について教えてください。

天気が良い。(バルセロナは年間300日が晴れと言われる)

食べ物も美味しい。(美食の街で有名なバスク地方。ミシュラン星付きレストランも多い)

スペイン人の人柄も良い。(ラテンの陽気な人柄。スキンシップも多い)

すべて気に入ってます。

もちろん一番は、スペインのサッカー文化。スペインはサッカーに興味のある人達がたくさんいます。新聞もサッカー専門紙が数冊ある。バルではテレビでサッカーの試合が流れている。街のどこにいてもサッカーがある。サッカー好きにはたまらない環境ですね。

逆に嫌いなところもあります。レジやウェイトレスの態度は失礼で遅い。地下鉄はドアの前だけ込んでて、奥は空いている。とか・・・。スリに遭いそうになったこともありました。今では盗られる場面すら読めるようになってきましたよ。笑

けど、良いところも悪いところも全てを含めてスペイン。「気にしたら負け」くらいに思っています。



上村選手の1週間の生活を留学を考えている選手たちに教えていただけますか?

月曜日は試合後のリカバリー。火曜日は一日オフです。水曜・木曜・金曜がトレーニング。土曜日か日曜日にリーグ戦を戦います。

去年4月から株式会社OTOMO(アスリートサポート会社)から食事面・栄養面でサポートをして頂いています。また週1回、パーソナルトレーナーと体幹トレーニングを行う。専属スタッフに試合プレー分析をしてビデオで確認する。などフィジカル面と戦術面で新しい取り組みをはじめました。
③フィジカル【スペイン4部リーグ】上村大介選手が語るスペインと日本のサッカーの違い

それ以外のオフは、バルセロナ在住日本人、語学学校の外国人友達、チームメイトとリラックスした時間を過ごしています。


上村選手の座右の銘『キミは君らしく』。この言葉が心に残った理由は?

高校時代の恩師がよく言っていたフレーズです。

最初の「キミ」がカタカナで、次の「君」が漢字になっています。

『キミ』はまだ未熟。成長し大人になる。そして新たな『君』になろう。

そのような意味が込められています。

「キミは君らしく人生を歩んでいく」

この言葉は、今も大切にしてます。


「キミは君らしく」を実現する上村選手の次の夢。教えてください。

僕、イニエスタがめっちゃ好きなんですよ。スペインのコパ・カタルーニャで対戦する可能性にかけてました。笑 

けど日本に行ってしまって・・・。

だから次はJリーグ、日本が舞台です。イニエスタとサッカーすることが「今、やりたいこと」ですね。


最後に海外挑戦を目指す日本人サッカープレーヤーに一言、お願いします。

「本気ならできない理由を探さず飛び出してみる」

日本人同士の繋がりがあるから、助けてくれる人が絶対に現れる。

来たらなんとかなります!

④戦術【スペイン4部リーグ】上村大介選手が語るスペインと日本のサッカーの違い



おわりに

上村選手この度はスペクラインタビューに応じていただき、ありがとうございました。スペクラTVでは上村選手にスペインサッカーと日本サッカーの違いについて、「技術」「メンタル」「フィジカル」「戦術」の4つの側面からインタビューに答えてもらえました。全4篇となりますので、ぜひ御覧ください。



スペイン・バルセロナに来た際は、上村大介選手の試合を見に行こう!

試合日程の検索はこちらのサイトから!→http://fcf.cat/


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スーペルクラック編集部

スーペルクラック編集部

スペイン・バルセロナを拠点に活動。「本物のスペインサッカーをありのままに生き生きと伝えたい」そんな想いで日々コンテンツを更新する。ライター、サッカー監督、プレーヤー等、多岐にわたるスペイン在住邦人が執筆・編集。深くサッカーを学びたいあなたへ。

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